AIの発達
人間はまだ働いてるんだけど⋯
近年、生成AIの技術進歩が目覚ましい。
文章作成、データ分析、資料作成、プログラミング補助など、かつては人間が時間をかけて行っていた作業の多くが、実に短時間で処理できるようになった。それどころか、画像、動画、音楽、小説、ブログ記事の生成まで、エンタメ的な領域にも確実に侵食を進めている。
この流れを見ると、「AIによって仕事が奪われる」という言説が広まるのも土台無理はない。
しかし、少なくとも日系企業の現場を見る限り、仕事が減っているような実感などほとんどない。仕事は減らない・・・むしろ増えていたり、要求水準が上がって重くなっているのではないか!?というのが率直な印象である。
なぜ・・・
AI導入によって業務効率は確かに上がった。だが、効率化によって空いた時間は、より付加価値の高い新規業務や追加対応に充てられ、結果として現場の負荷は下がらない。結局のところ、AIはコスト削減装置というより、業務拡張装置として使われているとすら言われかねないのが実態である。
AIが奪っているのは仕事そのものではなく、正確には人間がやる必要のない工程がAIに置き換えられている。
定型的な資料作成や報告書の下書き、データ集計、グラフ化、議事録作成、要点整理、過去事例検索・比較、ルール遵守のチェック業務などなど・・・これらは、従来であれば若手社員やアシスタントが担っていた「修行用の仕事」であった。AIはここを正確かつ高速に処理するので、精度にも速度にもムラがある人間がやる必要など今やない。
このようにAIは、若手の登竜門だった下仕事を消しつつある。
海の向こうでは
「アメリカではAIのせいで就職が難しくなった、失業者が増えた」というニュースが飛び込んできたことがあるが、全米がむせび泣いているのかと言うと、それは相当大袈裟だ。
実際に打撃を受けているのは、中堅以下の大学出身のホワイトカラー志向の学生、事務・分析・マーケティング・コンサル補助職を目指す層、Big Techの新卒・若手・調整型ミドル層といった人たちが挙げられる。
AIによって若手の下仕事が消え、少人数で業務が回るようになった結果、それらの枠が削減されている。仕事が消えたというより人を置く理由が消えていった。
もちろん、金融引き締めや景気循環の影響も無視はできないが、少なくともホワイトカラーの若手層に限って言えば、AIによる業務代替が構造変化を加速させたという側面はあろう。
日本ではどうなる?
日本でも同じ方向の変化は起こり得るものの、そのスピードはかなり遅くなることが想定される。
文系ではすでに受験の時点から二極化が進んでおり、厳しい入試や就職戦線を勝ち抜いた上位大学出身者は、企画・戦略・高付加価値職へと進んでいく(といってもJTCで最初からここまで高尚な仕事できる奴は稀だが)。
ただ、中堅以下の文系職、とりわけ事務的なポジションはAIに食われて、そこに就くはずだった人達はサヨナラなのかというとそうではなく、基本的には営業職へと吸収される。もちろん営業職でも定例報告のような定型的な資料作りなど生成AIで効率化できる作業も沢山あるのだが、特にBtoBの既存顧客営業や調整型営業は、対人関係や社内外の利害調整が中心であり、現時点ではAIによる完全代替が難しいためである。日本には「営業」という巨大な受け皿があるため、文系中堅層が一気に行き場を失う可能性は低い。
だからといって安泰を意味する訳ではない。雇用は守られど、キャリアとしての価値や成果(年収など)が伸びない層が増幅する可能性は高い。
理系は安泰だろ?
理系の場合は受験・就職の時点ではなく、その先の「キャリア」において二極化していく。理系、特に工学部の機電系は大学推薦や専門職採用が充実しており、引く手あまたなこともあって新卒段階での就職難は起きにくい。
しかし、AIが影響するのは主にその後である。
定型設計、データ整理、指示通りに最適解を出す作業・・・こうした「補助的技術労働」は理系の仕事といえどAIに置き換えられやすい。問題設定ができる技術者、現場と技術をつなげられる人材は伸びるが、それ以外は「切られないが評価も上がらない」状態に陥る。
というわけで、AI時代の本質は失業・・・というより、その点はあくまで結果にすぎず、価値の二極化を克明に可視化したことにある。
就活・受験への影響は
ここでもちょっとした波が
AIの発達は、業務だけでなく、日本の新卒就活のあり方にも確実に影響を及ぼし始めている。
面接での受け答えの想定に使われるだけでなく、特に影響が大きいのが、エントリーシートである。生成AIによって、志望動機やガクチカは一定水準以上の文章を誰でも短時間で作れるようになった。その結果、エントリーシートによる一次スクリーニングは、もはやその機能をほとんど失いつつあり、今となってはエントリーシートを廃止する企業まで現れ始めたくらいだ。
一次選考で差がつかなくなれば、企業は別の指標に頼らざるを得ない。そこで再び重みを増すのが、大学名や過去の採用実績といった要素である。皮肉なことに、AIの普及は「公平な選考」を進めるどころか、学歴フィルターをより強固なものとして再構築しつつある。一次スクリーニングの方法としてはSPIなどの筆記試験もあるが、こちらは結構バカにならない費用が企業にのしかかるので、そう簡単に全員一律平等な一次選考が展開できるとも限らない。
最近の学歴事情
相も変わらず日系大手企業は旧帝早慶LOVE、相手にする最低ラインはGMARCH・関関同立。国公立大学は理系なら一次フィルタリングほぼ大丈夫だが、文系は企業の匙加減次第(特に公立はD級以下だと結構怪しくなる)。たまに大手企業でも見かけるD級以下の大学出身者は、中途採用や専門職、実業団など別枠での採用であることが多い。
ちなみにGMARCH・関関同立以上であれば学歴フィルターで門前払いになることは絶対ないのかというとそうでもなく、地方の有力企業の中には、大学情報に乏しいがゆえに、結果として極端に狭い学歴条件を設定してしまう例も見られる(詳細はここでは伏せとく)。
とりわけ大学受験の一般入試は、評価基準が一律的なペーパーテストであるからこそ自分の努力・実力を等身大を越えるスケールで盛って着飾ることが出来ない。生成AIのようなツールに頼らず自分の腕一つで難関を乗り越えた証とできる、今となっては数少ない機会なのかもしれない。だからこそ、学歴の持つ意味は今後さらにその重みを増していくことになる。
その結果は、大いに今後の人生を左右するものになるので、受験生各々の奮闘を切に願いたい。

