注:当コラムで言うTOEICとは、TOEIC® Listening & Reading Testのことを表します
TOEIC 何点取ればいい?
新卒:700~800
既卒:800
結論は上の通りである(後述するが、新卒の場合は学歴ランクによって目標スコアが変わってくるので注意)。日系大手企業の採用選考において「英語ができる」という印象を持たれたり、加点の対象となる目安はこれくらい。
巨額な売上高を叩き出す大手企業は海外進出しているケースが多いため、英語は必須に近いスキルとして重要視されている。ただし、これは「たまに英語を使う機会がある」一般的な社員を前提とした目安スコアであり、普段から海外拠点と接する機会の多い部署・海外出張・海外赴任の対象となる者、また、社内公用語が英語であるような企業では、上記よりプラス100のスコアが必要となると考えておいた方がいい。外資系企業の場合も同様。
逆に、マイナス100のスコア(新卒600・既卒700)でも「資格欄に書けるものが運転免許くらいしかなくて、寂しいからどうしてもTOEICスコアを書いておきたい」という場合は、履歴書・エントリーシートに書いても問題はないが、それはマイナスにこそならないものの、プラスにもならないだろう。「英語に対するアレルギーはない」と分かる程度である。
(新卒)なぜ最低700?
公式のランク
TOEICを主宰するIIBC(国際ビジネスコミュニケーション協会)が公式にスコア別のランクとその基準を解説している。
(https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/lr/pdf/proficiency.pdf)
上記の表では、スコア730以上がBランクとして「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている」レベルであると評価をしている。このスコア730がひとつのラインとして定められているが、切りのいいところでスコア700で勘弁してくれている企業も多いという訳である。
(新卒)大学ランク別の目標スコア
大学生が新卒での就活までにTOEICで獲得しておくべきスコアは以下の通りとなる。
C級大学以下:800
「逆だろ!?なぜ上のランクにいる大学生の方が、目標スコアが低いんだよ」と叩かれそうだが、学歴フィルターに引っかかる心配のない学生はスコア700(730)で十分である。英語は内定の決め手にはならないので、大学入学後も継続的に英語を頑張ったとして加点されればあとは過度に英語に注力せず、700を越えた後は専攻する学業・部活・アルバイトなど、別のことを頑張るべきである。
外資や総合商社などの超一流企業に行きたい場合や、ライバルに英語で差をつけたいという強い思いがあるなら別だが、個人的には、一流大学の学生はスコア700(730)を越えたらもうヨシとして問題はない。
資格は低学歴のためにあり
逆にFランク大学生など、学歴フィルターに引っかかる可能性が高い学生は、大手への挑戦権を獲得するために、なんとしても運命を変える剣を備えておかねばならない(学歴フィルターでふるい落とされてしまうという運命を・・・)。
別コラムでも記載したが、そのためにはスコア700や730ではまだインパクトに欠ける。より希少価値の高いスコアとして最低800を越え、採用担当者の目に留まらせて学歴のハンデを少しでも縮めなければならない。
だからこそ、学歴ランクが低い者ほど、より高いTOEICスコアを目指すべきである。完全に大学名一つで落とされ、エントリーシートも履歴書にも全然目を通してくれない可能性も残るが・・・ちゃんと資格欄くらいは目を通してくれることを祈る。
※ C級大学の中でも国公立大学の学生は大手企業の学歴フィルター自体は通過できる望みは高い。しかし、C級は地方国公立大学が増えるため、都会へ出てきて大手企業の選考を受ける機会が少なくなるのが不利なところ。また、相手はB級大学以上の学生となるため、チャンスを少しでも拡げるためにもTOEICスコアを上げておきたい。
既卒は足切りの意味が強い
転職においては、学歴や資格よりも職歴が何より重要となってくる。TOEICは加点材料というよりは足切りに使われることが多くなり、必須要件として記載されたスコアをクリアしなければ、応募すら出来ない。厳密に言うと応募自体はしてもいいのだが「募集要件くらいちゃんと読めタコ」とソッコーで不採用通知を叩き付けられて終わるのみ。
足切りラインは、企業や業種や職種によりバラバラではあるが、外資系や、英語を日常的に使う場合でない限りはだいたいスコア800ほどあれば大抵の企業では応募が可能となる(出来れば公式Aランクのスコア860まであると心強いが)。足切りラインが低い企業の場合は、スコア800ほどあると多少の加点対象になるケースもあるかもしれないが、内定にグッと近づく程のたいした加点は期待できない。
社会的評価
学歴>>TOEIC>有名資格>>ゴミ資格
所詮、資格は学歴には勝てない。資格はあくまで学歴の補強としての役割でしかない(司法試験・公認会計士等の超難関資格・プラチナ資格は除く)。面接で如何に熱意を伝えられるかが一番大事だが、そこに行きつくまでにも多くのハードルがあり、面接に至るまでの道を切り開いてくれるのが、他ならぬ学歴である。
その学歴がない者はどうすればよいか・・・資格で、せめてもの足掻きをするしかないが、TOEICならば有効な足掻きの一つとなり得る。他の有名資格としては簿記・宅建・FP等が挙げられるが、TOEICがこれらの資格と違う点としては、TOEICはスコア制のため、自分自身で資格の価値を高めることが可能になる点である(上限はあるものの)。
簿記・宅建・FP・ITパスポートといった有名資格は、何故それを取ったかを面接で上手く説明出来れば好印象となるが、合格の決め手としてはまだ弱い。あと、どの資格とは言わないが、資格ビジネスとして産み出されたゴミ資格は無駄。
高得点でも喋れない人は多い
そもそも、TOEICのスコアが900だろうが800だろうが、それだけでは海外に行ったところで何も出来やしない。TOEIC公式ランクAの評価基準である「Non-Nativeとして十分なコミュニケーションができる。」は正直、ちょっと言い過ぎ感が否めない。
それもそのはず、TOEICは「聞く」と「読む」といった受けに特化した試験である(正確にはTOEICにもスピーキング・ライティングの試験はあるが、まだポピュラーになっていないのでここでは扱わない)。外国人とコミュニケーションをとるには、それを土台として「話す」「書く」といったアウトプットが不可欠となり、受信しているだけでは実用的な英語になるはずがない。
ただし、話すためにはまず相手からの話を聞くことが必要になり、メールなどを書くためにはまず相手からのメールを読むことも必要になるので、TOEICの勉強が「話す」「書く」ための基礎を築いていることを否定するつもりはない。コミュニケーションのためには、TOEICに加えて、さらなる訓練をする必要があるという話である。
なぜ社会で重視される?
実用性ないのに
TOEICスコアだけでは、英語をどれだけビジネスの場面において実用出来るのかという尺度にはなりえない。では何故ここまでTOEICスコアが社会で重要視されるのだろうか?就職・転職の時のみならず、その後の会社人生における昇格・昇進にまで関わってくる程だ。
実のところ、TOEICスコアでは真の英語力は測れないということは、多くの企業における採用担当者はとっくに承知している話であり、TOEICは、大学入学後や就職後においても継続的に努力が出来ているかという尺度としての意味の方が強いのである。
これはこれで結構大変なのよ
英語は、極論を言うと、究極の暗記科目であり、英語から離れると徐々に単語等の忘却により確実に英語力は落ちていく。したがって、TOEICスコアの維持・向上には継続的な努力が不可欠になる。TOEICスコアは一度取得すればスコアが公式に消えることはないが(ここはよく「2年で消える」と勘違いされがち)、過去2~3年のスコアを要求する企業は少なくない。スコア制の試験でもあるので、現時点での力を測る指標としても使いやすい。
さらには、TOEICは2時間で200問が課されるなかなかハードな試験であり、スピード感・体力・気力が要求される。経験者にはよく分かるはずだが、本番さながらの問題演習に臨むにはかなりの気合が必要となるため、特に忙しいサラリーマンには相応の負担となる。
ハイスコア者が日系企業で評価されるのは、英語力を評価されているというよりは、それを維持・向上できる背景を買われてのことなのである。
英検との比較
我が国において、TOEICと並んでポピュラーな英語資格として、英検(実用英語技能検定)がある。TOEICスコアと、英検の級の対応関係は次の通りとなる。少々古いデータとなるが、TOEIC公式データとして、英検取得級別の平均スコアが2001年~2014年まで集計されていたことがある。
英検:級 | TOEIC:スコア |
1級 | 945 |
準1級 | 716 |
2級 | 528 |
準2級 | 401 |
3級 | 376 |
4級 | 342 |
5級 | 344 |
上記の表をみると、大手企業における新卒合格ラインは英検「準1級」に相当しそうである・・・が、巷ではTOEICスコア800はないと、英検準1級は厳しいと言われている。したがって実態としては、2級では物足りない、だが準1級では少々ハードルが高いということで、その間を取り、新卒の合格ラインとしてTOEICスコア700は分かりやすく、かつ良い塩梅なのであろう。
スコアの決まり方
謎が多い
スコアは正答数をもとに決まるが、よく分かっていない部分が多い。1問5点というように配点が定まっている訳ではなく、問題の難易度・正答率によっては没問が生じたりもする。試験の回が変わっても、同じ英語力であれば同じスコアになるという考えのもとで設計されているとのこと。
つまり、問題の難易度が高ければ正答数が低くともスコアは高く出やすく、逆も然りと言われる・・・だが、この調整には限度があるので、やはり問題が簡単であるに越したことはない。
公式問題集等においては、正答数によるスコアレンジの表が掲載されていたりするが、幅が広すぎてよく分からないというのが正直なところ。
何問正解すればいい?
とはいえ、各回の難易度によるものの、大まかな目安は多くの人の経験により明らかとなってきている。例えば、スコア700であれば正答率7割強、スコア800であれば正答率8割強は必要・・・というように、正答率×990(満点)よりは少々厳しめに出るようである。全問正解でなくとも、990満点が出ることがあるのも面白いところ。
公開テストとIPテスト
主な違い
公開テストは自分で申し込んで受験する形式(ちなみに受験料はどんどん上がっている)、IPテストは企業・学校内における団体受験形式となる。IPテストは、基本的に公開テストからの過去問が使い回された問題が多いため、問題の難易度自体は、公開テスト>IPテストとなる。
ただし、その分IPテストは正答率が多くないとハイスコアが出ないので、スコア算定の条件としては同じである。そのため、公開テスト・IPテストどちらも資格としては有効である。ただし、稀にIPテストの結果が選考で使えない企業もあるため、どちらかというと公開テストを受験しておくほうが安心だろう。
みんなどれくらい取れるのか?
公開テストはレベル高い人が多い
スコア | 分布 |
895~ | 3.6% |
845~ | 4.2% |
795~ | 5.8% |
745~ | 7.1% |
695~ | 8.3% |
645~ | 9.4% |
595~ | 10.1% |
545~ | 10.4% |
495~ | 10.0% |
445~ | 9.1% |
395~ | 7.8% |
345~ | 6.2% |
295~ | 4.3% |
245~ | 2.4% |
195~ | 1.0% |
145~ | 0.2% |
95~ | 0.02% |
45~ | 0.01% |
10~ | 0.02% |
公開テストの場合、ボリュームゾーンは500台~600台前半といったところ。平均点で見ると600周辺であり、「結構高くないか!?」という印象である。それには理由があり、公開テストの場合は、就職・転職・大学院入試など明確な目的・目標をもって、自分から望んで受験料を払ってまで受けにくるので、みんな意識が高い。それに応じて英語力のレベルも高くなる。
特に最近はコロナ禍であるにもかかわらず受験しに来るほどの受験生が集まるので、平均スコアも620を上回る回もあった。
IPテストもそこそこ
スコア | 分布 |
895~ | 1.3% |
845~ | 1.4% |
795~ | 2.1% |
745~ | 2.9% |
695~ | 3.8% |
645~ | 5.0% |
595~ | 6.5% |
545~ | 8.1% |
495~ | 9.6% |
445~ | 10.8% |
395~ | 11.6% |
345~ | 11.6% |
295~ | 10.3% |
245~ | 8.1% |
195~ | 5.4% |
145~ | 1.5% |
95~ | 0.1% |
45~ | 0.02% |
10~ | 0.02% |
対して、IPテストの場合は団体受験のため、イヤイヤ受けさせられる消極的な受験生が多い。スコア分布にもそれが表れており、ボリュームゾーンのスコアは300台~400台にまで落ちてしまっている。数値が高めに出やすい平均スコアでさえも、スコア470である。
普通の人はこんなものか・・・というのはちょっと違うというのがワシの見解であり、IPテストで団体受験をする企業は、そもそも英語を使う機会の多い企業、つまりは規模の大きい企業は多いことが考えられる。さらにその中でも、英語を使う機会の多い(多くなりそうな)社員が選抜されて受験する(全員受けることもあるだろうが)。
したがって、公開テストの受験者層より意識が低いとはいえ、普通の人間に比べれば能力もポテンシャルも高い者がIPテストを受験していると考えるのが自然である。公開テスト程ではないが、IPテストの受験者も全体の傾向としてはそこそこの英語力を持っているはずなのだ。
スコア700、800の位置づけ
以上より、スコア700や800はやはり簡単に取れるスコアとは言えない。公開テストでは、スコア700は上位30%、スコア800は上位13%がだいたいのところ。これは偏差値でいうとそれぞれ55強・61強くらいとなり、それほど突出しているという印象はない。
しかし、これがIPテストになるとスコア700は上位11%(偏差値62)、スコア800は上位4.5%程度(偏差値67)となり、ある程度高いレベルの母集団(IPの受験者)であっても相当上位に入ることが分かる。
TOEICを大学受験の世界に当てはめるならば、言ってみれば、公開テストは河合塾等の浪人生参加率が高い模試、IPテストは進研模試が該当するだろう(進研模試で偏差値60といっても大したことはないが、河合塾の全統模試等で偏差値60はA級大学を狙えるレベルになる)。
大学別平均点
東大生はどれくらい?
それでは気になるのは、各大学の学生はどれくらいのスコアをとっているか?ということである。あまり確定的なデータが多くない中、各ランクからの代表校における平均点をまとめてみた。
学歴ランク | 大学 | 平均スコア |
S級大学 | 東京大学 | 688 |
東京工業大学 | 640 | |
京都大学 | 628 | |
一橋大学 | 619 | |
A級大学 | 神戸大学 | 648 |
B級大学 | 青山学院大学 | 689 |
同志社大学 | 641 | |
中央大学 | 617 | |
明治大学 | 615 | |
立命館大学 | 594 | |
立教大学 | 569 | |
千葉大学 | 553 | |
奈良女子大学 | 550 | |
金沢大学 | 524 | |
東京農工大学 | 503 | |
C級大学 | 埼玉大学 | 477 |
新潟大学 | 425 | |
香川大学 | 418 |
学部・年次・人数(母集団)の違いがあるはずで、大学ごとに条件が違うので、これが大学ごとの英語力の優劣を示す指標にはなり得ないが、上位ランクの大学生がどれだけのスコアを取得してくるかの目安程度にはなるだろう。
天下の東京大学でさえもTOEICスコアの平均は700に達しないというのが意外である。スコア600を越えるためにも苦労することが読み取れ、大手企業の新卒採用における合格点として700で壁が設定されているというのも頷けるだろう。
次は、外国語・国際系の大学・学部における平均スコアを紹介する。
大学 | 平均スコア |
上智大学 国際教養学部 | 938 |
国際教養大学 | 920 |
東京外国語大学 外国語学部英語学科 | 877 |
ICU | 874 |
上智大学 外国語学部英語学科 | 865 |
TOP5を掲載したが、すべてがTOEIC公式のAランクのライン(スコア860)を上回っており、さすがと言わせる結果である。
対策がものを言う
やらなきゃ東大生でも出来ない
偏差値・学歴社会の最高峰である東大生ですら平均では700を越えられないのだが、これは、
- TOEICは頻出単語や文章にビジネス寄りのクセがあること
- 大学受験ではリーディングの比率が高く、大学生は一般的にリスニングに慣れていないこと
- 英語専攻の学生以外は普段から英語に触れる機会がないこと
- TOEIC対策に注力している者が少ないこと
ということから当然の結果である。東大生の殆どもおそらくほぼノーベンで受けているのだろうが、それにもかかわらず700近いスコアを平均で叩き出すところは、むしろスゴイとすら言えるだろう。ちなみに、東大の大学院入試ではTOEICスコアが必要となるそうだが、文系の東大院生は平均800のスコアがある。
やったもん勝ち
英語専攻の学生たちは、いくら相手が東大生と言えど、自分の専門である英語で負けるわけにはいかない。学歴ランクや偏差値が東大生には歯が立たずとも、彼らが900周辺のスコアを獲得しているように、TOEICスコアは学歴・地頭・才能で決まるわけではなく(ある程度相関はみられるが)、どれだけ継続的に英語に触れたか、そしてどれだけ試験のクセに合わせた対策を講じてきたかが重要となる。
中学英語レベルはマスターしていることと、高校で習う英文法がある程度理解できていることが前提にはなるが、簡単ではないもののちゃんと対策をすれば、スコア700はもちろん800も留学・海外駐在等なしで誰でも取れるスコアであることは間違いないので、具体的にどのように対策すればいいのか、蓄積してきたノウハウを、後のコラムでご紹介できればと思う。