0.目次
1.転職と日本人
これは一過性ブームではない
いまの世の中は「空前の転職ブーム」というイメージがある。終身雇用が根強かった日本でもついに人材の流動化が進みだした・・・と印象を持つ方は多いだろう。
しかし、昔から「入社してから3年間は仕事を辞めたらアカンヨ」という年長者からのありがたいお言葉を聞き続けてきた方も多いはず。
ということは・・・3年以内という比較的短期に仕事を辞める人は昔からいたということである。3年以内離職率については昭和62年(1987年)から厚生労働省によって調査されているが、調査開始時点から既に3割近くの3年以内離職率があったことは割と有名な話となっている。
昔の転職
転職希望者は約50年前から100万人以上いたという記録もある(総務省の「労働力調査」)。転職希望者は右肩上がりに伸び続けており2021年ではなんと900万人に迫ろうかという数値である。流石に現代の方が転職への意識が強いことは間違いないだろうが、昔はサラリーマンとして勤める人口自体が少なかったので、単純に意識の強さが9倍だという話でもないだろう。
つまり、今に比べると小さなマーケットかつ仕組みも異なってはいたものの、転職はずっと昔の時代から我が国で存在していたのだ。ま、そりゃそうだ。昔の戦後間もないころのモノクロ映画では、役所をやめてあっさりとメーカーの工場へと転職した若い女性も描かれていたりするし(今の価値観からするともったいね・・・)、さらには江戸の遥か昔から武士だって身分を越えて商人となったり学術の道で才を活かした者もいる。こういうのも「転職」だ。
転職者比率については就職氷河期が集結した2005年の5.4%がピークであり、その後は4%台後半で推移し、率的には15年前ほどの方が転職は盛んだった。
やり方がある
転職というのは今に始まったことではなく、それなりの歴史がある。
その中で、民間企業としても中途採用のノウハウを大なり小なり形にしており、求職者と企業、そしてそれらをとりまく勢力もあらわれ、ある程度、転職には進め方のセオリーが構築されているということなのだ。
2.転職に学歴関係ある?
「企業による」と言ったらそれまでなのだが
求職者としては、特に初めての経験になると転職の進め方で色々気になることも出てきて当然なのだが、その中の一つに挙げられるのは、転職においても新卒の時のような「学歴フィルター」があるのかどうかだ。
学歴社会と言われる我が国においては、どんなに仕事が出来てもやはり学歴がなければ門前払いなのだろうか・・・,
若いほど関係してきます
既によく語られていることではあるが、転職市場において学歴は、20代までは関係ある、30代からは関係ないというのが、かなりザクっとした答えだ。厳密に言うと20代でも職歴を重視するところもあるし、超大手企業だと30代以降でも学歴を選考要素とするところだってあるので、企業によって例外は勿論ある。
20代は当然まだまだ仕事の経験は浅く、専門分野が明確に定まっている場合も少ない。そこで企業側としても、まだその人のポテンシャルを重視せざるを得ず、その指標として学歴を見られるという訳である。これも厳密に言うと、より学歴が重視されるのは「第二新卒」と呼ばれる範囲までであり、新卒から5年程経過した28歳あたりから「そろそろ一人前になる頃だろ」ということで、学歴の要素は徐々に薄れ始めてくる。
30代以降になると、社会人経験もそれなりについてくるので、学歴・ポテンシャルよりも、仕事の中でどんな成果をあげたか、ウチで即戦力になれそうかというところが見られるようになる。ただ、ジェネラリスト志向の企業や歴史の長いコテコテの日系大手企業だと、どんな年齢であれ人格・基礎的能力を図る指標として、自社の社員の学歴層にふさわしい学歴を持っているかは見られることがある。
もうひとつのフィルター
書類選考では学歴以外にも、年齢・転職回数など様々な要素が見られたりするが、ここで一つ、年齢にかかわらずずっとついて回る見落とせない要素がある。それこそが「社格フィルター」だ。学歴の代わりに、現職の社格・規模感が転職では重視される。
理由としては、一つは単純に社格が高いところで働いていた人ほど優秀な確率が高いというものであり、これは学歴にも通じる要素だ。
もう一つは、業界にも関わってくる話だが、社格・規模があまりに離れすぎると仕事の進め方が大きく異なりすぎて馴染めない可能性があるからだ。ザクっと大手企業と中小企業で分けると、大手は組織的な動き、中小ではフットワークの軽さを求められる。
中小零細・ベンチャーなどあまりにも規模が小さいところで個人プレーを中心に活躍していた求職者が大手に来たところで、レポーティングラインを守りながら組織的な動きに徹することが出来ず、組織全体に悪影響を及ぼしてしまうリスクがある(こういう突っ走る奴ホント困るんだ・・・)。個人技は卓越していても、チームプレーにおいて活躍することとはまた別の意味を持つのだ。
一求人で何十件もの応募がくるんだよ
大手企業は中途採用でも応募が殺到する。選考する人は主に担当部署であり(しかも人事に関わる話なので機密性が高く部内でも限られた人だけで選考を進めることになる)、リソースが少なすぎるため新卒採用よりも大変である。
したがって、それなりの学歴・職歴があっても社格や規模感が明らかに格下の場合は、書類で切ってしまうケースもよくあることなのだ。
3.転職のはじめどき
痛み、叫び、嘆き、苦しみ、憎しみ
転職する理由は様々であるが、転職サイトのdodaさんが毎年転職理由を集計されており、だいたい上位にくるのは、
というものである。
どれを取っても仕事する上では重い足枷となることには間違いないが、気を付けないといけないのは、これらの問題はどの企業で働いていても起こりうるということである。
給料、昇給が見込めない
生活に直結する話なので、身の振り方を考えるのも当然といえば当然である。鈍感な奴なら最初は別に気にしなかったりもするが、それでも人と比べてしまうと途端にいてもたってもいられなくなる(私の年収低すぎ・・・)。
それ程、お金・給料というものは重く、分かりやすい数値で示されるため比較の対象としてもよくあがってくる存在だ。日系企業は「若いうちは低空飛行、中年から一気に上昇する」と言われるが、結局、一生上がらないことだってある。
マイナビさんの「転職動向調査」によると、転職して実際に年収が上がった人は1/3程度しかいない(2割超が下落。半分程度は変化なしということ)。仮に、入社時に年収が上がったところで、その先はどうだろうか?
年齢にもよるが、中途採用者は基本的に部長級以上への出世の対象にはならない(後述)。現職で大逆転がおこり、役員になれる可能性だってなくはない。長い目でみるとどちらが良いのか?退職金を犠牲にする価値は本当にあるのか?それは誰にも分からない。
人間関係(ハラスメント)
これも切実な問題である。特に精神的なダメージは深刻であり、もし、うつ病にでもなってしまったら、重症化してしまえば基本的に完治は難しく一生ものの付き合いとなってしまう。そうなる前に逃げるというのは有効な選択と言える。
だが、嫌な奴、合わない奴なんてどこにでもいる。大手になればなるほどそういう人に当たる確率自体は少なくなるとはいえ、仕事で関わる人数が多くなる以上、必ずどこかでぶち当たるもの。その度に転職する訳にもいかず、ある程度の理不尽にも耐えねばならない局面は必ず出てくる。今が本当に逃げ時なのか、そうでないのかは第三者からみた印象も参考にしながら慎重に判断すべきなのだ(夜眠れなくなってしまったら速攻で転職して逃げるか、休職した方がいい。まずはお医者様とご相談を)。
会社の先行き
不安じゃない奴が逆にいるのか?
たとえ大手企業であっても、いつどこが潰れるか分からないこの時代である。自社が将来どうなってしまうのか、不安を抱えている人がむしろ殆どなのではないだろうか。
景気に波があるように、個々の会社にも波がある。100年企業も我が国では珍しくないが、彼らがいつも順風満帆に100年を過ごしてきたと思ったら大間違いであり、幾多の難局に対して力を合わせて乗り越えてきたのである。
どこも大変
これも他の会社に行ったから未来永劫解決する問題とは限らず、隣の芝生は青く見えても実際に入社してみると綻びだらけでメチャクチャだったというのは「あるある」だ。
経営の先行きについては、たかが一社員ごときに判断がつくものではない。だが、出戻り採用も始まっているこのご時世、一旦思い切って転職してみて、行った先がダメだった、前職の方が良かった・経営も持ち直してきたとなったら出戻ればいいという考えもあるが、「苦しい時に自分だけ逃げた奴」と見られ、気まずくなるのは明白である。
上の理由に当てはまったら即、転職!・・・は待て待て
いずれも人生を左右する悩ましいポイントだが、それ故に決断には慎重を期さねばならない。要は何が言いたいかというと、いかなる理由であれ、感情的・衝動的に動いてしまうのはもってのほか、だということだ。
とはいえ・・・考えるまでもなく即座に転職へと舵を切るべき場面も存在する。
Case1:会社が法令違反をしている
これは論外だ。
主に2つのケースに分けられ、事業で法令違反・契約違反をしている時、そして労働法違反(つまり従業員に対して違法行為をしている)の場合である。
事業で法令違反・契約違反をしている時
前者については、例えば景品表示法違反で違法広告を当たり前のように乱発していたり、取引先に嘘をついて要求された仕様・水準を満たさないものを納入していたりといった不正を組織ぐるみで進める悪徳企業が大手ですらも存在する(下請けがやっている場合もあるのだが、元受けにも責任はある)。
そのようなルール違反であげた成果など何の意味ももたない上に、不正が発覚すれば自分が指示を受けて手を染めざるを得なかったとしたら行為者である自分自身がトカゲのしっぽ切りに利用されてしまいかねない。
労働法違反の場合
パワハラだともっと広い行為も含むが、これは明確に法令に反しており、残業代を支払わない、有給をとらせない、それどころか普通に土日休ませない、まだまだ甘いぞ休憩すらねーよ、といった行為である。
社員を大事にしないのはもちろん、社会のルールを守らずに事業を営もうとしている、そもそも速やかに沈められて当然の泥船に他ならない(ルールを破らなければ生き残れない程度の連中)。
そういう会社の経営者や管理職の思考は
「お前、有給を“当然の権利”みたいに言いやがって!」
「権利ばかり主張する奴には、こっちからだってちゃんと“仕返し”してやるからな!!」
などと、もはや狂気の域へと達している。
こんなもんマイナスにしかならない
上記のように、社外に向けても社内に向けてもルールを守らない会社では、何の意味あるスキルも身につけることは出来ず、最終的に自分が馬鹿を見るだけであり、速やかに離れるべきである(ただ、明らかな“黒”はダメだけど、何事も、“グレー”を如何に“白”へと持っていくかは文系社員の腕の見せ所だったりはするがね)。
内部通報制度
ちなみにこういう時、社内には「内部通報制度」と呼ばれるものがあり、職制を越えてコンプライアンス違反に関して窓口に通報することで問題に対処してくれたりアドバイスをもらえるものである。
世間では、「こんなの無駄、何の役にも立たない」「報復を受けるよ」「さっさと転職してしまった方がいい」という声の方が多いと見受けられ、それらも一理あるが、実際はそうとも限らない。
会社によるが、親身に対応してくれることもあり、パワハラ対処後の人事には最大限配慮してくれたり周りが一層気遣ってくれたりもする。明らかな法令違反があったときに内部通報制度で対処してくれるかどうかは、企業としての姿勢を判断する上ではいい材料になるのではないだろうか。
Case2:後輩に抜かれた時
一定数、そういう人達は出てくる
抜かれるというのは「昇格・昇進」のことであり、よくある転職理由にも挙げられていたものだ。ただ、全員が転職すべき対象となる訳ではない。ほぼ全ての人間がいつかは誰かに抜かれていくものだから、オジンになって優秀な部下・後輩に抜かれるというのは仕方ないというか、宿命だ。
問題は20代~30代前半までの若者であり、若手のうちにこれが起きてしまうと悲惨な予後が待っている。要は落ちこぼれ認定されたということであり、この時点で逆転の見込みは殆ど残っていない。
かわいそうな若手クンの話・・・
ワシにはかつて可愛がっていた後輩がいた。学歴も高く(当サイトでいうA級大学)、ベースは優秀であり、素直で真っ直ぐで会社への忠誠心が強く頑張り屋だけどちょっと抜けたところがあり、たまにドジってミスをすることもある、なんとも可愛げのある後輩だった。
しかし、彼の頑張りが人事権のある上司達には認知されておらず、昇格試験でも力を発揮できずまさかの不合格を連発、同期に水を開けられついに彼より年次が下となる後輩に抜かれてしまった。だが、普段の勤務成績も昇格審査の対象となる中、彼の仕事ぶりは「落ちこぼれ」に値するようなレベルでは断じてなく、これは明らかに過小評価であった(後日知ったことだが、そのあたりの年度は部署の昇格枠に限りがあり、会社・部署の政治的な都合も影響していたとのこと)。
今の会社で自分にとって「先」があるかどうかは、かつて自分と同じ境遇に立たされた先人たちが、その後どうなっているかを見れば分かる。例外なく「あんな風にはなりたくない」という言葉しか出てこないものだ。
流石に、我慢強かった彼でさえも、これにはショックが大きかったようで「自分は会社から見限られた」と捉えたらしく、その週はすべて休みをとって臥せってしまった。
・・・では終わらん
彼はその後、光の速さで、ずっと社格が上である企業へあっさりと転職していった。今考えると、寝込んでたんじゃなくて速攻で転職活動をしていたのだろうか。。。
彼を引き留めたいとう気持ちもあったが、どうしても全力で引き止めることが出来なかった。ワシも彼の選択は正解だと思ったから。むしろ、「よくやったな」と褒めてやりたかった。衝動的なところもあったかもしれないが、この状況判断と行動の早さはやはり優秀である。
数年度、彼はその会社で中途採用組であるにもかかわらず同期最速で管理職へ昇進し、今も同期の先頭を突っ走っている。
ただの自滅やないか
この事例の敗者は、何を隠そう彼の前職の会社である。結果的には、これ程の人材をみすみす手放してしまったのであり、彼の努力・魅力を上へと伝えられず、結果として仕事が激増して割を食ったワシ自身も敗北者だったのだ(彼の存在を“脅威”と感じていた側面はあった ← つまりコイツのせい)。
この転職成功例はレアなのかもしれないが、社風・上司との相性などの巡り合わせもあり、どこでどのように状況が転ぶか分からない。今の会社で道が閉ざされたと感じるならば、他の会社に活路を見出さない手はない。
いい記事(コトバ)があるので、ご参考に。
※外部リンクです(コトバノチカラ-今年も昇格出来ない人に贈る名言〜モチベーションを取り戻すために)
前向きな転職は難しい
転職の動機とは得てして後ろ向きなものであり、まじめな人は「これでいいのだろうか・・・」と逃げの転職に悩むこともあるだろうが、そんなことは考えなくともよい。むしろ前向きな転職ほど難しいものはない。
誰でも知ってるホワイト企業です
これまたワシの周りの話で恐縮だが、ワシの同僚にはずっと憧れていた一流大手企業があった。自分の会社より競争力もあり、ネームバリューもあり、利益率も高く、財務体質も高く、給料も福利厚生もよく口コミサイトには全然文句が書かれておらず、企業風土もどうやら似ているようで・・・.
まるでウチの上位互換のような企業であり、二人で「ここいいな~」「いつか一緒に転職しようぜ」「お前先に行って俺をリファラル採用で紹介してくれよー。報奨金出たら山分けしよーぜ~(笑)」みたいな軽い話をしていた。
お前、いつの間に・・・!
そんな同僚だが、明らかに元気がない時期があった。目の周りはクマが拡大し、顔色は悪く、死臭が漂って来そうな雰囲気・・・程なくして元に戻ったのだが、後日、本人に事情を聞いたところによると、あの憧れの企業からまさかの直接スカウトが来ており、「うちの会社の面接受けませんか」というお誘いが来ていたのだった。
なんともうらやましい話であり、「それで何で病むんだ!?あー、さては期待させられといて無様に落とされたんだろコイツ、プププざまぁw」とかニヤついていたものだったが、それは見当違いであった。彼はなんだかんだ言って今の会社も大好きであり、仕事も出世も私生活もそこそこ上手くいっていた。彼にとっては今の会社人生も大切なものだったのだ。
いざ本当にチャンスがくると究極の選択に
結局、何日も夜も眠れず病むほど迷った結果、彼は憧れの会社よりも、大好きな会社を取り、キャリアアップする千載一遇のチャンスを捨てる決断をした。彼は新卒で入社した企業がゴミであり現職に入社してようやく幸せを掴むことが出来たので、今の会社に只ならぬ恩義も感じていたようだ。
給料・生活は格段に良くなり、素敵な女性とも交際でき結婚することも出来た。いい上司・同僚・部下にも恵まれ、やり甲斐のある仕事にも出会えて成果をあげて順調に役職も上がり、彼の世界は今の会社のおかげで公私ともに大きく好転したのだ。
ワシも同じ身の上であり、その気持ちはよく理解できた。アイツはこの会社を離れることを考えると涙が止まらなくなり・・・これが良かったのか悪かったのかは誰にも分からないが、育みすぎた愛着が新たな一歩を阻んでしまった。
「前向きな転職」とは簡単に言うが、前向き一辺倒では、捨てるものも大きいということであり、むしろネガティブな気持ちが渦巻いている方がよほど転職には力が入るものだ(ただ繰り返すが、感情だけでは決めないように)。
4.転職活動始動(応募まで)
まず何すんの?
転職すると決まったら、応募する会社を選択したりするのだが、まずそのためにどんなツール・ルートを使うかという選択もある。
転職には、企業への直接応募、転職エージェント、スカウトサービス、色んな手段・応募への経路があるのだが、結論として別にどれでもいい(適当)。というか、色々組み合わせて使って全然問題ないのだ。
転職に関するサービスを利用するには、まず転職サイトへの登録が必要となる。細かい選び方については、他の転職専門サイト・ブログ・動画をご覧頂いた方がいいと思うが、色んな転職エージェントが手持ちの求人情報を色んなサイトへと掲載するため、求人情報自体は大手サイトであればどこも大して変わらない。
エージェントはうまく使う
「転職エージェントはダメ」という話も多いが、これはエージェントによるので、一概に語れる話ではない。
そもそも元から直接応募で求職者が殺到する大手企業は、応募者を選別してくれるエージェントを使うことが多く、そこで非公開求人も扱う。内定後のサポートもしてくれるのでエージェントの活用も全然アリだ。
ただし、あれこれ手を出すのも考えものであり、ちゃんと内定への近道になる手段を選ばないといけない。今はスカウトなど企業・エージェント側からのオファーがよく来る。その中で乗ってみる価値のある「脈アリ」を見極めて、動くのだ。
脈ありランキング(そうだよ主観だようるせーな)
EX級:本来の採用プロセスを無視した完全なる“引き抜き”
これは極めて例外的なケースであり、主に役員といった経営層、部長以上といった上級管理職が対象となる。
本来は、書類審査・面接などの採用プロセスを経て中途採用を進め、企業の規程に基づいて彼らの給料を定めるものだが、これは超法規的に取引先などで目を付けていた人材にアプローチして「どうかウチに来てください、報酬はこれだけ用意いたします」というスタンスで引き抜いていくものである。
本来、ヘッドハンティング・ミドルハンティングとは、こういうことを指す(たかだか下々の者が勘違いしてはいけない)。
S級:企業の実働担当部署から直接きたアプローチ
上のような極めて例外的な事例を除くともっとも「脈アリ」なのはコレ。企業の人事・採用担当ではなく、営業、経理、技術部門など自分の専門分野に対応した部署から直接きた連絡(しかも決裁権のありそうな役職者からの連絡であれば尚よい)。
実働部署が直々に求職者情報のデータベースを検索し、職務記述書も仕事内容まで詳細に読まれた上で「おっ、この人はいいぞ!」とマジで興味を持たれている可能性が高い。
ただし「脈」という面では申し分ないのだが、企業側も必死であるため、求人自体は微妙なものも多かったりする。
A級:企業の人事から直接きたアプローチ
これにも色んなパターンがあるので、ちょっとややこしい。
大抵の場合、人事から実働担当部署に話が通っているので全然「脈アリ」ではあるのだが、人事が求職者情報を検索して見つけてきたので担当部署が主体的に厳選して見つけてきた場合に比べるとどうしても確度は低くなる(これも人事と実働担当部署がどれだけ協議して求職者にアプローチしてきたかによるが)。
ただし、あくまで人事は窓口になって連絡しており主体的に貴方のことを見つけたのは実働部署だった、という場合はS級のケースと変わらない(むしろ人事にも話が通っているはずなので、人事面接もある程度確度がありそうだ)。
いずれにせよ、企業はフィルターをかける側であるにもかかわらず、わざわざ適任になりそうな求職者を見つけてアプローチをしてきたということは、相応の脈があると考えてよい。
B級:転職エージェントから、自分の経歴とマッチした具体的な求人案件があり、なおかつ、職務経歴書を読んだ形跡の見られるメール文のあるアプローチ
表現を簡潔にまとめる力量がなく、なんとも長ったらしい小見出しで申し訳ない。この場合、転職エージェントが求職者に対して「コイツは利用価値がある」と思ってアプローチしてきているのは間違いない。
気を付けねばならないのは、これには2通りあり
(1)提案してきた求人に本気で通そうとしてくれている場合
もあれば、
(2)提案しているのは釣り求人
の場合もある。
ちなみにワシはこのパターンで転職を決めたのだが、もし本命がダメだった場合の第2候補として、本命よりずっとショボい企業を提案されていたので、(2)の側だったのかもしれない(本命に通ったから良かったものの)。
C級:転職エージェントから、自分の経歴とマッチした具体的な求人案件がある、または、職務経歴書を読んだ形跡の見られるメール文のあるアプローチ
一つ上のパターンとの違いは、「どっちか片方」である点。
どちらかというと、現時点で求人情報がなくとも職務経歴書を読んだ上で求職者独自の経歴・スキル・資格に関する記述がメールに書かれている方が、良い結果に繋がりそうである。なぜなら、これから求職者とのより詳細な面談・ヒアリングの上、丁寧にマッチする求人を探してくれる可能性があるからだ。
だが、今のところ脈アリの求人はないということなので先行きは微妙である(職務経歴書がちゃんと書けてないというのもあるかもしれない)。
D級:具体的な求人が何もない、文章がテンプレ、自動配信
こういうのは不特定多数にテンプレで送っている案件に過ぎない。
求人の提案があったとしても自分の経歴とは何ら関係がなく、給料・待遇もロクなものではなく、時間のムダなのでブロックしてよい。
E級:スカウトなどのアプローチが何も来ないw
「ドンマイ」と言いたいが、職務経歴書やプロフィールの更新がしばらくないと求職者リストの下の方に載せられたりして、連絡も来づらくなる。
寂しくなったらアップデートしてみると、大抵は自動配信メールくらいは届くようになる。
F級:入会すら拒否られたwww
一部、入会審査をクリアしなければならないサイトがある。
TOEICは大事
職務経歴書の書き方など、細かいノウハウについては他の転職専門サイト・ブログ・動画をご覧頂いた方が良いと思うが、会社の選択肢を拡げるという点では大手になればなるほどTOEICは大事になってくる。
英語が喋れるに越したことはないが、TOEICが応募のための必須要件に設定され、足切りとして使われている側面もある。転職活動をしていない時でも、学習は継続的に。
筆記試験対策を忘れずに
さらに見落としがち、というか舐めがちなのは、筆記試験対策。特にSPIでいう非言語の試験が重要であり、どんなに専門性があって人格が良くともこれがダメなら人事からNGを出されることもある。
5.面接
情報収集
書類選考が通ればいよいよ面接へと進む。転職の口コミサイトでは、面接のことも書かれているので、これが結構参考になる。
企業では色んな部署の人が面接をするが、大抵は面接のシロウトなので、面接官向けの研修がある。必ず聞くこと・確認することと、面接に臨む上でのスタンス(雰囲気・話の進め方・見るべきポイント)を叩き込まれる。
雰囲気は緩めにするのか固めにするのか、最初に企業側が自社をPRするプレゼンを行う場合がありそれに関する的確な質問が出るか、などなど企業内での全部署共通でのスタンスが設定されているので、それを先取りできると面接を進めやすい。
転職エージェントが、企業側が見ているポイント(レスポンスが速いか、目が泳いでないか、その会社に是が非でも入りたいという意欲が感じられるかなど)を把握している場合もある。
想定問答をつくっておくのは当然だが、会社共通のクセを出来るだけおさえるという情報収集も不可欠だ。
面接対策
具体的なところは専門サイトや動画を見たほうが良いが(また都合よく話を飛ばす)、一応転職経験者である、ワシの経験談をちょっとだけ。
転職理由、志望動機、自己PR
これはセットでスラスラ言えるようにしておくこと。実は恥ずかしながら、一気に3つセットで聞かれて驚いて戸惑ってしまったことがあった。
これらは挨拶代わりのようなもので、乱暴にセット振りをされるところもある、ここで躓いてしまうと第一印象でキズがつくので、何度も暗記・暗唱し、頭ではなく身体で言える状態にまでもっていった方がいい。
特に注意すべきは転職理由
新卒との面接の最大の違いはここにある。現職を何故辞めるのか、採用しても辞められないかは、企業側が最も気にするところだ。
ネットでは「嘘をつくな。正直に言え。うまく言い換えろ。」という意見が多いのだが・・・本来後ろ向きな理由を前向きっぽく言い換えたことろで、「要は〜ことね、同じことがウチで将来起こったらどうしますか?」と、結局は相手の方で後ろ向き表現に再変換されるだけであり、やはり本質的に前向きな理由を提示しなければ、解決にはなってないように個人的には感じる。
後ろ向きで他社どこにでも起こる理由での転職が殆どである中、ありのまま本音を語るのは難しく、本質的に前向きな理由を見出す必要がある。オススメは「現職では出来ないけど御社なら出来ること」を提示し、現職も良いんだけどそれでも現職ではやれないことがあるから転職を決意した(例:現職は国内シェアが多いので海外など活動範囲に限界がある)という方向性である。
後ろ向きな「本音」の言い換えというのはあくまで、現職で出来なくて御社で出来ることがマジでないときの最終手段である(相手もこっちの経歴は見ているし分かってくれるさ 笑)。
覚えておいてほしいのは決して「嘘をつき通せ、面接官をだませ」と言いたいわけではない。肝心なのは、そういう前向きな自分に「なりきる」ことだ。後付けの理由でも構わない。なりきってしまえば、それはもはや「本当の自分」なのである。
意外と昔のことも聞かれる
面接は主に2回(多くても3回までのところが殆ど)。実働部署による面接では専門性の確認、人事面接では人間性の確認がされる。人事面接においては、新卒採用のように昔のことまで掘り下げて聞かれることも意外と多い。
ワシの場合、まさかキャリア採用の面接で、通っていた高校の選択理由まで問われるとは思っていなかった(学歴厨かアンタは 笑)。
そこで見られているポイントは、そいつの人生に一貫性のあるストーリーを見出すことが出来るかである。採用したいとなった時にストーリーがあった方が、人事権のある偉い人に対して「この人こんな人です」とアピールしやすい点もある。
面接官が面接終了後、自分のことをさらに上の人へとアピールしやすいようにするためには、どのように自分の魅力を伝えればいいのか、面接対策にはそういう視点も大事。
逆質問は入念に準備を
新卒での面接に比べると、この「逆質問タイム」の時間がえらい長い傾向にあり、面接の半分が逆質問タイムなことすらある。
なので、最低でも10問は用意しておいた方がよく、数だけではなくより深い企業研究も問われる。専門家なら気になることも自然と多くなるはずだが、もちろん人事面接でも会社自体の興味・関心を探られるので、専門分野より広いことも統合報告書などで勉強しておいた方がいい。
6.内定後
さぁ、ここからが大変だ
内定が出たら一段落であり当然ハッピーなのだが、ここで終わらないのが新卒就活との大きな違いだ。
ここからのステップが、内定獲得までと同じくらい大変なのである。
引き止めにあう
上司からすれば部下に辞められるのはキツイこと。リソースが減り仕事が大変になるのはもちろん、上からの評価に関わる場合もある。
一番最初に直属の上司に打ち明ける必要があるが、本音をあまり喋りすぎてはならず、下手に色々喋ると説得や引き止めの材料にされてしまう。あまり多くを語らず淡々と話を進めたいところだ。
「どうして?」「なぜ辞めるんだ?」「不満とかあったのか?」「再考をお願いしたい!」「君には期待しているんだ!!」「あんなに頑張ってたじゃないかあああ」と投げかけられたら、転職の面接本番を思い出し「この会社では出来ないこと」で返すのがオーソドックスな進め方だ。わざと感情的にさせて本音や不満を引き出そうとする上司もいるが、そこは冷淡な自分に「なりきり」、その手には乗らないこと。下手に給与・待遇改善などを提案されても、その場しのぎにしかならない。これは真の最終面接である。
行き先は言わない方がいい
ヒントになるようなこと、些細なことでも内定先の情報は言わない方がいい。会社同士はどこかで繋がりがあるものであり、最悪の場合は妨害にあう可能性がある。
新天地への入社自体は止められずとも、ありもしない悪評をこっそり流され、入社後に響くことだってある。打ち明けるならば、口を固く閉ざしてくれる、本当に信頼できる最低限の人達だけに留めておこう。
こんな会社辞めてよかった
執拗に嫌がらせをしてくる会社もある。
例としては退職自体をなかなか認めない、有給を消化させてもらえない、退職後に退職手続を口実とした平日での来社を強要して転職先で早速欠勤をさせる(試用期間中であり有給休暇がまだないことが多い。退職日を早めれば転職先の入社日との空白期間が生じることになり保険・年金の切り替えなどで面倒が生じる)などなどある。
このような行為に対してはエージェントに相談しよう。彼らは求職者を無事に入社させないとお金にならないため、相談には親身に乗ってくれるはずだ。
めんどくさいけど後始末はしっかりと
法律上の義務はないようだが、自分が退職すれば会社に迷惑をかけることは間違いないので、しっかりと引き継ぎをして跡を濁さず飛び立とう(迷惑をかけられてきたのは自分の方だ!なんて言わずに。。)。
色々と思うところはあるかもしれないが、内定を決められたのは現職の存在があってこそ、という面もあるだろう。
「どうせ辞める会社だから」という考えは感心できない。たとえ会社側から「どうせ辞める人だから」と思われていたとしても、退職前くらいは、曲がりなりにも自分をここまで成長させてくれた会社に対して感謝の気持ちをもって最後のご奉公に励むのが社会人としての流儀であり、人としての品格が問われるところである。
どんなにムカついていた人がいたとしても、最終出社日は一言くらいはご挨拶に伺うべき。心ある人は送別会を開いてくれる。色んな人から支えられてここまで来れたんだということが身に沁みて分かるはず。
もうひとつ
また、この時期は現職での終活に目が行きがちだが、内定先に関する疑問点も早めに解決しておいた方がいい。内定先の人事も忙しく、内定者一人一人に対する入念なケアは不可能なので(対応が悪いと文句も言いたくもなるが彼らを責めないで)、待ちの姿勢ではなく遠慮なく積極的に質問していくことが大事。
ワシは新天地での入寮の際は、家電付きの寮と知らず、危うく元のアパートの家電をほぼ全て寮へ運んでしまうところだった。。。共用のランドリーもあったし。
7.入社
死ぬ気でいけ
晴れて入社の日、最初は研修・オリエンテーションから始まるものだが、やはり初日はかなりの緊張感である(え?初日からガッツリ仕事?ご愁傷さまです 笑)。
こんな時、かつての同期達から、
「がんばれ!」ってラインが来たときは涙ものだった。。。
言うまでもないが、第一印象が定まる入社当初の時期は肝心である。緊張しているのは自分だけではない。迎え入れてくれる周りの人からも「どんな人なんだろう」「ヤバイ奴じゃなかったらいいんだけど」と警戒心を抱かれているというのが実態であり、とにかく最初はみんなからよく見られる時期だ。
メンバーの一員として、そして即戦力として認めてもらえるためにも、いきなりで大変だが、序盤は特に気合を入れねばならない局面だ。
“コイツ舐めてる”と思われたら終わり
自信でも虚勢でもNG
ただ、その中でも絶対に忘れてはならないのは、たとえ前職で何度も修羅場を潜り抜けてきた歴戦の勇士であろうとも、新しい職場ではあくまでただの1年生に過ぎないということ。
個人的な肌感覚だが、中途採用で入ってきた人というのは、多かれ少なかれクセのある人が多い(いや、そう思ってる人は絶対多いはずだけど 笑)。
中には相当な自信家もおり、
「お前らこんなこと知らないだろ?
プロの俺様が、
お前らに教えてやるよ!!」
入社早々、これくらいの勢いの人だっている。
だが、簡単にその人のカラーに塗り替えられてしまうほど、組織は甘っちょろい代物ではない。長い歴史・伝統が礎となり多くの人材を有機的に機能させている仕組みは実に強固なものであり、優秀な人でも組織のルールのもとでのラフプレーでは何も成し遂げる事はできず、大抵は数ヶ月もすれば良くも悪くもすっかり組織に取り込まれてしまうものだ。
“謙虚さ”こそ必須スキル
企業人である以上、転職後の一番のミッションは、いち早くその場に馴染むことである。
特に大手企業で「自分の色を出そう」など10年早い。まして1年生ならその会社における生き方の基本を身に着けるのが先決だ。中途入社だと、前職の方が社格が上だった人たちも沢山来るのだが、彼らの中には、
「このレベルの会社」
が口癖となっている者も一定数いる。こんな奴らをあたたかく受け入れてくれる人などどこにいるものか。
専門性の面でいち早く周りから認められることも大事だが、もっと大切なのは人として認められること。最初は新卒の如く謙虚に、たとえ役職者として迎え入れられたとしても、雑用にだって献身的に取り組む姿勢こそが、皆の心を開かせる(わざとらしーのもアカンから難しいけど 笑)。
答えが分かるのはまだまだ先
内定を決めて無事入社出来たから、この転職が成功したとはまだまだ言えない。
給料アップが目的ならば、一時的には達成したと言えなくもないのかもしれないが、会社人生はこれから長いもの。これを継続し、さらにキャリアを上げていくには、今後も努力は欠かせない。
この転職が成功だったかなどまだ何も決まっていない。それを決めるのはこれからの自分次第である。
8.さいごに
我が国、日本国はご存じの通り学歴社会であり、大学受験 ⇒ 新卒就活の二大局面は人生のビッグイベントである。だが、そこで失敗したとしても転職という人生逆転の手段があり、まだまだ這い上がれるチャンスに満ちた日本は本当に良い国である。
転職しないに越したことはない?
一方で、転職不要論も一部では聞かれ、ずっと一つの会社に勤め上げたほうが出世しやすいし生涯収入も上がるのではという意見もある。これにももちろん一理も二理もあり、確かにプロパーの方が出世がしやすいことは間違いないだろう。
「35歳転職限界説」という概念があるものの、マネジメント経験があればキャリアアップを伴う転職は十分出来る。ただしそれは、あくまで専門性をもったプレイングマネージャーとしての役割を期待される。どちらかと言うとスペシャリストの領域であり、そこから経営層まで登りつめるのは至難の業だ。会社全体としてのマネジメントを求められる役員クラスや、役員・各部署のトップとのパイプ役である部長クラスともなると、それだけ会社の社風・文化に染まり切り、人・制度・歴史・仕組み・不文律に精通していることが不可欠であり、その点ではプロパーの方が絶対優位である。部長以上の出世という意味では35歳での転職限界は否定できない。
先述の通り、転職をしたところで年収が上がるとも限らない。そして、大学受験の浪人のように失うものが大きい。出世の可能性、退職金、現職の会社知識など、浪人時よりもはるか多くのものを失うだろう。転職しても前の会社と同じ問題が再燃される可能性もあり、生半可な覚悟や軽い気持ちで転職などすべきではない。
人生を豊かにする一つの“手段”
だが、転職でも得られるものはある。色んな会社・業界を経験することで仕事・知識の幅が広がることはもちろん、なにより今までの黒歴史(人事評価、飲み会での失態、女性問題など)がリセットされるのは、減点主義が根強いこの社会では大きなメリットになり得る。
一つの会社に生涯尽くすというのも素晴らしい生き方ではあるが、一つに全振りするのはリスクも伴う。万が一、会社が沈めば自分も沈んでしまう危険性が高まるのだ。
そんな時、いざという時のために普段から準備を進めて転職というカードを持っておけば、「会社倒産しそうだ~!!」と周りが見苦しく慌てふためいている時も、「あっそ、だからなに?(笑)」・・・・・・・・・とまで淡々としているのは流石に難しいかもしれないが、「まぁ、いざというときは・・・」程度に平常心を保つことくらいは可能だ(ワシもそれで救われた)。
ここまで変化の激しい荒波の時代、転職の成功体験を一つ持っていることで得られる自信と心の余裕は、長い人生を生き抜く上では、あながち馬鹿に出来ないメリットかなと個人的には思うところだ。