中小企業へ入ることに何かメリットはあるのか?

コラム

中小企業=100%負け組とは限らない

大手企業に入るメリットを紹介したことがあるが、中小だったら何もかもが大手よりダメという訳ではなく、中小企業にも一応メリットはある。一例であるが、主に中小企業に入るメリットは以下の3点が考えられる。

① 転勤が少ない

まずは「あるある」から。最近はテレワークの普及や働き方ナントカの影響により、やたらと転勤させる人事も見直されつつあるが、大手企業においては転勤が1つのデメリットとして挙げられる。酷いケースだと、ヒャッハークラスに治安の悪い国へ海外赴任させられる場合もある。住めば都とは言うが、ボディーガード付で勤務するのは、あまりに刺激がキツすぎる。

その点、転勤がなく慣れた場所に生涯住み続けられることは刺激が少ない反面、ライフプランが立てやすい。子供が小さいうちの単身赴任や、子供の転校というのは大手企業の社員にとっては大きな悩みである。

② 役員になりやすい

また、中小企業に勤める二つ目のメリットとしては役員(経営層)になりやすいことが挙げられる。ここで一応、誤解のないようにお伝えしておくが、大抵の会社では役員にまで上り詰めるのは大変なことであり、プライベートを犠牲にするなど並々ならぬ努力を要する。

ただ、大手では従業員数の母数やライバルが多すぎであり、本人の実力が並外れているのは勿論のこと運や巡り合わせが大部分を占めるので、大手企業において役員まで出世するのは基本的に不可能に近く、出世は良くて部長クラスまでだと認識しておくべきである。それに比べれば中小企業は役員数の全従業員数に占める割合が高く、大手企業よりは遥かに役員になれる確率が高い(難しいことに変わりはないが、大きく難度は下がる)。東証による統計では、売上高1兆円以上の企業でも取締役の数は平均11人、100億円~1,000億円の企業でも平均8人と、あまり大きな差がない。

もし晴れて役員になれれば、大手企業での部長職の年収を越え、大逆転を果たせる可能性も出てくるのだ。流石に従業員100人未満の規模だと、さほどの役員報酬は期待できないが人事院による統計では、500人~1,000人クラスの中堅企業になると平取(普通の取締役)でも平均年収1,800万円を上回る。その規模であればD級大学出身の役員を目にすることも珍しいことではない。

ただし注意点として、大手企業の子会社は上記の限りではない。子会社における役員の椅子は大部分が親会社の人間に占められてしまうので、プロパー社員がトップに上り詰めることは、残念ながら不可能に近い。したがって、独立を保った優良企業に入社しよう(優良だからこそ食われやすいという面もあり難しいところだが。。。)

③ スキルが身に付きやすい

他のコラムでも記載したが、仕事は総じて大手の方がラクであり、中小の方がシビアである。中小企業は常に生き残りのために厳しい競争に晒されており、社員も何でも自分でこなすことが求められるため、仕事の幅も広くなり、専門性も深く身に付けられる。そして、スピード感を持ってフットワーク軽く動く習慣も生まれやすい。

大手企業の場合は、より組織的な動きが求められるため、ガチガチな業務分掌やレポーティングラインの中で動かねばならず、歯車感がハンパない。下手に気を効かせて要求された以上の仕事をしようとすれば、「余計なことをするな」「チームワークを乱すな」「○○さんの仕事を奪ってどうすんだバカ」と逆に怒られる始末。

何かを人に頼んだり相談すれば、「本来は俺の仕事じゃないけど今回はサービスでやってやるよ」と言われればまだ良い方、海外のように「それは私の仕事じゃないので、やりません」と平気で言ってのけるところは、中小企業出身者からすれば信じられない言動である(中にはガチガチな中小企業もあれば、部門によって柔軟な大手企業もあるが)。

中小企業と大手企業では、働き方やスピード感が結構違うのである。

中小で頑張るのも良いが・・・

中小企業で頑張ってスキルを身に付けることは大きな財産となることは間違いない。ただ、サラリーマンとして働く以上は、どのような収入・待遇を手に入れるかは個人的な頑張り以前に「どこに属するか(勝ち馬に乗るか)」が一番大きな要素となる。

ベンチャー企業や、とにかく成果重視の企業であれば、実力に自信があれば収入は青天井になれるかもしれないが、勝ち上がれるのはほんの一部の人間だけ。そして、ずっと安定して勝ち続けられる保障はない。

日本企業においては基本的に賃金テーブルが定められており、どんなに実力があってアウトプットを出せたとしても、その範囲内での稼ぎしか得られない。その上限が中小企業では低い位置にあるので、頑張ってもなかなか報われにくい構図にある(これを覆すには、上記の通り役員まで登り詰めねばならない)。

例外的に中小でも高年収・厚待遇が得られる優良企業は存在する。ただ、そういうところは地元で超人気だったりするので、大手企業と同等以上の高倍率・高難度である。

若いうちは中小で修行し、係長あたりで油がのってきた時期から大手に行って人・組織の動かし方を学ぶというキャリアも良いと思うのだが、現実として中小⇒大手への転職はそう甘くはない。やり甲斐よりも収入・待遇を第一に考えるならば、中小企業でファーストキャリアを迎えると、大手よりは厳しい道のりが待っていることは確かである。

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