大手企業(何がそんなにイイの?)

コラム

大手志向について

今更言うまでもないが、終身雇用・年功序列制度が音を立てて崩壊中であり、大手企業等に入ろうとも安泰な世の中ではない。

かといって、中小零細・ベンチャーが良いという訳ではなく、日本全体が仲良く揃って厳しくなっているという話。起業するなどして自分の力で稼ぐ自信がなければ、学歴を得て、稼げる企業へ入るのが凡人の生きる道。

  • 「会社による」
  • 「大手だから良いとは限らない」
  • 「小さくても良いところはある」
  • 「上司ガチャ・配属ガチャ次第」

というのは、いずれもその通りなのだが、一般論として、サラリーマンという雇われとして生きるのであれば、まず「どこに属するか(勝ち馬にのるか)」が肝心となる。

夢のない言い方をしたかもしれないが、属する勤め先が大手企業なのか中堅以下なのかで、人生が大きく変わってくるといっても過言ではない。

大手企業の定義

「大手企業」というのは、実は一般的に確たる定義は存在していない。

会社法で「大会社」という言葉が定義されていたり、中小企業基本法においても業態によって企業規模の基準が定められているが、これらは該当する会社数があまりに多くなりすぎる。中小企業基本法における「中小企業以外」だと、割合的には0.3%しかないが、会社数でみると1万社を余裕で上回ってしまうので、これではハードルが低すぎる。

当サイト内での「大手企業」の定義・イメージをお伝えすると、

日経225/JPX日経400に入るレベルの企業

と思ってもらえばいい。ただ、「日経225」「JPX日経400」はあくまで投資家向けの括りなので、首をかしげたくなる企業もあるかもしれない。

それ以外の基準で言うと、

  • 業界内でのシェアがトップクラス
  • 売上高としては連結5,000億円以上(出来れば1兆円と言いたいところだが・・・)

くらいの規模感である(大きければ良いという訳でもないかもだけど)。

もちろん、業界の規模感や利益率などによっては例外も多々あるが、「東証プライム」程度では、まだまだ「大手企業」と呼ぶには物足りない。証プライム」だと2,000社近くもあるし、売上数百億程度の企業も沢山あるので、その多くは中堅企業に過ぎないのが実態だ。

収入面でのメリット

イメージ

一般的な日本の大手企業における、賃金カーブ(年収)のモデルケースとしては以下のとおり。
※ 数ある業界の中で中堅(正確には中の上くらい?)に位置する「メーカー」あたりをイメージしてもらえばいい。金融・商社・コンサルなどはもう少し水準が上がる。その逆の業界も勿論ある
※ モデルケースと言っても、そこそこ上手くいっている人のケースをイメージしているので、全員が下記の賃金カーブに乗れるわけではない(まぁ、落ちこぼれなければ課長補佐辺りまではいけますよ)

若手(20代前半~半ば):400万円~500万円
主任(20代後半):500万円~600万円
係長~課長補佐(30代前半):600万円~900万円
課長(30代後半~40代前半):900万円~1,100万円
次長(40代半ば):1,100万円~1,300万円
部長(40代終盤~50代半ば):1,300万円~

とまあ、こんなところであり、だいたい40歳手前で管理職・年収1,000万円が狙える企業には入れれば、ひとまずは勝ち組と言える目安だろう(もちろん個人差はあり、早い人だと30代前半でも課長になる)。

結婚して子供をもうけることを考えると、30歳以降で生活費が増えていくため、賃金カーブもそれに合わせて30歳以降の係長クラスから一気に伸びていくのが、日系大手企業の特徴である。

大手ですら安泰ではない

ただし何度も言うが、終身雇用・年功序列制度を維持できなくなっている企業が大手ですら増えてきており、上記の賃金カーブは、力のない企業では今後改悪される可能性が高い。社員全員を裕福に養っていく余裕のない企業では、管理職に上がれる人数を絞り、万年係長・万年主任・万年平社員といったオジサマ方が増えていく。このような人達は一昔前では負け組のように扱われてきたが、現代では大手企業の社員でさえも、ジリ貧企業ではそうなるのが当たり前になりつつある。

中小企業では、若手のうちは大手企業とあまり賃金水準は変わらない。だが、主任に昇格したあたりから少し差が付き始め、30歳を過ぎて係長に上がる頃には差が明確になり始める。そして30代後半で管理職になり始める時期には、決定的な大差になってしまう。

これももちろん個人差があるが、大手では年収1,000万円前後のところ、中小企業では課長級でもせいぜい700万円前後といったところ。部長になっても1,000万円を越えれる望みがあるかは微妙。管理職になって責任ある立場で重責を背負ったとしても、もらえる報酬はせいぜい大手企業の係長程度の水準しかないのではコスパの悪い人生となってしまう。

収入以外のメリット

大手企業に入るメリットは、高給取りになれることだけではない。大手は給料以外にも、目には見えないメリットが盛り沢山なので、今回はその例を紹介しておきたい(ここでは、「成長」や「人脈」よりも、待遇面に重きをおいて記載している)。

例示に過ぎないが、大きく分けると下記のようなメリットを享受出来る。

① コンプライアンスを遵守する企業風土がある

扱われ方が違う

コンプライアンスに関して意識の強い企業では、セクハラ・パワハラ等、ハラスメントに対する感度が高いので、働きやすい環境身を置ける可能性が高まる。

例えば、厚労省がパワハラの予防・解決のための取組に関する統計をとっており、従業員1000人以上の企業では9割近くの企業が取組を実施しているが、100人未満の企業では3割未満に留まるところから、相当な開きがある(自称でコレである)。

余裕の違い

本業に余裕のある企業ならまだしも、生き残りに必死な中小零細の場合はコンプライアンスに力を入れている余裕などない。職場のあちこちから怒鳴り声が聞こえてくるなど当たり前、残業代も平気で踏み倒されて年収にも悪影響が出てしまう。

手だからといって全てが安心な訳でもなく、クリーンな中小企業も勿論あるが、競争力のある会社ほど本業以外のことにも注力出来る余力があり、社員が自らの言動一つ一つに気を配る余裕を持てるのである。

② 休みが多い

週休2日・祝日休みは“フツー”ではない

現在は法的な縛りで、実質週休2日制となるので年間休日は105日は確保されているはずだが(36協定次第だが)、求人票にて「年間休日120日」というワードは見たことがあるだろう。これは土日に加えて祝日も数えると、そのような休日数となるわけだ。

実は、カレンダー通りに年間120日、もしくはそれ以上休める企業は、厚生労働省の調査によると3割程度しかない。また、中には「年間休日120日」と謳っておきながら、実は有給休暇の分も含めて120日だったというイヤらしい例もある。

ワークライフバランスはとれるか

これも統計によると、従業員数が1,000人を超える規模の会社では年間休日数が平均的に120日近くなるが、100人未満の企業では110日を僅かに上回る程度となり、大手と中小零細とでは開きがある。そして企業規模が大きくなるほど休日も多くなる傾向にある。

複数の子会社を抱える企業の場合、本体は120日だが、子会社の場合は105日だったりと、同じグループであるにもかかわらず露骨な待遇の違いが現れているところもあり、格差社会の一端が見てとれる。

③ 社会的ステータスが上がる

安心感が高まる

これを言い換えると、社会的信用を得やすいということになる。信用を得ている会社の名前ひとつで仕事を貰いやすくなるのは勿論だが、大手企業の看板はプライベートにおいても活きてくる。

例えばローンを組むときや、ゴールド以上のクレジットカード(いわゆるステータスカード)を新しく作るときは必ずと言っていい程、申込書に「お勤め先」欄がある。
現在のみならず将来に渡っての支払能力があるかを審査される際に、大手企業の名前は最高の手札になる。

この手の申込書には流石に学歴欄まではなく、学歴は直接的には関係がないが、ここで大手企業の威光を借りるためにも、高学歴になってそのようなお勤め先に入社できる確度を早いうちから上げておきたいところ。

金額=信用?

他に社会的信用を証明する指標としては「年収」がある。こちらの方が大事と思われるかもしれないが、フリーランス等の場合は収入に安定性がないため、現時点ではまだ問題ないものの将来性という点を考えると、どんなに高くても不安材料が残る(むやみに高い方が、波が激しいと思われかねない)。

社会的信用があると、一発で相手に安心感を与えられるので話が早くなり、物事を進める上で何かとラクでいい。会社の名前に頼るのは一見カッコ悪く映るかもしれないが、それは自身の血の滲む努力によって勝ち取ったものであり、これまでの人生を強く生きてきたという、紛れもない個人としての信用そのものである。

④ 仕事がラク

業界にもよるが・・・

これは意外に思うかもしれない。誤解を招く表現であるのは承知の上で、敢えてこのように表現した。

職種・部署・上司・時期など色んな状況にもよるが、総じて大手の方が仕事は緩い。何故なら、泥臭い仕事は殆んど下請けや子会社に投げてしまうからである。

個人技なら中小の方が鍛えられる

逆に、中小企業の方が実務的な実力は付きやすい。上記のようなな背景に加え、生き残りに必死であり、何でも自分でこなさなければいけない環境にあるので、幅広いスキルが身に付きやすい。

大小色んな企業が集まって仕事をする時は、だいたい中小企業にいる社員の方がキレッキレで、温室育ちである大手の社員はなんだかパッとしない(個人差あります)。

大手で求められるものは

ただ、大手企業の場合は色んな人材や業者の力を結集させて大きな事を成していくので、人を動かす力や、大きな組織を動かす力が身に付く。これは所謂「調整能力」というものであり、「コミュニケーション能力」とも通じており大手企業においてはバカに出来ない代物だ。一人一人の専門性としては微妙だが、巨大な組織力を駆使するのが大手企業の戦い方だ。

それにしても、仕事がキツイのに給料が少ない・・・一方で、仕事がラクなクセに給料が高い・・・何とも不条理な世の中である。

⑤ 福利厚生が充実している

やはり、日系大手企業はここが違う。

出ていくものも抑えられる

例えば健康保険が充実しており、傷病手当金の支給期間が法定の倍にあたる3年も支給される健保組合もあったり、保養所が充実していて安く旅行が出来る(近年は直営保養所は減ってきているが、共同のリゾートホテルなどで補助が出たりする)。

また、カフェテリアプランで年間約10万円分のサービス(例えば社食費の補助、団体保険の補助、旅費の補助などが選択可)が受けられたり、住宅ローンの金利も優遇してくれたりする。

東京勤務でも無問題

中でも、決定的に中小との差が大きいのが住宅・家賃補助制度である。若手・独身のうちは寮制度があり、企業にもよるが、都市部でもだいたい月に1万円~4万円あたりで入居できる。まだ給料の低い若手社員にとっては浮いた住居費を遊行費や自己投資等にまわせるので、非常にありがたい。

結婚をすると、今度は社宅制度を使うことになる。他の社員と共同の集合社宅に入るケースもまだ多いが、近年アツいのは借り上げ社宅制度である。これも企業によって幅があるが、少ないところで月5万円、もっと多いところだと月10万円以上補助してくれる(中には、月20万円近く出してくれるトンデモナイ超ホワイト企業も実在する)。これが40~45歳まで続くのだ。もっといい会社だと、中年以降になっても、補助率は減るものの引退まで補助してくれる企業まである。

このような住宅補助の制度があるかないかで、可処分所得に大きな違いが生まれる。例えば月10万円の住宅補助があるとすれば、取りベースで実質年収120万円分のプラスになる。

【実例①】
給与年収が額面400万円の場合は、
手取り年収は大体320万円
これに住宅補助分の手取年収120万円を加えると
合計手取年収は実質440万円。
これを額面に換算すると、実質年収580万程度に相当する。
【実例②】
給与年収が額面800万円の場合、同様の家賃補助制度があれば
実質年収は、ほぼ額面1,000万円となる。

というように、目に見える給料だけではなく、福利厚生も加味すると大きく生活水準が変化することがある。大手企業は、その可能性が段違い。

このあたりの福利厚生制度に関する詳細は、会社から発信されている求人情報ではなかなか掴めみにくいが、口コミサイトにはリアルな情報が数多く載っているので、色々と漁ってみると各企業でどんな待遇を得られるのか、実態が見えてくるはず(ただし、過信や、過度な期待は禁物)。

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