リスニング全体
頭の中で文章を書けるか
リスニング初心者にとっては、TOEICの音声を聞いたところで音の塊にしか聞こえないだろう。リスニング力を鍛え、英語耳をつくるには、聞こえてきた音声を文字に起こすディクテーションが最も効果的と言われる。しかし、それは簡単に出来るイメージがあるが、実際はなかなか面倒な作業となる。忙しいサラリーマン等にとって、そこまでじっくりと費やせる時間はないはず。
そこでオススメなのが、聞こえてきた音声を紙の上ではなく、自分の頭の中で英文としてイメージしてみること、所謂「脳内ディクテーション」である。これはトレーニング中はもちろんだが、試験本番の時も意識して使っていくべき。
リスニング中は、音声をキャッチ → キャッチ出来たワードを組み合わせて脳内で英文作成 → それを和訳というフローになる。本来は、脳内英文作成・脳内和訳などという回りくどいことをせず、キャッチした音声をそのまま英語耳・英語脳の感性をもって意味を捉えるべきなのだが、それは上級者のなせる業。シロウトが意識すべきは、上記のフローをいかに早く回せるかである(矢印の部分にかける時間を短縮出来るようにトレーニングを重ねること)。
貴方は、TOEICの音声をどれだけ脳内で英文に変換出来るだろうか?どれだけのワードをキャッチ出来るだろうか?その出来映えはリスニングのスコアに比例すると言っても過言ではない。
本番前はスピーカーで
トレーニング中はイヤホンを使ってもらって一向に構わない。それが正確な発音を覚え、今後もワードをキャッチ出来る肥やしとなる。
ただ、初学者にとって特に見落としがちなのは、TOEICのリスニングは会場のスピーカーを使って実施されることである。イヤホンとスピーカーでは当然ながら聴こえやすさは段違いであり、イヤホンでのリスニングに慣れてしまうと本番で戸惑うことになってしまう。
そこで、本番が近づくにつれ、徐々にスピーカーでのリスニングに慣れ、出来れば敢えてより悪い音声環境へとシフトしながら耳を鍛えていこう。
先読み
先読みの重要さはTOEIC受験者にとってはもはや常識、「イロハのイ」とも言えるところである。ただし、先読みにもやり方があり、入念な作戦とトレーニングの積み重ねが必要となる。具体的な先読みの方法は後述するが、ここではリスニング全体としてのアドバイスを一つお伝えする。
リスニング試験が始まった直後は試験解説の音声が流れる。ここが先読みのしどころであるのは当然であるが、その時やってしまいがちな間違いとして、Part3・Part4の問題文と選択肢を読み過ぎることである。
TOEICの試験が、問題用紙に書き込みOKならばそれも有効かもしれないが、書き込みはNGなのがルールであり、Part3・Part4の先読みを大量にこなしたところで、普通の人間はそれをちゃんと覚えていられる筈がない。まして、Part1・Part2を経た後なら尚更のこと。それ即ち無駄である。
なので、Part3・Part4の先読みは1問ずつ、多くても2問ずつで十分。その時点で、試験解説の時間はまだ余っていると思うので、残された時間でやるべきは、Part1の先読みである。詳しくは後ほどすぐに。
Part1
どんな問題か?
1問につきA~D4つの単文の音声が流れ、問題用紙に掲載された写真と内容が合致するものをA~Dから一つ選ぶという問題である。全6問。
ここは準備運動Partではない
Part1は音声量が少ないためリスニング自体のウォーミングアップにはいいだろうが、決して問題の難度が生易しい訳ではない。ハイスコア者ですらここで1、2問は落とすこともある。
とはいえ、スコア800以上を目指すなら、ここでの失点は後々響くことになる。舐めてかかると出鼻をくじかれることになるので、最初からギアは上げておこう。
頻出単語をおさえる
Part1の音声は短いので、分からない単語や聞き取れない単語が出てくると、それだけで解答には大きく不利となる。そこで、pave(舗装する)やlawn(芝生)といった頻出単語は絶対におさえておきたいところ。
別コラムでも紹介した「TOEIC L & R TEST 出る単特急 金のフレーズ (TOEIC TEST 特急シリーズ)」では、Part1頻出単語を集めたコーナーもあるので、大いに利用価値がある。スペルや意味を覚えるのもリーディングに活きるので大事だが、ここでは勿論、発音も音声でインプットしておくこと。
写真を動的にイメージ
最後は、Part1の先読み方法について。問題文や設問文が書かれていないので、あまり先読みのイメージはないかもしれないが、写真を事前に見て、どのような音声が流れてくるかを思い描いておけば、精神的な唐突感をやわらげることが出来る。特に試験開始直後で気分が浮わつきやすいPart1では、このようなセルフメンタルケアが、スムーズな試験運びの鍵になってくる。
さて肝心の、先読みのコツだが、それは単なる静止画としてではなく写真を動的にイメージすることである。写真を描写する音声として流れてくるのは、基本的に現在進行形の音声である。つまり、写真は一見すると止まって見えるのだが、解答に際しては写真に描かれた主体の動きをイメージして捉えなければならないのである。
例えば、
・人が2人同じ方向を向いて歩いている
・人が横断歩道を渡ろうとしている
・男性が女性に書類を渡そうとしている
・1台の車が店を通り過ぎようとしている
など、写真のほんの少し先の未来をイメージし、動画として見てみること。ただし、余計な妄想を膨らませ過ぎる必要はなく、せいぜい1~2秒程度のgifファイルのようにイメージしてもらえば問題ない。
ところが、写真を動的にイメージ出来ないタイプの問題が存在する。それは、人がいない、風景だけの写真である。この場合、大抵の物は動かないので、静止画としてイメージせざるを得ない。
Part1でもっとも厄介なのはこの手の問題であり、Part1での6問中の1問はこのような問題が出る。人が写った写真の場合は、その人が主語になりやすいので心の準備が容易である。だが、人がいない写真では、どれが主語になるか分からないため、音声が流れたときの唐突感が大きい。
したがって、このタイプの問題に対しては先読みの時間を多めにとり、どれが主語になるか、それに関してどのような文章が読まれそうかを、日本語でいいのでイメージしておこう。例えば、「部屋の写真だったとして主語になるのは、机か、窓か、ペンか、スタンドライトか!?」「机が窓の側にある、窓が開いている、ペンが机の上に置かれている、スタンドライトの電気がついている」・・・など。事前に状況を出来るだけ細かく把握して、音声を待ち構えよう。
“being”に注意
このPart1で引っ掛けとして使われやすいのは時制である。読まれた音声が「(写真の中で)今起きていることなのか」それとも「すでに起こったことなのか」は特に意識しなければならない。
時制として特に使われやすいのは、先述の通り「現在進行形」だ。能動態については、「~さんが~をやっている」という最もオーソドックスな形となる。一方で、厄介なのが受動態である。この場合は“~ has been placed~”など「完了形」で使われることもあれば、“~ is being placed”というように「現在進行形」で読まれる場合もある。
こうなると同じ受け身の文章であっても、今の話なのか、既に実行されたことなのかで大きく意味が変わってくる。机の上に書類が置かれた写真だったとしても、読まれたのが「現在進行形」で「書類が机の上に置かれている」という音声だった場合、一見すると合っているようにも見えるが、それは写真と音声で時制が一致しないということになり、×になる。
受動態の音声が現在進行形であるかを見極めるため、曲者“being”のキャッチは特に重要なので注意し、本番で混乱しないようにトレーニングを重ねておこう。
また、先の小見出しでも紹介した厄介な風景問題については、写っているモノに対して現在進行形で何かを施す人物がいないため、“being”が入った選択肢は正解になりにくい(ただし、あるモノが別のモノに対して何らかの影響を及ぼしている可能性もゼロではないので、絶対ではありません)。
Part2
どんな問題か?
最初に単文の音声(ここでは前文と表現する)が流れ、その応答として適切なものを問題用紙に記載された選択肢A~Cのうちから一つ選ぶ問題。全25問。
実は鬼門
Part2はPart1と同じく一つ一つの音声が短いので初心者向け・得点源だと勘違いされがちだが、ここは意外と厄介なPartとなる。
何故なら、Part3やPart4では音声が長い代わりに、一部を聞き漏らしても他でカバー出来る余地が残るが、Part2は基本的に一言なのでそれが出来ない。
また、選択肢には英文も記載されていなければ、Part1のように写真もなく、一切のヒントが紙面上には与えられていない。つまり、短い音声を確実に聞き取る真のリスニング力が問われるPartと言えよう。
以前は得点しやすいPartと言われていたが、近年は変化球な問題も増え、難度の上昇が著しいところでもある。
消去法の使いどころ
そんなPart2だが、唯一良心的なところがある。それは、選択肢が3つしかないこと。
これなら当てずっぽうでマークしても3割の得点率は期待できる上に、消去法もやりやすい。どれか1つの選択肢を確実に除外出来れば、確率は50%まで上げることが出来る。
したがって、Part2は消去法のスタンスで臨むとプレッシャーを幾分やわらげることが可能だ。
典型パターン
別パートでもお伝えした通り、リスニングにおいては最初の3ワードをキャッチすることが肝要であるが、このPartでは特にそれが消去法に活かされることになる。
例えば、”What”や”How”で始まる疑問文への応答として、”Yes”や”No”で返事するのは考えにくい。逆に”Do you have~”や”Is she~”などに対しては”Yes”や”No”で答える可能性が残る。
また、”What time~”や”When”など時間の話をしているのに、場所などに関する明らかに的はずれな回答をしている選択肢は除外出来る。
※”When”と”Where”は意外と聞き間違えやすいので注意
ひねくれ回答
ところが最近は、上記のようにパターン通りにはいかない問題も増えてきた。例えば、前文では何かを尋ねているのだが、「ホームページを見ろ」「別の担当に聞いてくれ」など、ちゃんと回答していない選択肢が正解になるケースである。
逆に、このような冷たい対応が選択肢として出てきた場合、正解の可能性が高いと注目してみると良いだろう。
似た発音には注意
また、よくあるトラップとしては、前文と選択肢で同じような発音のワードを含めている問題がある(Desert・Dessertなど)。選択肢の音声で、前文で聞こえてきたワードと同じものがあると意識すれば、その選択肢は正しいものという錯覚を起こしがちであり、そのような心理をついたイヤらしい問題である。
これも逆に、前文で出てきたワードと似たような発音のワードが選択肢の音声で聞こえてきた場合、その選択肢は引っ掛けの可能性が高い。これが中級者以上であっても、意識していないとついつい引っかかっしまうのだ。前文の意味がうまく掴めなかった場合は、消去法のいい材料として使えるはずだ(さらにその裏をかかれたら申し訳ない)。
解答のフロー
まずは前文の意味を正確に掴めるかが勝負である。それが分かってもまだ油断は禁物。選択肢の音声も短いが故に1ワードでも聞き漏らすと焦りやすいので、最後まで集中して聞こう。
しかし、前文の意味を100%は捉え切れないことの方が多いことも事実である。一部は分かったのか、それとも全面的にお手上げなのかでその後の対応は変わる。
何も分からなかった場合は鉛筆を転がすしかないが(それでも当たる確率は30%ある)、一部だけでも前文の意味が掴めた場合は、消去法で足掻く余地が残っている。せめてそのような状態にもっていくためにも、くどいようだが最初の3ワードだけは死ぬ気でキャッチしよう。
選択肢Aをちゃんと聞こう
前文をしっかりとキャッチすることは重要なのだが、ありがちなのは、前文の意味を掴もうと固執するあまり、次に聞こえてくる最初の選択肢(A)を聞き逃してしまうことである。
音声では、前文 → 選択肢Aはとてもテンポよく進み、時間的余裕がない。そのため、前文が読まれたら、すぐさま選択肢の聞き取りへと気持ちを切り替える必要がある。前文の意味が完璧に分かったからと言ってすぐに気を抜いてしまうのは論外だが、前文の意味が瞬時に掴み切れなかったときに、どう対応するかが勝負の分かれ目となる。
この難化したPart2を相手にすると、前文を一回だけでは完璧に聞き取れない問題に何度も遭遇するはずだ。その時は、最初の3語を中心に聞き取れた単語をもう一度暗唱するだけでも、かなり核心に近づいてくる。
ここで「もう一回・・・」と思いたくなるものだが、暗唱はここでストップさせる勇気が肝心であり、それ以上前文に固執すれば間違いなく選択肢Aの聞き取りに支障が生じてしまう。それでは回答出来るものも出来なくなってしまうので、選択肢も正確にキャッチすることでさらに見えてくるものがあると信じて、TOEIC音声のペースに振り回されることだけは回避しよう。
Part3
どんな問題か?
大問1問につき、2人または3人での会話が30~40秒ほど流れ、それに関する小問3問に解答する。選択肢は4つ。大問ベースで全13問、小問ベースで全39問。
先読み
Toeicの中でも特に先読みが重要と言われるのがPart3とPart4のような長めの音声が流れる問題である。
問題用紙に問題文など多くの英文が記載されているため、これらをヒントとして利用しない手はない。先読みのポイントとしては以下の通り大きく2点ある。
① 会話の流れを読む
3つの小問の英文を読んでいけば、会話の全体像が掴みやすい。例えば、
1. 男性は何故その店に来たのか?
2. 女性はどんな提案をしたか?
3. 男性はこの後どのような行動をとると考えられるか?
という小問だったとすると、3問を一纏めにとらえ、
男性が店を訪れて店員の女性に何かを相談した → 話を聞いた女性が男性に何かの提案をした → 男性がそれを受けて何かの判断を下した
というストーリーが見えてくる。そして、答えるべきは上の流れにおける3つの「何か」についてである。
リスニングにおいては、このような土台を事前に築けていれば、何の話をしているのかという輪郭が見えているため、聞きやすさが大きく変わってくる。こうして見ると、大きなヒントが問題用紙に既に記載されているのだ。
Part3は会話の展開について問う問題が多いので、会話の全体像・流れを把握した上で具体的な中身をキャッチしていこう。
② ピンポイント問題
“Why”や”How”で始まるような小問については、会話の流れを掴めていればまだ答えやすい。
それに対しし、”When”や”Where”や”How many”といった始まり方の小問は、より具体的かつ細かいことを問うているので、会話文の該当箇所をピンポイントでキャッチしなければ解答は難しくなる(”What”はどちらのタイプもよくあるが)。
事前にこのような問題が来ることを認識しておき、会話文が流れ始めた時に待ち構えておくという戦法が有効である。細かいことを聞いてくる小問を見つけた時は特に注意して、会話文の音声が流れ始めた後も意識を途切れさせないよう心掛けること(これには演習の積み重ねが大事)。
選択肢は先読みすべきか?
問題文の先読みは必須。では、選択肢も先読みすべきなのか?これに対する見解としては基本的には不要というのが答えである。
確かに選択肢を読んでおけば、当然ながら事前に持てる情報量は更に多くなる。ただし、そのうちの殆どは誤った情報(ダミー選択肢)なのである。それを鵜呑みにしてしまえば、却って混乱やミスリードを招くリスクが高い。選択肢も読めば相応の時間も使うことになるので、それがコスパに見合うとは思えない。
したがって先読みの方法としては、問題文に集中して会話の流れを読み、特に集中して聞くべきところを事前に認識しておくのが良い。
しかし、余裕がおありなら、”museum”と”exhibition”、”hospital”と”dentist”など、同種で非常に紛らわしい選択肢が複数混ざっていないかは確認しておいた方がいい。この場合、会話の場面を詳細に把握しなければ、どれが正解かを見抜く根拠が掴めない。特に3問中一番最初の小問に多いのだが(会話がどこで行われているか、話しては何者か)、紛らわしい選択肢が多いと思ったら、特に注意して聞き取る必要がある。
聞いてから解くか、聞きながら解くか
色んな意見があり、結論としては、どちらでもやりやすい方で良い。ただし「聞きながら解く」やり方は中~上級者向けである。
何故ならば、意識が音声と問題を行ったり来たりするので、記憶力や切替力、そして安定したメンタルを求められる。ただ、慣れれば特にピンポイントな小問が多く見られる場合(どちらかというPart4に多い)は、こちらの解き方の方がオススメ。
初学者・初級者に向いているのは、聞いてから解くというやり方。この方法は、音声の情報を忘れてしまうリスクがある点がデメリットだが、音声の流れや全体像を掴めていれば記憶も定着しやすい上、Part3では会話の展開を掴むことが何より重要になる。
そのため音声に集中し、インプットの確実性を上げる方が、慣れない人には混乱をきたさず進められるだろう。また、その方がリスニング力も上がりやすいというメリットもある。
聞きながら解くやり方は、やはり解答のスピードが段違いなので、次の先読み時間も多く取れるので、マスターできれば大きな武器になることは間違いない。音声には解答に関係する重要な箇所と、そうでない箇所があり、波がある。解答に関係する音声が聞こえてきた場合、その直後は重要性が落ちることが多いので、その隙にマークするという手法だが、上級者向け。
解答のリズム
Part3やPart4は、時間が長い。それによって産み出される精神的負担をミニマムにするには、解答にリズムを持たせ、頭や身体を早いこと慣らしていくことが重要である。
初心者にとって理想的なリズムは、
- 先読みした上で音声を一通り聞く
- 小問3つを解いてマーク
- 音声が小問2つ目を読んでいる時点で、次問の先読みを開始
といったところである。これが中級者になると小問1つ目の音声が終わる前に次問の先読みへ移れたり、さらに上級者になると、聞きながら解く方法を駆使してマークが終われば即効で次問の先読みへ移る。このようなリズムをテンポ良く繰り返して、精神的安定を保てれば、解答もスムーズに展開できるはずだ。
あえて先読みしない
ところが、難問にぶち当たり解答につまずき、上記のようなリズムが崩れる場面が試験中必ずどこかで訪れる。そんな時は、次の問題の先読みを諦めなければならない。
このような事態に備え、トレーニング中は敢えて先読みをせずに解いてみることをオススメする。試験本番でリズムを取り戻す訓練にもなる上、ヒントがないので真のリスニング力を鍛えるのにも、うってつけのアンクルウェイトにもなる。
もちろん、先読み自体の訓練も必要になるので、本場さながらの演習(公式問題集をフルで解いてみる時など)では先読みする、Part3・Part4個別の演習では先読みしない、というようにバランス良く使い分けて実力をつけていこう。
さらに大事なことを付け加えると、リズムを取り戻せず先読み出来ない状態が続く場合は、今の問題自体を諦めて次の先読みへ移ることがダメージを最小限にするコツである。ズルズルいけば、取り返しのつかないことになる。口で言う程、問題を捨てることは簡単ではない。捨てる勇気はハイスコア獲得のためには不可欠なスキルであり、それを身に付けることが、Toeicにおける一つの壁である。
図表問題
初学者・初心者にとって厄介なのが、Part3・Part4それぞれの終盤で立ちはだかる図表問題である。これに対しては、図表の視覚情報なしには解けないので、聞きながら解くというやり方にならざるを得ない。
単純な表の問題はまだ解きやすく、例えば下のような問題ではこう対処する。
果物 | 値段 |
りんご | $100 |
みかん | $200 |
ぶどう | $300 |
メロン | $400 |
上の表に対し、「登場人物はいくら支払ったか?」という小問があるとする。そして選択肢は以下の通り。
A:$100
B:$200
C:$300
D:$400
上のように、選択肢に値段が書かれている場合は、それに対する果物の情報が欲しいので、音声は果物の情報に集中して聞く。そこでフォーカスされた果物を把握し、対応する値段を表から見つけ、その選択肢を選ぶ。つまり、選択肢に書かれていない方の情報に重きを置いて、音声から情報を得るのである。
Part4
どんな問題か?
大問1問につき、1人によるアナウンス等が30~40秒ほど流れ、それに関する小問3問に解答する。選択肢は4つ。大問ベースで全10問、小問ベースで全30問。
Part3との違い
Part4の対策としては、Part3と共通の部分が多い。ただ、両者には大きく異なるところが一つある。
それは、Part4は一人でずっと喋るので、会話形式のPart3に比べると話の展開が掴みにくいのである。それ故に、話についていけなくなると、展開が変わったところで話に戻ることがやり辛く、最後までそのまま置いてきぼりにされてしまう可能性が高い。
そのため、特に序盤を死ぬ気で聞いて「何の話をしているのか」を早めに把握すること。また、Part3に比べるとピンポイント問題が多いので、話の全体像を事前に読み取ることも依然として重要だが、先読みの意識を少しピンポイント情報寄りにシフトさせた方が良い。どんな情報をキャッチすべきかを事前に頭に入れ、待ち構えるのだ。
出鼻をくじかれるな
だいたいのPartでは、序盤に易しめの問題を集中させ、徐々に難しくしていくのがスタンダードとなる。しかし近年は序盤に難問をもってくるイヤな傾向もあり、それが最も顕著なのがPart4である。
特に最近は、第1問目でいきなり難問がくる確率が高い。出鼻をくじかれると後々響いてくるので、序盤で難しい問題が来ても「そういうものだ。じきに易しい問題がくる」と割り切る気持ちが大切なので、覚えておくと良い。
最後に
リスニングとは言いながら・・・
繰り返しになるが、頭の中でどれだけ英文を書けるかが重要である。その英文を日本語に変換したり、問題用紙に記載された問題文・選択肢を読む・・・
もうお気付きだろうが、リスニングといっても、その半分は実はリーディングなのである。その根源は語彙力や文法力。逆に言えば、聞いているだけではリスニングのスコアは上がらず、聞く力と読む力の総合力を試されているともいえる。
さらに言えば、それだけ伸びしろを多く与えられているということであり、リスニングの方がスコアが伸びやすい理由の一つもそこにある。
開眼の時は必ず訪れる
また、脳内ディクテーションと一口に言っても、初学者には大変だろう。これはもう場数を踏むしかなく、TOEICのリスニング教材のみならず、ニュース・映画・洋楽など色んなものが教材になるので、とりあえず英語が聞こえてきたら、モードを切り替えてワードを一つでも多くキャッチしてみるという癖をつけておこう。
それも、漫然と聞いているのではなく、まずは単語そのものをどれだけキャッチできるか、次のステップとしては、それらの単語をSVOCの文構造として頭の中で組み合わせながら聞くこと。SVOCの組み立てのためには、そもそも単語をキャッチし、その意味が分かっていなければならないからだ。そして、文の構造が見えれば、文全体の意味もだいぶ掴めてくるはずだ(SとVを把握するだけでもかなり違ってくるぞ)。
そうしているうちに、TOEICのリスニング演習をしていると、いつしかスラスラと音声が頭に入ってくる自分を実感出来る時が来る。
聞き方も大事であり、慣れない外国語を聞き取るには、全神経を集中させるために雑念を取り払う必要がある。それは瞑想にも通ずるところがあるかもしれないが、一切の雑念がなく、ただ英語の音声のみが入ってくる世界を作り上げられると大変心地が良くなり、脳内で英文もスラスラと浮かんでくる。
そうなるためのトリガーまでは解明出来ないが、そのような、ゾーンに入るという体験を是非して頂きたい。扉を開くことが出来れば、たちまちリスニングにハマってしまうかもしれない。
次回予告
次回がTOEICシリーズの最終回となるが、45分のリスニングを乗り越えた後に待ち受ける75分のリーディングについて解説する。