※2021年2月リリース記事をリライト
構成
・東京大学
・京都大学
・東北大学
・九州大学
・北海道大学
・大阪大学
・名古屋大学
レベル帯
S級上位~A級下位
概要
日本の学歴ブランドの象徴
お馴染みだが、明治期から昭和前期にかけて、日本政府が近代国家建設の一環として設立した、いわゆる「帝国大学」を前身とする国立大学群である。
偏差値的に一番レベルの高い大学群といえば東京一科(旧東京一工)だが、大学群としてのブランド性でいえばこの「旧帝」が最強かもしれない。
東京大学・京都大学を筆頭とし、各地方の番格が構成メンバーとなる。入口においては国内最難関の入試を課すと同時に、出口でも有名大手企業への高い就職実績を維持しており、「入試難易度 × 民間就職実績」という当サイトの評価軸においても、開設以来抜群の安定感を誇っている(とはいえ番外ランキングではB級陥落したのもあるけど)。
歴史的背景
はじまり
いずれの「旧帝」も明治19年に公布された「帝国大学令」に基づき、学術研究と高等教育、そして「日本の中枢人材」の育成を目的に創設された。
「帝国大学令」には国家の須要に応ずる教授研究を行なう機関であると規定され、名実ともに学術技芸の教授と研究に重大な責務を背負うこととなったこれらの大学は、その証として「帝国」の名称を冠することとなった。
仲間をふやす
当初、帝大に限らずわが国における大学は東京にポツンと一校だけだったのだが、19世紀末にもなると学校教育にも著しい発展が見られ、大学も従来の一校主義を改めて全国の主要地区に設ける方針となった。
明治30年、京都帝国大学の創設に伴い、従来の「帝国大学」は「東京帝国大学」と改称され、わが国の帝国大学は東西2校体制となった。
日露戦争後、戦後の国民教育の拡充計画に基づき、明治39年の議会では、北海道・東北・九州に大学を新設する予算が提出された。その後、大正の時代に京城帝国大学(法文学部・医学部)、昭和初期には台北帝国大学(文政学部・理農学部)が設置され、やがて昭和6年に大阪帝国大学が、さらに14年には名古屋帝国大学が新設され帝国大学は計9校となった。
このように順次建国されていき、日本国を線引きしていった(一部、共同統治の区域がある)。
七帝(九帝)、集結
これ以外にも朝鮮半島、台湾にも帝国が存在した。
同大学群でも中堅クラスに位置する大阪大学・名古屋大学は意外にも最も歴史が浅い部類であり、最古参の東大とは建国時期に半世紀以上の差があり、帝国時代にはまだ文系学部が備わっていなかった。
選び抜かれた人達だった
という具合に、戦前・戦中にかけて、帝国大学は唯一、学位(博士号)を授与する権限を持ち、行政・軍・教育・法曹・医療など、あらゆる分野におけるエリートの供給源となっていた。
なお、従来、女子の進学先としては女子専門学校として男子とは明確に区別され、高等学校への入学は認められず、帝国大学への女子の進学は事実上不可能であった(女子にとっての最高学附とされたのは女子高等師範学校)。戦後まもなく、男女間における教育の機会均等、教育内容の平準化を目指した「女子教育刷新要綱」が閣議了解され、大学における共学制が開始されることになる(それが今じゃ推薦で女子枠すらあるがね)。
なお、これらの帝国のネットワークは「七帝」と呼ばれ、戦前は東京帝国が全体の統轄役を担っていた。戦後のGHQによる教育改革により、「帝国大学」は解体。それぞれが一つの「国立大学」という機関として再出発していった。
現代の旧帝
しかしそれから80年、ご承知のようにその格は実質的に維持され、いまだ「旧帝大卒」は学歴階層のトップクラスに位置。大手企業等への新卒就職に臨む際には、今なお看板としての威力を遺憾なく発揮し続けて続けている。地元での影響力も引き続き絶大なものであり、日本の中の見えない国境によって、それぞれが昔と変わらない統治を敷いているのである。
旧帝国大学出身者で構成される「学士会」というコミュニティも存在しており、会員限定のイベントに参加できたりと、横のコネクションがある(学士会館再オープンは5年先か・・・長い)。
昔からお互い深い繋がりのある大学群ではあるが、群内での差は激しい方である。上位の大学である程、1段1段の差は険しいので仕方がないところはある。
七帝の序列は時代によっても変化があるが、現在では東京 ⇒ 京都 ⇒ 大阪 ⇒ 名古屋・東北 ⇒ 北海道・九州の5段階である。一昔前は「東名九」という括りもよく見られたが・・・。
各帝国の支配領域
地方に旧帝があるところは分かりやすく、一強状態のエリアとなっている。甲信越は、広義には中部地方に含まれることもあるが、名古屋より東京の方がアクセスがいいので、東大の領地となる。
東北:東北大学
首都圏・甲信越:東京大学
東海:名古屋大学
関西:京都大学&大阪大学
九州:九州大学
また、以下のエリアには旧帝がないため、複数の旧帝による共同統治となる。
北陸:東京大学&京都大学&大阪大学&名古屋大学
中国・四国:京都大学&大阪大学&九州大学

東北大学は地元東北と同じくらいの学生数が、関東からやってくる。特に地理的に近い北関東は東北大学志向が強くなっており、東北大学の魅力が白河の関を越えて伝わり、その領土を拡大してきている・・・と、綺麗に終わりたいところだが、見方を変えれば、関東勢に侵食されているということでもあり、地元民からすればいい迷惑でもあるようだ(元々の人口比でみると不自然な構成とも言えないが)。詳しくはA級中位大学にて。
北陸地方に目を向けると、石川県・富山県は東大志向だが、京都府の隣県である福井県はどちらかというと京大・阪大・名大志向。北陸新幹線が延伸されてサンダーバード・しらさぎが敦賀どまりとなってしまった今、東大志向へと転換していくのだろうか?
中四国については、徳島県・香川県あたりはアクセスのよい関西志向だが、西側の山口県・広島県・愛媛県は九州大学への進学が多い。
なお、東大の影響力は多かれ少なかれ全国に及ぶが、首都圏においては早慶というレジスタンスが意外と手強い存在ではあるようだ(後述)。
位置づけ
「旧帝」は当サイトのランクにおいてS級〜A級というエリート階層に位置するが、社会的な評価においても国立難関大学の代名詞的存在として扱われる。
世間の中では「旧帝国大学」という言葉を知らない人も多いのだが(ここは学歴厨が見落としがち)、マトモに大学受験に触れたことある人たちなら、「ああ、この人は一線越えちゃった人だ(いい意味で)」と一発でピンと来るくらいの破壊力がこの大学群にはある。
全国的に知名度があるが、各領内では彼らの天下であり、もはや神格化されている(特に大都市圏以外)。
入国するのはどれだけ大変なのか
これならいけそうかも?
東大・京大は別格として、地方旧帝大学のボーダー偏差値を見てみると、文系は河合塾偏差値で60、理系でも最低55は必要になる。
この数値だけを聞くと、さほどの雲の上感はないかもしれないが、侮るなかれ。文系だと記述式の二次試験で英語・国語・数学の3科目がほぼ全ての学部で必須、理系では英語・数学に理科2科目で合わせて4科目という重さ。これに加えて大学入学共通テスト8科目で悪くても合計スコアで7割台後半をクリアせねばならない。
文系は数学も不要、理系は理科1科目のみの地方国公立大学(一部例外あり)、さらに共通テストも不要である私立大学入試とは、問われる水準の広さも深さもワケが違うのだ。
一般がダメなら・・・
推薦入学の枠も非常に少ない。東北大学は3割がAO入学者で占められるようになってきたが、AOとは名ばかりの実質学力試験、しかも一般よりAOの方が難しいと言われる有様だ(3期合格者の共通テスト得点率とか開示してくれると説得力も増すのだが)。
共通テスト不要の推薦入試もあるが、非常に高いレベルの活動実績や説明能力が求められ(「探究モンスター」っていうの?)、学力試験とはまた別の方面での難しさがある。
出口の強さ
そりゃ強いさ
有名企業400社実就職率を見ると、例年3割前後の卒業生が大手企業へと就職していく。それだけではなく国家公務員や難関士業、そして大学院へ進んで研究者を目指す者達も多い。企業での知名度・ブランド力も勿論抜群。「旧帝」というだけで何の議論もなしに当たり前のように大手企業での採用重点大学として即決になるほど「旧帝」に対する信頼感が凄まじい。
地方は民間就職に不利、かつ、地元志向なので有名企業400社実就職率のような数字は伸びにくいのだが、就職命で数の力で押してくる東京の有名私大とも戦える底力がある。
先生達も精鋭揃い
さらに、学生・卒業生の実績や、「学歴」という話からは逸れるのだが、「旧帝」の真髄はやはり研究にある。国による競争的資金の中でも最も規模が大きく代表格とされる「科学研究費」の採択実績はもうこの七帝がトップ1~7位を独占状態。引用数の高い(世界トップ1%)論文数も理化学研究所等を除けば、これも1~7位まで全部この大学群のメンバーで占められ、世界大学ランキングでも日本勢としてはどの大学もトップクラスである。
就職も大事だが、7帝国にはより高い目線を持った人たちが多い。日本の研究の最先端、そして世界を牽引し得る新たな知識・知見はこの7帝国において数多く生み出されており、「人類の進歩」に貢献しているのが彼らなのだ。

彼らを脅かす存在
今も昔も盤石に見える7つの帝国だが、この日本にはまだまだ猛者がおり、「旧帝」への挑戦者達が日々、力を付けてきている。
「超旧帝」
一橋大学、東京科学大学
ご存じの通りで、特に異論もないと思うが、こやつらは「脅かす」どころか殆どの旧帝を既に超えてしまっている。
永遠の東京2番手なのだが、それでも地方の覇者達を凌駕してしまうという設定がなんともシビれさせてくれる。これらのS級大学に勝てるのは旧帝の中でも東大・京大のみ。
「旧帝キラー」
早慶
長年、レジスタンスとして各帝国を悩ませてきた存在。学力的にどうかと言われることは多いのだが、実は「旧帝」以上に長い歴史や、強固な横のつながり、そして最強立地をフル活用して、就職や出世という領域では東大・京大以外の「旧帝」より優位に立ってきた。
東京一極集中の加速もあってますます地理的には有利な形勢になっているが、一方で理系優位な状況も留まることも知らない中、理系主体となる「旧帝」を打ち崩すのは、彼らの力をもってしてもそう容易いことではないだろう。
「準旧帝」
TOCKY
「ほぼ旧帝」と言っていい大学群。中でも神戸大学の文系は超旧帝級、筑波大学の理系も旧帝級と言ってよい。
この大学群も首都圏・関西圏といった大都市圏に位置するところから、地理的に地方旧帝よりも有利な立ち位置にいる。
帝国は不滅なり
「帝国大学」は歴史の中で終焉を迎え、「旧帝国大学」という呼称は制度上、存在しない。だが、「帝国大学」という制度はすでに過去のものとなってもなお、人々はそれを求め続けた。
東大を頂点とした「旧帝」は戦後に実態として解体された後も、受験上の大学群としてではない、純然たる「ブランド」として生き延びた。日本の高等教育のヒエラルキーを語るとき、そこには確かに「帝国の記憶」が呼び起こされる。つまり、時代が変わっても、入試難易度・就職でより優位に立つ存在が現れ出そうとも、旧帝は常に別格であり続けてきた。彼らが長い時間をかけて積み重ねてきたものは、一時の実力だけでは到底打ち破れない「壁」となっているのである。
「形」を失おうとも、今もなお「帝国」が社会の中で生き続ける。
天下泰平の中で自由や個性を標榜し、ラベルからの脱却を厭わない現代においても、人が人である以上、何かしらの秩序や象徴を人々が必要と考える局面は再び必ず訪れる。
その時に「帝国」はまた違った様態とはいえ「形」を取り戻していくこととなる。




