TOEICと学歴④:試験対策(リーディング)

コラム

リーディング全体

時間配分

TOEICリーディングの試験時間は75分。その持ち時間で100問を解く必要があるので、1問に1分すらかけられないスピード勝負となる。リーディング攻略のキーとなるのは時間配分であり、入念に作戦を組み立てることと、それに沿ったトレーニングを積み重ねていかねばならない。それは目標スコアによっても変わってくるのだが、ここでは大きく、

① とりあえずスコア700(730)までで良い場合
② 800を越えるようなハイスコアを目指す場合

の2パターンに分けて、オススメの時間配分・作戦をお伝えしていく。

① とりあえずスコア700(730)までで良い場合

この場合は、そもそも全問を解き切る必要がない。リスニングがある程度得点出来ていることが前提にはなるが、最後の20問程度が塗り絵(適当にマークすること)になってしまってもスコア700への到達は可能である(筆者が実証済)。

その代わり、取りかかった問題の正答率を上げること。リーディングで7割前後を目指すのであれば、まずは簡単~標準的な問題を確実に得点することを心掛けるのが近道である。肝心の時間配分については、part5とpart6を合わせて30分かけて、取れる問題をじっくりとモノにしていこう。

part7で残された時間は45分となり、これではハイスコア者でも厳しい時間にはなるものの、ラスト20問は捨て(一部解いておきたい問題はあるが:後述)、文章量の少ない問題から確実に得点していこう。

② 800を越えるようなハイスコアを目指す場合

スコア700や730を越えた先に目指すものは、スコア800や860といったところだろう。このレベルになると、10問以上塗り絵をしてしまうと、普通に解いた中で失点出来るのは10問もなくなってしまうので、目標達成は難しくなる。

したがって、多くの問題に手を付ける必要があり、塗り絵は最低5問のみ(終盤の長文1問分)、出来れば全問解くつもりで臨まねばならない。時間配分としては、Part5とPart6を合わせて20分厳守!なかなかハードだが、まずはこれをクリア出来るようにトレーニングを重ねなければならない。

そして、Part7での持ち時間は55分となるが、Part内でも細かい配分が必須なので、それは記事後半のPart7のところでご紹介する。

解く順番

結論を言うと、問題の順番通りでいい。つまり、Part5 ⇒ 6 ⇒ 7の順で解けばいいのである。長文問題であるPart7の方が配点が高いから、Part7からスタートした方がいいという意見もあるが、TOEICスコアはあくまで正答数で決まるのであり、配点に偏りはない。

したがって、時間とのコスパを考えると、短時間で解答できるPart5から手を付けるべきである。Part7内でも順番についての議論がみられるが、それについてはPart7の見出しにて後述。

Part5

どんな問題?

単文の中で穴埋め(大抵1~2ワード)を行う。選択肢は4つ。全30問。

パターンの見極め

part5では問題のパターンが大きく2つに大別され、どちらのパターンなのかを瞬時に見極めることがまず大事である。何故大事なのかというと、パターンにより使える時間が大きく変わってくるので、時間配分の面で1問ごとのタイムリミットを意識するために不可欠となるからである。

①文法問題

まず、穴埋め問題といえば、おなじみの文法問題である。名詞・形容詞・副詞など品詞を問う問題や、時制を問う問題となる。この手のパターンは、問題文をよく読んで、意味を完全に把握する必要まではないケースが多く(それを分かっていないと解けない問題もないことはないが)、穴の前後や、文の全体像から文法上の正解を導き出せることが少なくない。そのため、時間をかけなくても得点が出来る・・・

・・・と言うよりは、ここで時間をかけている訳にはいかないのであり、当パターンはハイスコアを目指すなら1問10秒、スコア700目標の人は1問15秒を目安に解答出来るようにしておこう。

②語彙問題

こちらのパターンは、文の意味が通るような選択肢を選ぶため、問題文をよく読んで意味を把握する必要がある。また、選択肢にも全く違う単語が4つ並んでおり、単語力も問われるので厄介なパターンである。

当パターンの場合は、じっくりと時間をかけて、ハイスコアを目指す者は30秒、スコア700を目指す者は45秒かけよう。①②のパターンそれぞれ半々で出題されるとは限らないが、持ち時間を平均するとハイスコア目標者は1問20秒、スコア700目標者は1問30秒となる訳である(30問でそれぞれ10分15分)。

基礎力を高める宝庫

リスニングと同様、問題文が短いからこそ真のリーディング力が問われる。問題文や選択肢の中で分からなかった単語はリーディング全Partを通して頻出(突かれやすい痛いところ)の可能性があるので必ずメモしておくこと。

文法問題についても解説に記載された考え方を吸収し、今後同様の問題が出てきたときは反射的にその考え方が浮かんでくるくらい反復演習に励もう。そこで身に付けた単語力・文法力はリーディングのみならずリスニングでも活きてくる。

固執は厳禁

part5だけでも30問もある中、いくつか難問も立ちはだかるだろう。だが、そこで時間をかけすぎると、スムーズに30問を解ききることは出来ない。ましてやpart5はリーディングの出だしでもあるので、気分が浮わつきやすく、冷静に文章を読んで解析するのが意外と難しい場面となる。

そこで、解答に窮した問題が出てきた場合は思い切って次の問題へ進んでしまおう。ただし、この時点では問題は捨てず保留にする。そして30問目を終えた時点で、保留した問題に戻って再チャレンジするのだ。そうすれば不思議なことに、一度目はイマイチ頭に入ってこなかった文章が、今度はより落ち着いて向き合うことが出来るので、ウソのように意味を掴めたりする。

それでダメならその問題は捨てて、潔く塗り絵にしよう。しつこいようだがTOEICでは一つの問題に固執しすぎず切替力や捨てる勇気が不可欠である。真の敵は己の中にあり、迷路にハマった時は、気持ちの切替こそが活路を拓く。

Part6

どんな問題か?

長文問題が大問4問。大問1問ごとに小問4問。小問ベースで全16問。いずれも穴埋め問題であるが、小問3問は1~2ワード、残りの1問は文章を選ぶことになる。

Part5とPart7の中間

16問しかないのでイマイチ存在感のないpartではあるが、part6はリーディングの解答を進める上での流れを掴むためには大事なパートとなる。

part5的な要素(下記①のパターン)を残しつつも、文章を選択肢から選ぶ穴埋め問題(下記②のパターン)もあるため、長文も読まなければならずpart7にも繋がるところがある。うまくpart6を利用して、脳を長文モードに切り替えていこう。

進め方

長文の内容すべてを細かく把握する必要はない。基本的には穴の周辺を読むことになるのだが、流石に「何の話をしているのか」くらいは掴めていないとモヤモヤしたまま問題に臨むことになるため、文章の序盤は少々時間をかけてじっくり読み、徐々に速読へと移行しよう。時間の目安はハイスコア目標なら大問1問で2分強、スコア700目標なら3分半くらい。

①文法・語彙問題

このパターンの場合は、基本的にはpart5と同じと思ってもらって構わない。たまに、文章全体のテーマを掴めていないと適切な意味の単語を選べないこともあるが(特に序盤の問題)、上記のとおり文章の出だしはよく読んで全体的なテーマを早めに掴んでおこう。

②文章選択問題

この場合は文章の要旨を把握しておく必要がある。文章を選ぶとなると、ちょっと身構えてしまいがちだが、誤答の選択肢は問題文のテーマとはまるで違う頓珍漢なことを言っている場合が多く、意外と難易度は高くない。油断は禁物だが見かけ倒しな問題が殆どなので、雰囲気に飲まれず、過度な警戒は不要ということを覚えておいてほしい。

時間がないなら・・・

特にハイスコア目標者はpart5+6で20分というギリギリの戦いとなるので、part6の中盤~終盤に入ると時間切れが近づいてしまうケースも多いだろう。その場合は、取り掛かっている問題に対して解答の道筋が見えている場合を除いては、やはり捨てる勇気を持つことが肝要である。

特に早めに捨てるべきは②のような、文章を読む時間をある程度確保しなければ解答出来ないタイプの問題である。①も、語彙問題よりも文法問題から優先して解くようにしよう。ただし、先の小見出しでも述べたように、②文章選択問題は難易度が低いので、サッと選択肢を速読してみて、本文と関係なさそうな選択肢を出来るだけ除外して消去法で解答してみる・・・くらいの足掻きはする価値があるかも。

Part7

どんな問題か?

長文(ここでは本文と表現する)を読んで後の問いに答える。選択肢は4つ。大問(長文)は全15問、小問ベースで全54問。

時間配分

リーディング全体での時間配分は記事序盤で述べた通りだが、Part7は一番の長丁場となるので、Part内でも時間配分が求められる。Part7は主に4つの局面に大別される(色んな分け方があるが一意見として捉えて頂ければ)。

①シングルパッセージⅠ(大問4問・小問2問ずつ:問題番号147~154番の8問)
②シングルパッセージⅡ(大問3問・小問3問ずつ:問題番号155~163番の9問)
③シングルパッセージⅢ(大問3問・小問4問ずつ:問題番号164~175番の12問)
④ダブル・トリプルパッセージ(大問5問・小問5問ずつ:問題番号176~200問の25問)

ハイスコア目標者の時間配分としては、小問1問あたり1分の持ち時間となる。したがって、問題数と同じ分数で進めると覚えればよく、①で8分、②で9分、③で12分、④で25分、それぞれ確保するように意識しよう。

特に大事なのはに入る前に残り25分を残しておくことである。よって①~③あわせて遅くとも30分で終えるつもりで臨もう。

①~③はいずれも読むべき長文は1つだけ。③は1つの長文に対して小問4問であり、分量も①②と大きくは変わらない。一見するとコスパが良さそうだが、その分難易度が少々高めに設定される印象があるため、やはりここも小問1問につき1分の持ち時間は確保しておきたい。

④は大問1問につき2つも3つも文章が出てくるので多くの時間を要する。ダブルパッセージが2問、トリプルパッセージが3問の構成であり、終盤で焦りやすいにもかかわらず容赦がない。まさにハイスコア者の領域であろう。

一方で、スコア700目標者は、①10分、②12分、③15分が目安。厳しいかもしれないが残りの8分程度で、④の大問1問分+αに取り掛かろう。

先読み

先読みと言えば、リスニングのPart3・Part4のイメージがあるが、リーディングPart7でも大いに活躍する。Part7の回答に当たっては、本文の中で明確な根拠を探し当てることが必要となる。その根拠を効率的に見つけるためには、先に小問の問題文や選択肢を読んでしまい、どういうところを重点的に読み取ればいいのかを事前に把握したうえで、本文の長文読解へと臨む戦法が有効である。

最近の傾向として、Part7は本文の分量がだんだん多くなっており、問題の根拠を本文の中から探し当てるのが大変である。当然、終盤に向かうにつれて本文も非常に長くなるので、もはや宝探しの状態になる。本文と問題文の行ったり来たりの繰り返しに陥ると、持ち時間を食い潰す一方となってしまう。そのような泥沼にハマるリスクを最小限に抑えるためにも、焦らずに問題を先読みし、解答に必要な情報を1回目の読解でなるべく効率良く収集出来る土台を作り上げよう。先読みにも時間が必要なので一見遠回りにも見えるが、最終的には近道となる。

解く順番

結論から言うと、これも問題の順番通りで大丈夫。つまり、問題番号147番から200番まで順番に解いていけばいいのである。

実は、後ろから解いていく受験者もおり、その理由としては、④は分量が多いだけでさほど難易度が高くないからというものである。これには一理あり、冷静に読めばさして難解な問題は多くない。ただ、このやり方は初学者・初心者や、速読に自信のない者にはおススメしない。何故なら、上記の宝探し状態に陥ってしまうリスクが、分量の多い終盤の問題になればなるほど高くなる。そして、時間配分のプランが早速崩れてしまえば試験の進行上、メンタル面でも悪い影響を及ぼす可能性があるからである。

part7序盤である①②のパターンでは、1つの長文に対して小問が2~3問しかなくコスパが悪い、また、中盤である③のパターンは難易度が高めの傾向があるので、その点でも④から着手することは戦略としては確かにアリかもしれない。しかしながら、長い文章にまだ頭が慣れていないことも考えられる上、時間配分のプランが崩れた際には先々の影響は計り知れず、計画が狂ったときの対処には強靭なメンタルと積み重ねられた経験、そして遅れを取り戻すための速読力が求められる。

という訳で、ハイスコアの領域に達するまでは、おとなしく順番通り解いていく方がと考える。

スコア700目標の人へ

上記の時間配分のプランでは、終盤の④については大問全5問中4問は捨てることになっている。ただ、各大問のうち最初2問の小問については、さほど時間をかけずに解答出来る可能性が高いので、少しでも時間が残っていればチャレンジしてみよう。最初の2問は大抵の場合、以下のようなことが問われる。

① 文章の序盤もしくは全体像を問う問題

この問題については、文章の序盤を読んでおけば回答可能なケースが多いので、サッと読んで解答出来ることもある。

② 単語の言いかえ問題

これも前後の文脈が把握出来れば回答が出来る。易しい問題だと、前後の文を読まずとも、本文中で下線が引かれた単語と、選択肢の単語を突き合わせるだけで分かってしまうケースも。

時間配分のまとめ

時間配分については、文章で書くとゴチャゴチャして分かりにくいが、全体を表でまとめると以下の通りとなる。

ハイスコア(スコア800以上)目標者

Part 問題番号 持ち時間 1問あたり
5 101~130 20分 20秒前後
文法問題:10秒
語彙問題:30秒
6 131~146 30秒強
7 147~154 8分 1分
155~163 9分
164~175 12分
176~200 25分

くどいようだが、Part5+6で20分、Part7の④(終盤25問)で25分、を特に意識すること。

スコア700目標者

Part 問題番号 持ち時間 1問あたり
5 101~130 30分 30秒前後
文法問題:15秒
語彙問題:45秒
6 131~146 45秒強
7 147~154 10分 約1分15秒
155~163 12分
164~175 15分
176~200 8分

取れる問題を確実に取りにいくこと。とはいえ、Part5+6で30分を最大値として進めよう。

最後に

昇格・昇進要件として広く導入されている

TOEICシリーズのコラムは本稿で終了となる。TOEICは就活生にとって年々プレゼンスを増しているが、実は社会人になった後も昇格・昇進や、海外赴任・海外出張対象者への選抜で大いに関わってくることになる。

目指すスコアは企業・部署・職種によって様々であるが、上場企業での課長昇格要件となっている平均スコアは550とのこと。決して高いスコアとは言えないが、継続的に学習を続けなければ英語力は当然落ちるので、現時点でスコア550を越えていても油断はならない。

また、この水準での昇格要件というのは、どちらかというと足切り的な要素が強いと考えられ(スコア550も取れない程度の努力しか出来ないなら管理職昇格など問題外だと考えている)、より管理職の枠が少なく選抜的な要素が強い企業になると、スコア800クラスを要件とする企業も少なくない。

技術の進歩が先か?

そもそもAIによる翻訳機能が進化してきた現代において、語学力がどれだけ必要になるかという疑問もあるが、専門的な内容の翻訳においては現代のツールをもってしても、まだ厳しいという感触である。

そのため、ベースはツールを使うものの、次のステップとしてのチェック・修正にはまだまだ人間の目が必要であり、残念ながら、いましばらく語学力が求められる時代は続くと考えられる。

20代半ばまでは「学歴」、その先は・・・?

また、TOEICは英語力以前に、社会人になった後でも、自己啓発に継続的に取り組んでいるかという指標の一つとして使われる意味が大きいため、大きければ大きい企業へ入るほど、長い付き合いとなる可能性が高い。

大手企業への就職における学歴フィルターと同じく、たかがペーパーテストひとつで将来が閉ざされるのは勿体ない。TOEICスコアが高ければ英語が喋れる訳ではないのだが、その基礎を築くためには一応有効なので、継続的に頑張ろう。

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