注:当コラムは公務員試験に関する具体的なテクニック紹介等の対策コラムではありません。
公務員試験と学歴の関係
あまり関係ない
相関関係?因果関係?
厳密に言うと、この小見出しは誤解を招く言い方ではあるのだが、敢えてこのように表現した。
過去の幾つかのページで何度か述べているが、基本的に公務員試験の合否に、在籍・出身大学の学歴ランクが影響することはない。
例えば人事院規則には国家公務員試験に関する規定が定められているが、しょっぱなの第1条に記載されている「公正かつ適正に」という理念の下、受験時の実力一本で合格を勝ち取ることが出来るという造りになっている(コネについては触れません)。
民間就活との大きな違い
民間企業の場合は「経済活動の自由」の一環として「採用の自由」が認められているので、企業側にとって好きな人を好きなように採用することが出来る。特に大手企業にもなると、所謂「学歴フィルター」に引っ掛かった学生は実質的に挑戦権すら獲得出来ないという極めて不公平(・・・と捉えるかは人それぞれだが)な試験である。
それに対して公務員試験では、大卒程度・高卒程度という区分こそあるものの、第一関門となる筆記試験は学歴ランクに関係なく受験可能であり、それをくぐり抜けた者が面接にたどり着ける。逆に言うと、苦労してランクの高い大学に入ったところで、公務員試験においては大した恩恵は得られないということになる。
ただし、公務員試験さらには公務員としての人生に、学歴が全く100%完全に意味がないかと言うとそうでもないので、それについては後述する(5%くらいは関係あるかも)。
人生逆転のチャンス
公務員試験というのは、受験戦争に敗れて高学歴の称号を得られなかった者にも公正にチャンスが与えられ、それは下剋上を果たす絶好の機会となる(と言っても実際には口で言うほど簡単ではないからな)。
逆に、難関大学・有名大学に行けた者でも、余裕をかまして直前に対策を始めているようではあまりに遅く、人生逆転されてしまう可能性もあるということである。
当サイトの学歴ランク表において、公務員試験実績より大手企業への就職実績を重視している理由は、そこにある。つまり、その大学に所属する(していた)ことにより、どれだけの恩恵を享受出来るかという点が格付けのポイントとなっており、それは大手企業への就活の時にこそ最も得られるという話である。
※学力的な面では、地方国公立大学も「GMARCH」「関関同立」に全然負けてないと思ってますからね
国家総合職は東大有利?
不人気と言われるが
かつては国家公務員採用Ⅰ種試験と呼ばれたキャリア官僚への入口だが、「東大法学部」のイメージが昔から根強い。ところが、キャリア官僚としての働き方のブラックなイメージや、超一流企業・起業の人気が高まったことから、東大生のキャリア官僚志向が低下していると言われる。
だが、直近の国家総合職試験合格者は依然として東大がダントツであり、2位の京大にはダブルスコア以上の大差をつけている。
【20年度 国家総合職試験 大学別合格者数(本当は採用者数で見たかったけど)】
順位 | 大学 | 学歴ランク | 合格者数 |
1 | 東京大学 | S | 256人 |
2 | 京都大学 | S | 115人 |
3 | 北海道大学 | A | 80人 |
4 | 岡山大学 | B | 78人 |
5 | 早稲田大学 | A | 77人 |
6 | 慶應義塾大学 | A | 68人 |
7 | 東京工業大学 | S | 67人 |
8 | 東北大学 | A | 65人 |
9 | 千葉大学 | B | 57人 |
10 | 中央大学 | B | 56人 |
10 | 九州大学 | A | 56人 |
12 | 広島大学 | B | 54人 |
13 | 立命館大学 | B | 45人 |
14 | 東京理科大学 | B | 38人 |
15 | 大阪大学 | A | 37人 |
16 | 名古屋大学 | A | 36人 |
17 | 神戸大学 | A | 35人 |
18 | 一橋大学 | S | 32人 |
19 | 東京農工大学 | B | 28人 |
20 | 筑波大学 | B | 26人 |
入口では
「嘘つけコノヤロー、学歴関係ないなら何で上位はB級以上で占められてるんだ?」と言いたくもなるだろう。
上のグラフのような状況から、国家総合職試験は東大有利だと思われがちではあるが、実態としては学生の実力が反映されたものであり(官僚養成大学としての知見が受け継がれたアドバンテージは少々あるかもだが)、学歴ランクと合格者数との相関関係は見られるが、因果関係にはないということである。
上の表では確かに東大の合格者がダントツではあるのだが、合格者全体から見ると2割弱に過ぎず、他の大学の者にも全然チャンスはあるということである。
人事院や官庁の面接官も人の子なので、学歴に関するバイアスがゼロだとは言い切れないが、基本的には東大だから有利だという構図にはない。という訳で、試験の公正さについては国家総合職試験においても例外ではないと考えられる。
採用後は
無事に国家総合職試験に合格し、官庁訪問で採用され、晴れてキャリア官僚となった後はどうだろうか?厳しい出世競争に晒されることで有名だが、各省庁のトップである事務次官の多くが東大出身者で占められていることから、やはり「東大閥」が強いようだ(東大法学部が依然として多い)。
と言っても、省庁によっても差はあるようで、東大閥が特に強い省庁としては財務省・警察庁が挙げられる。
※ 近年は色んな大学の学生を採用したいため、むしろ東大不利というウワサもあるが、あくまでウワサです
敢えて関係性を挙げるなら
実力との相関
国家総合職以外の試験についても公務員試験合格者には高学歴者が確かに多いものの、それは元々の受験者の実力との相関関係が表れたものである。
とはいえ、合格・出世と出身大学との関係性が、強いて言うなら下記2点において見出だせなくはない。
① 意識面
公務員試験の実績を上げている大学(必然的にランクの高い大学になるのだが)には、当然ながら同試験に対する意識が高い学生が多く、同級生と切磋琢磨したり、上級生から試験に関する情報を得やすい環境にある。特に面接等は情報戦のようなところがあり、事前対策としての助けになる。
ただ、公務員試験実績の高い大学に入ったからと言って、学内でそのような人脈に恵まれるかどうかは不確実であり、貰った助言も正しい情報なのか・今後も適用していけるのか(出題傾向の変化により)も不確実な点は残る。あくまでオマケ程度の威力であり、試験制度上、学歴ランクが高ければ有利になるという話ではない。
公務員試験へと進むことを前提としている学生向けのコースが設置されている大学・法学部もあり、そのコースならば公務員志望者の戦友にも多く恵まれるだろうが、それ以外の学生にとっても、公務員試験の予備校に通えば状況は同じである。
② 人脈・学閥
こちらは出世に関する話となるが、公務員の場合、より上の職位を目指すためには昇任試験が課され、それをクリアしなければならない。民間でも昇格試験が課される企業は多いが、公務員の場合は法律など、より専門的な内容が問われる(入った後も公務員て大変・・・)。
この昇任試験についても元々の学力との相関があるのだろうが、一方で、普段の働きぶりを上司等から見られるため、 周りの人達からの評価・評判も大事な要素になる。となると、周囲に同じ大学出身の人がいると、学閥による力が助けになるというケースもあり得る。この辺は民間企業と同じである。
ただし、この場合は学歴ランクよりは、同窓の人数がどれだけ多いかが勢力の強さを決めることになるので、卒業生数の多い大学、地方公務員の場合は地元の国公立大学が有利となる。
公務員を考えている受験生(大学受験の)は
大学はどうでもいい?
「公務員」「官僚」と聞くと学歴社会というイメージが先行していまいがちだが、意外と民間企業の方が高学歴者を優遇する仕組みとなっており、公務員は基本的に実力主義な世界である。
では、公務員を将来の職業として考えている受験生にとっては、大卒資格さえ得られればランクの高い大学を目指す必要などなく、とりあえずどこかの大学に入っておけばいいのかだろうか?むしろ高校生(浪人生)である今からでも、早いうちに公務員試験の勉強に着手しておいた方がいいのだろうか?
どうでもよくはない
大学入試前から公務員を志望している場合、一見すると無駄に思えるかもしれないが、それでもランクの高い大学を目指すべきと当サイトは考えている。確かに、そのまま順当に公務員になり公務員としての人生を全うするのであれば、高学歴を得ることは殆んど無駄な行為にはなる。
しかし、人生とは何が起こるのか分からないもの。大学入学後、やはり民間企業への志向に転換することも十分に考えられる。もし、その時に高学歴を得ていなければ選択肢は大きく狭まってしまうというリスクがある。
大学入学から就職活動までの2年半、色んな人と出会い、多様な価値観に触れる中で、自分の中でどのような変化が起こるか。「進むべき方向はコッチなのかもしれない」と感じたときに、思わぬ障害に悩まされないよう、人生の選択肢を幅広く持てる状況を作っておきたい。
公務員試験の難易度
種別による
「公務員」と一口に言っても実に様々である。国家総合職・国家一般職・地方上級などは代表格だが、裁判所事務官・国会職員・国税専門官など専門性のある種別も存在する。その難易度もピンキリであり、最上位はもちろん国家総合職だが、地方の警察官・消防士・自衛官など比較的易しい試験もある。
やはり厳しい
大学受験・公務員試験ともに、それぞれ受ける大学・種別によって難易度に幅はあるものの、総じて公務員試験の方が大学受験より大変である。公務員試験の専門科目は法律をはじめとして、経済学・社会学・文学など多岐にわたり、さらには一般教養・判断推理といった基礎力も試され、試験範囲がとてつもなく広い。
さらには、選択問題であっても過去問の演習だけでは通用せず、テキストに載っていないような目新しい出題も少なくない。「よく分からないけど取り敢えず覚える」・・・という勉強では勝てるはずもなく、物事の本質を掴まなければ新傾向の問題にはとても太刀打ち出来ない。
「勉強したところが全然出てきてくれない~(泣)」
「え~!?こんなのテキストにも問題集にも載ってなかったぞ~??」
というのが頻繁に起こり、それに対処していかねばならない。これこそが、大人の試験である。
たとえ難関大学に入れたからと言って、公務員試験でも順当に通用するなどと考えていたら大間違いである。特に文系の学生は、「大学では勉強しなくていい」ようなイメージがあるかもだが、それは罠だと考えて、観念して勉強しなければ勝ち残れない。公務員へ進むにしろ、民間企業へ進むにしろ、大学でサボると結構キツイ20代を送る羽目になる。
面接
「公務員試験は面接チョロいからイイよなぁ~」などとアホみたいにほざく民間企業専願者をたまに見かけるが、これがとんでもない勘違いであり、総じて公務員試験の方が面接はシビアである。
民間企業のように人間性を見られるのは勿論のこと、受けようとする省庁・自治体の仕事内容、それに対する考え等の専門的知識や、時事的なテーマに関して深く考えているかを掘り下げて聞かれる。民間での面接でも、企業理念や事業内容など理解は必要だが、民間では人間性重視である一方、公務員試験では人間性と能力、どちらも高い水準が要求されるのである。
公務員の実態
意外と大変
「公務員はラク」「9時~17時」などというイメージは過去のものとなりつつあり、霞ヶ関は青天井の残業時間、地方は実質強制のボランティア(サービス残業)に励む休日・・・窓口に襲いかかるクレーマーの激しさと理不尽さは民間企業でもなかなか味わえないのでは?と思える程の壮絶さ。そして、狭い世界であるが故に人間関係にも悩まされやすい。
決して生易しくはない環境の中、精神疾患を抱えて休職に追い込まれる職員も増えており、厚生労働省の調査によると罹患者の割合は民間企業のそれの約2倍に及ぶとのこと。
また、給与水準は民間企業でいえば「中堅以上・大手以下」といったところであり、年収1,000万円を越えようと思うと課長級以上にならないと厳しいが、同じ「課長」と言っても民間企業のそれとは重みが違い、民間で言う「部長」クラスに相当すると言われ、かなり高いハードルとなる。
「安定」はやっぱ羨ましい
大人になって分かる、そのありがたみ
しかしながら、公務員の醍醐味はやはり「安定」である。
そもそも「安定」の捉え方は一様ではなく、会社や職場にしがみつくのではなく、自分自身の能力値を高めて色んな業界・会社を渡り歩けるようになったり、独立して自力で稼げるようなったりというのが真の安定だという考えも一見もっともらしく聞こえる。しかし、このような考え方を「机上の空論」とまで侮蔑するつもりはないものの、普通の人間がそれを実践していくことなど、まさに「言うは易し」「イバラの道」以外の何物でもない。
フリーランスはもちろん、民間企業においても常に生きるか死ぬかの競争に晒されるのであり、勝負ごとである以上、敗れて路頭に迷う者も現れる。これを書いている本人も、「マジで食い扶持を失うかもしれない」と覚悟したことは何度か経験しており、最終的には経済的に生き延びられたとしても、その過程において精神面での安定性に多大な支障をきたすことは避けられない。一体寿命が何年縮んだことか。。。大手企業でさえも数年後はどうなっているか分からないというご時世である。
決算発表の度にハラハラドキドキしなくていい
「安定」を舐めてはいけない。それを己の力一つで掴み取れると思っているならば傲慢というもの。100%とは言えないが基本的に倒産やリストラの心配がない公務員の安定性というは素晴らしいことであり、生活基盤そのものへの心配を一切しなくてもよいということは、この沈みゆく国においては掛け替えのないメリットとなり得る。
ちなみに、福利厚生も当然ながら充実しており、特にスゴいのが健康保険。休職したときに貰える傷病手当金は、標準月間報酬の80%~90%(法定は約67%)が貰え、それが最長3年続く(法定では1年半)。休職申請も通りやすいので、先程述べた休職者の多さはソレが原因の一つだという面もある・・・しかも3年経ったら「期限切れそうだから復職するか~」というノリで戻っていく人もいる。。。産業医面談等も経てのことだろうが、イイのかよそれで(笑)。
民間就活との掛け持ち
悪いことは言わん
最後に、公務員試験と民間就活の掛け持ち・両立についてだが、書いている本人の経験から言わせると「両方ガチで頑張っちゃうのは、やめといたほうがいい」というアドバイスになる。
公務員試験が本命の場合、リスクヘッジや面接の練習として民間企業を数社受けるのはアリだろう(多くても10社程度にしておこう)。しかし、特に大手企業は片手間で内定を取れる程甘くはなく、大手100%ではあまりに危険である。リスクヘッジとして民間企業の内定を得ておきたいなら、中堅クラスの企業も受けておこう(大手・中堅で半々くらい)。併願するのが大手企業一本だと、リスクヘッジどころか共倒れの可能性を高めるので、むしろリスクが増してしまうのではないだろうか。
やめときな(笑)
また、民間企業の就活に時間を割きすぎると、今度は公務員試験の筆記試験の確度を下げることになり、いくら民間企業の試験で面接での経験を積んだところで、公務員試験でそのステージへ進めなければ面接力を発揮する機会がなくなってしまう。
また、先述の通り、面接は公務員試験の方が厳しいので、民間企業で通用するからと言って、公務員試験の合格ラインにはまだ足りない可能性も高い。
筆記試験に余程の自信があるなら話は別だが、凡人が公務員と大手企業どちらも本気で取りにいこうとすると「一兎をも得ず」に終わる危険性が高まる。人の倍頑張った挙句、最悪の結末を迎えることにならないよう充分にご注意を。