TOEICと学歴⑤(大学別平均スコア)

コラム

情報元

みんなの日経

有名転職サイトである「日経転職版」の調査による大学別のTOEIC平均スコアが公開された。

過去のコラムでも大学別平均スコアについて紹介したことがあり、当時の対象は在学生のスコアだったが、今回は各大学を卒業した社会人のスコアが対象である。

そもそも日経転職版とは

かつては「日経キャリアNET」という名称だった。会員数は約30万人とのことで、数百万人の会員を擁する他の大手有名サイトに比べると明らかに少ない。日経の他のサービスとの共通アカウントである日経IDベースだと1,000万人にも及ぶ登録者にアプローチが可能であるそうだが、直接的な日経転職版会員ではない。

だが、その名の通り日経が運営する転職サイトなだけあって大手優良企業からの求人が多い。

人数は少ないが質は高い

それに伴ってか会員数は少なくとも、個々の質や意識は高いようで、現に大卒会員の年収は平均で800万円を、中央値では700万円を余裕で越えており、日本人大卒年収の平均・中央値はもちろんのこと他の転職サイト登録者よりも高水準だ(ビ○リーチは平均1本近いらしいが。ホンマかいな)。

そして日経転職版大卒会員のTOEIC平均スコアは730であり、これはTOEIC公式Bランク(5段階のうちの上から2番目)ライン上のスコアとなり、世間一般的には一目おかれ始め、堂々とカッコつけられる成績だ(四捨五入で何点か繰り上げてそうだけど)。

これが会員の「平均」なのだから、TOEICの面でも確かな実力を兼ね備えた人達と言って差し支えないだろう。

大学別TOEIC平均

公開されている集計結果に合わせ、当サイトの学歴ランクを付した表と、学歴ランクごとに集約した表が以下となる。

「差」の欄は、一つ上位のランクとのスコア差を表しており、ここがマイナスとなった場合は学歴ランク通りのスコア順になっていないことを表す(2〜4ランク上の階級より平均スコアが高くなっているケースもある)。

特に大きくブレた場合は、その要因となった大学を「備考」欄に記載している。

順位 大学名 平均点 学歴ランク
1 国際基督教大学 889.0 B級上位
2 東京大学 848.2 S級上位
3 東京外国語大学 847.7 B級準A
4 上智大学 827.9 B級準A
5 一橋大学 813.9 S級下位
6 慶應義塾大学 799.1 A級上位
7 京都大学 795.7 S級中位
8 早稲田大学 784.7 A級中位
9 関西外国語大学 781.3 D級中位
10 大阪大学 772.6 A級上位
11 青山学院大学 771.0 B級中位
12 筑波大学 761.4 B級準A
13 南山大学 757.6 C級中位
14 名古屋大学 754.6 A級中位
15 東京工業大学 752.1 S級下位
16 神戸大学 744.4 A級下位
17 学習院大学 742.5 B級下位
18 横浜国立大学 729.7 B級準A
19 北海道大学 729.0 A級下位
20 東北大学 726.6 A級中位
21 立教大学 724.4 B級中位
22 九州大学 722.3 A級下位
23 獨協大学 717.3 D級上位
24 関西学院大学 715.8 B級下位
25 大阪市立大学 714.6 B級上位
26 同志社大学 710.9 B級中位
27 明治学院大学 709.7 C級下位
28 立命館大学 708.8 B級下位
29 中央大学 708.5 B級下位
30 明治大学 703.8 B級中位
31 法政大学 700.6 B級下位
32 千葉大学 698.5 B級上位
33 広島大学 694.5 B級中位
34 東京理科大学 687.2 B級上位
35 成蹊大学 682.7 C級上位
36 関西大学 676.3 C級上位
37 神奈川大学 649.0 D級中位
38 專修大学 644.2 D級中位
39 日本大学 642.3 D級上位
40 東洋大学 626.8 D級上位
学歴ランク 平均点
S級 802.5
A級 754.2 48.3
B級 740.9 13.2
C級 706.6 34.4
D級 676.8 29.8
学歴ランク 平均点 備考
S級上位 848.2
S級中位 795.7 52.5
S級下位 783.0 12.7
A級上位 785.9 -2.9
A級中位 755.3 30.6
A級下位 731.9 23.4
B級準A 791.7 -59.8 上智、東京外国語
B級上位 747.3 44.3 ICU
B級中位 720.9 26.4
B級下位 715.2 5.7
C級上位 679.5 35.7
C級中位 757.6 -78.1 南山
C級下位 709.7 47.9 明治学院
D級上位 662.1 47.6
D級中位 691.5 -29.4 関西外国語
D級下位

所感

学歴ランクとの関係

個々の大学を見ると必ずしも綺麗に偏差値順に並んでいる訳ではないのだが、外国語大学、外国語学部が強い大学が高くなるのは当然として、それを除けばやはり学歴ランク通りの結果になったと言えるだろう(ほらほら)。

900近いハイスコアを記録したICUをはじめとし、外国語大学、外国語学部が強い大学はいずれも学歴ランクとしてはB級が最高だが、ここではS級A級の面々の中へと次々に割り込んできている。

過去コラムでもお伝えしたように英語は究極の暗記科目であり学習の継続が命、さらにはTOEIC自体がクセのある試験なのでその対応も不可欠であり、学歴や地頭だけではなくどれだけ英語やTOEICに触れ続けて来たかが大事である。

ただ、綺麗に偏差値通りの順序とはならない背景はコレだけではない。

業種による違い

大学ごとのランキングに目が行きがちだが、日経転職版による同記事ではあわせて業種別のランキングも公開されている。

上位に来ているのは総合商社、投資・投信、コンサルなど、海外志向であったり外資系企業が多く進出してきている業種であり分かりやすい。逆に下位では運輸、インフラなど国内でほぼ完結している業種が多く見られるのは当然の流れなのだが、意外にも積極的に海外進出しているはずの各種メーカーも目立っている(製薬など例外はあるが)。銀行、損保が低いのも意外であり、外資かそうでないかでも分かれてきそうだが、まだまだ国内向けの仕事も多い上に色々と勉強させられるので英語ばかりに注力する訳にもいかないのだろうか。

大学ごとに志向の違いがあり、文系主体である大都市圏の有名私立大学は特に上位に来ている業種への意識が高い。メーカーへの就職が多い地帝は同じA級の早慶に比べると苦戦気味か。

偏差値の割に就職が良く年収も高いと言われる神戸大学、横浜国立大学、大阪市立大学(現:大阪公立大学)もこのランキングでは中堅クラスに留まっているが、メーカーとあわせて金融への就職者が多いことも一因か。

職種による違い

業種だけではなく、職種による影響も大きい。今回の日経転職版での記事にはないが、TOEIC公式の調査により職種別の平均スコアも明らかになっている(いつも受験前に書かされるあのアンケートが元になっていると思われる)。

スコア700を軽く越える「海外」が高いのは当たり前として、「法務」「教育」「財務」「経営」等がそれに続き、700近いスコアをマーク。苦戦しているのは「技術」「製造」といったところであり、スコア500台に留まる。

技術者にとっては専門知識・スキルの向上が特に求められ、職場も国内しかも地方の事業所が多くなるため英語に対する優先順位はどうしても低くなる(勿論、海外の工場等で活躍する技術者もいらっしゃる)。研究職はまた別なのだが、これも理系メインである国立大学が苦戦してしまう要因の一つであろう。

女性の多さ

日経転職版会員だと男性会員の平均スコアは715.5女性会員の平均スコアは765.1と、明らかな開きがある。

実はTOEIC自体、女性の方がはるかにスコアが高く、世界全体での平均を見ても女性の方がスコア30ほど高く出ている。言語学習においては女性の方が男性よりも適しているという研究結果が数多く出ているようだが、それが真であるならば私立大学や人文系に強い大学の方が女性比率は高いのでTOEICスコアの面でも自ずと有利にはたらくということだろう。

 

このように語学を専門としていること以外にも様々な要素が影響し、さらには有利となる要素同士、不利となる要素同士がそれぞれ重なりやすいことから、結果としてさらに差が開きやすいという背景はあるものの、やはりTOEICスコアと学歴ランクには相関性がありそうだ(統計学的に〜とか寒いツッコミはパス)。

学生との違いを見せつけるが

「まだ若いモンには・・・!」

そもそも転職者の中でも質が高い人達が集まっているという面はあるのだが、各大学の平均スコアを見ると大学在学生とは明らかにレベルが違っていることが分かるだろう(しかも在学生はノーベンも多いだろうな 笑)。

外大等は英語漬けである在学中の方が冴えているのだろうが、C級大学などの中堅クラスの国立大学でさえも在学生平均がスコア400台という結果も続出している。

その点、社会人部門ではD級私立大学でもスコア600台半ばを記録しており、これはハイスコアと呼ばれる領域にはまだ距離があるものの、元より英語力・センスがある人でも初回受験ではスコア600を取り損ねることはザラにある。大学受験の結果としては惜しくも高学歴とは呼ばれなかったとはいえ、TOEICはやれば出来るということなのだ。

「高学歴エリートビジネスパーソンなら800越えくらい当たり前っスよね〜!?」

そう、既卒なら“800”取っておきたい

日経転職版の大卒会員平均であり、公式Bランクのラインであるスコア730は、リスニングに慣れればそう高いハードルではない。だが、この水準はあくまで「大手企業への転職活動において足切りラインをクリア出来る企業が多くなってくる」程度に過ぎない。

「TOEICスコアで英語力(の基礎の基礎)をアピールする」には、過去コラムでもお伝えしたように、さらにレベルを上げてスコア800に到達することが最低条件となる。難関企業だと応募必須要件の時点で800以上どころか850以上を求める場合も見られ、たまにしか英語を使わない部署なのに900以上を求める企業・部署だって目にしたことがある。それをクリアしなければ面接すら呼んでもらえないのだ。

あれれれ???

ところが、ランキングを見直してみると、そのスコア800に到達出来ているのはたった5つの大学しかない。民間就職に対して非常に意識の高い慶應義塾大学ですら僅かにアウトだ。

「嘘つけコノヤロー、スコア800は努力すれば誰でも取れるって前言ってたじゃねーかよー!」
というお叱りがまたガンガン飛んできそうだが、誤解禁物なのは「一生懸命頑張れば誰でもチャンスがある」という話であり、誰でも簡単に取れる訳ではない。

まぁ〜TOEIC学習は時間が必要だからなぁ〜。。

今回の結果どおり、高学歴の転職ガチ勢にとってすらスコア800というのは一定のハードルがあると読み取ることが出来る。つまり、彼らでさえも大手企業の転職活動においては足切りラインすらクリア出来ないことが往々にしてあるということだ。

空前の転職ブームと言われて久しいが、やはり大手優良企業の場合はそう易々と門を開いてはくれないということだろう。転職活動は基本的に現職と並行して進めるものだが、ただでさえ普段の業務で忙しい中、英語を継続的に勉強し、あのクソ面倒くさいTOEICの演習を重ねるのは生半可な努力ではない。

新卒就活は700〜730が大手企業での合格ライン(※ ただし高学歴者に限る)であり過度に英語に注力するのは考えものかもしれないが、もし余裕があるならばの話にはなるが将来のキャリアアップの機会まで見据えてよりハイスコアを目指すなら、時間の確保出来る大学在学中に頑張っておくのも一つの手だ(とはいえ2年以内のスコアを要求する企業もあるので入社後も学習は継続的に)。

実用英語への道は遠い

どーやったら聞き取れるんだあんなの

だが、いつぞや確か言ったようにTOEICでスコア800だの900だのを獲得したというだけでは、海外に飛び出したところで何も出来やしない。

まず、現地でのリスニングは英語の資格試験なんかより遥かに難しい。英語圏の人達はこちら側の英語力などお構いなくハナから「問題なく話せて当たり前」という前提でベラベラと遠慮の知らないネイティブスピードでまくし立ててくる。東南アジアなどノンネイティブの国はスピードこそ緩めだが、なかなかクセのある独特な発音の聞き取りに苦労することになる。

それに比してTOEICリスニングの音声では色んな国の訛りが用意されてはいるものの、あまりに綺麗過ぎるのだ。TOEIC初学者はリスニング音声のスピードに最初は戸惑うかもしれないが、ネイティブスピードに比べたらまだ少しトロい。リスニングですらこれだけ苦労するのだから、スピーキングがもっと大変であることは想像に難くないだろう。

毎回毎回翻訳機使いますか?

海外出張では目的地の駐在員が世話をしてくれるものだが、その国へ入国する迄、ホテル滞在中、出国した後などでは当然そういう訳にもいかず、日本語が全く通じない中で誰も助けてくれない場面も少なくはない。海外ではホテルのサービスも全然なっておらず、フロントに足を運んだり電話を強いられることも多い(むしろ日本のホテルや航空会社のホスピタリティが異常)。

今は翻訳ソフト等も発達して使いやすくはなったが、毎度確実に自分の意図・ニュアンスを100%伝えてくれるとは限らず、下手をすれば言い方次第で相手を怒らせるトラブルにもなりかねない。無論、専門分野の高度な翻訳となったらまだまだ全然通用せず、人の介在が必要だ。海外出張ですら苦労するのだから海外駐在がどれだけ大変なことか・・・。

TOEICは出来て当たり前

極論ではあるが、TOEIC程度で躓くなら海外とは縁がないと思った方がいい。しかも、TOEICでは活きた英語力は見極められない。そこで見られているのは大学卒業後や入社後でも継続的に努力が出来ているのかであり、そして海外での業務がまるで出来そうにない奴を炙り出すためのものだ。

つまり、ハイスコアだからといって英語が出来ると認められる訳ではなく、あくまで振り落としのためである。まるで適正がない仕事に配置されたとしても不幸になるだけであり、TOEICすら出来ないのであれば、それは潔く割り切る材料にもなり得るだろう。人生は(前向きな)諦めも肝心である。

英語は「手段」のひとつ

足切りはクリアしなきゃな

英語が使えれば確かに仕事の幅は広がる。多くの大手企業のキャリア(中途)採用にてTOEICスコアが必須要件として定められている中、スコアが高ければ高いほど応募出来る企業・職種も増えてくる。

さらには昇格・昇進の要件とされている企業も増えてきた。一定の英語力を身につければ今後のキャリアが一気に開けてくることは間違いない。

最優先すべきはソコではない

しかしながら気を付けておかねばならないのは、英語ひとつで転職が成功する訳ではなく、一番大事なのはあくまで本業である。

英語は転職等の幅を広げてくれるツールであるが、コアとなる仕事のスキルや経験がなければ転職そのものが成立しない。順番を違えてはならず、英語というものは仕事のためのコミュニケーションツールであり、英語一本だけで仕事は出来ないということだ。

いやいや「英語一本で食っていく道として通訳があるじゃないか」と思いがちだが、ビジネス通訳など、より単価の高い仕事を得ようと思ったら、訳の対象となる話題・分野に関する一定の専門知識が備わっていなければ、適切な言葉を瞬時に選びながら話者の意図がブレずに伝わる文章を組み立てて話すことなど到底出来ない。

英語単体で成立する仕事など殆どなく、幅広い知識・教養・スキルを活かした総合力での勝負となる。なんとなくコスパ良くラクに生きているだけではモノにならない。説得力を持って人の心をとらえるアピールが出来るのは、普段の仕事の中で苦労してきた経験の方だ。

当たり前のことだが、資格一つで成り上がれるほど世の中はチョロいものではなく、普段から励む本業の中で、外部の人間に対しても堂々と誇れる成果をコツコツと積み上げていくことが、キャリアアップへの第一歩となる(そしてTOEICはゴールデンウィーク返上で頑張るんだ 泣)。

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