総合職と一般職 ほか

コラム

コース別雇用管理制度

男女雇用機会均等法

現代の感覚では信じられないことだが、昔の日本では仕事の内容・賃金カーブ・昇格ペースなどが「性別」によって分けられてしまうことが多かった。つまり、男性であれば幹部候補として、女性であれば事務員等のサポート要員として、仕事・待遇が与えられるというように、会社人生の運命が性別によって決められてしまっていた。

だが、80年代半ばに「男女雇用機会均等法」が成立した後は「性別」ではなく「コース」により仕事・待遇が決められることとなった。そのような制度により、女性にも平等に(理論上は)経営幹部になれるチャンスの扉が開かれ始めた。

これが、「総合職」「一般職」に代表されるコース別雇用管理制度が誕生した経緯である。

現状

確かに、女性が出世し経営の根幹にかかわる活躍を果たすことも、さほど特異な光景ではなくなってきた。しかし、やや古いデータだが厚生労働省による調査によると平成26年度時点で、総合職採用者に占める女性の割合は、22.2%に過ぎない。性別ではなくコースで分けられる制度下にあるはずだが結局のところ、総合職:男性、一般職:女性というイメージが現代にも色濃く残り、数値上でもまだまだその通りになってしまっていることが窺える。

政府は、コース別雇用管理制度が実質的に男女別の管理制度にならないよう、様々な留意事項(コース別雇用管理の合理性・透明性を確保すること、コース転換の制度を整備する等)を定めている。また、男女の格差をなくせという風潮に加え、一般事務の機械化が進んでいることもあり、総合職と一般職の垣根自体が取り払われる企業も出てきている。

とはいえ、これで志ある者は男女関係なく、みんなが総合職として高度な仕事をこなし、社会全体もレベルアップして豊かになり、国民はそれ相応の高給や好待遇を得て、全員が幸せになれるのかというと、そんな単純かつお花畑な話になるはずがない。

公務員では

ちなみに少し話は逸れるが、公務員にも「総合職」「一般職」のコースが設定されている。だが、こちらは完全に意味が違っており、「総合職」は国家総合職(旧:国家Ⅰ種)のキャリア官僚といったエリートコース、「一般職」はそれ以外のノンキャリアとなる。

大卒であれば、公務員の「一般職」は、民間大手企業の大卒「総合職」と同等クラス(捉え方によっては、それ以上)の待遇となる。

※ただ、どれとは言わないが、大卒でも地方公務員の中では、一部事情が違う職種もあるので注意

総合職

大卒にふさわしいのはこれだけ

経営幹部候補として、幅広い地域・職種を経験し、ゆくゆくは部・課・グループ・チームといった組織における意思決定を任されていく。サラリーマンとして勝ち組の待遇を得るには、①大手企業に入ること②大卒であること、そして③総合職であることが必須条件である。

一般職等、総合職以外のコースでは年収1,000万円水準に到達することはほぼ不可能であると考えた方がいい(高度な専門職は別)。現代日本では年収1,000万円程度では贅沢は難しいが、一世代前における「普通の生活」のイメージにかなう暮らしを手に入れることは、なんとか可能である(詳しくは下記コラムにて)。

したがって、高い学歴ランクを得て民間企業へ入社する場合、総合職のコースでなければ学歴の無駄遣い状態となるといっても過言ではない。

総合職のデメリット

総合職には転勤が付き物であり、これに躊躇してしまう者も少なくはない。逆に、色んな部署・色んな地域への転勤が可能であれば、自分の仕事の幅を拡げることが出来る上、多くのポストに就ける可能性が出てくるため、転勤が出世への扉をこじ開ける一つの鍵になることは、ある意味当然なのである。

ただ、近年はむやみやたらに転勤させる人事も見直されている上、リモートワークの普及により仕事をする場所をある程度選べるようにはなってきた。転勤が嫌だという気持ちは重々分かるが、それで能力面でも待遇面でも未来を閉ざしていまうのは、非常に勿体無い話である。

一般職

イメージ

総合職のサポートとして、作業色の強い業務を担当する。責任は軽いが見返りも軽い・・・と言いながらも、実態としては部長以上に発言力を持った一般職社員も珍しくない。みなまで申さないが社会人の方々にはイメージが湧くはず。誰かの顔を思い浮かべている方もいるでしょう(ごくろうさまです)。

主に金融・商社で多く設けられているコースだが、大手の総合商社にもなると、総合職をも上回る超高倍率に及ぶこともあり内定難易度が必ずしも生易しい訳でもない。早慶の女子学生もよく内定するとのこと。

近年の状況

そんな一般職だが、近年はその採用枠が徐々に縮小されてきている。理由として挙げられるのが、まず、PC上での作業の自動化(機械化)が進んでいることである。確かにメガバンク等の大手企業においてはAI・RPAであらゆる作業が自動化され、人の手が要らなくなってきた。

しかし、自動化の仕事に携わった経験のある方ならお分かりかと思うが、これには莫大なコストがかかる(マジでボッタ)。定型業務の自動化が人件費抑制になるとは言われるが、初期投資が非常に高くつくことも事実であり、余裕のある大手企業にしかまだ導入は進んでいないのが現状となる。したがって大手企業でも業績の悪いところや中小企業においては、今しばらくは定型的な業務を人力でこなす必要がまだまだ残ることになるはずだ。

一般職の採用枠が減少しているもう一つの理由としては、一般職が他のコース・雇用形態へと姿形を変えていることが挙げられる。より具体的に述べると、一般職に代わり、エリア限定総合職派遣社員が増えているのである。

エリア限定総合職

これは総合職ではない(待遇面で)

「エリア総合職」「地域総合職」など色んな呼び方があるが、遠距離転勤のない総合職である。女性比率が高く、近年では一般職に代わるコースとして位置付けられている。

業務内容も一般職に比べると、営業職であったり、よりクリエイティブな業務を任されるようになり、転勤がないこと以外は業務の負荷責任の重さは、純粋な総合職とさして変わらない。

現実は厳しい

だが、その割には給料や待遇では総合職とは大きな差がついており、どちらかと言うと一般職の方に近い。総合職・エリア総合職・一般職、いずれのコースも設定されている会社もあるが、待遇面では、総合職>>エリア総合職>一般職くらいの差がある。

実例として、これまで窓口業務等の事務に専念できた一般職も、徐々に営業職に回されて大きく負荷が増えている会社がある。その割には、さほど給料が上がらず、昇格・昇給のチャンスもなかなか得られないままであり、辛い思いをしているのである。

「自称:総合職」の可能性

大学が公式に発表している就職実績として、就職者の大部分が「総合職」に就いているというアピールをしている場合がある。もうお分かりだろうが、その「総合職」の中にはエリア限定総合職が含まれている可能性が極めて高い。

一見、大手企業への就職率が高い大学でも、みんなエリート待遇を得られるとは限らないので気を付けた方がいい。

派遣社員

現代版一般職

定型業務についてはアウトソーシング化も進んでいる。つまり、一般職の代わりに派遣社員に来てもらって事務仕事を任せている。

派遣社員の是非については今更イチから述べるつもりはないが、派遣法も度々改正が進み、有期での派遣の場合は同一事業所・部署で3年働けば、派遣先の企業で社員として登用される、直接雇用のチャンスが与えられることになった。

直接雇用されれば天国?

では、派遣先の企業から直接雇用の打診を受け、晴れて正社員となれれば、長いトンネルを抜けて楽園へと辿り就けたと言えるのだろうか?残念ながら、世の中そんなに甘くはない。

これは想像に難くないだろうが、たとえ派遣社員が大卒だったとしても、直接雇用で正社員になれたところで大卒総合職並みの待遇は得られない。それどころか、大卒一般職の水準にも及ばないケースが多い。

そもそも、人件費等のコスト削減のために元々アウトソーシングしていたはずが、直接雇用で最終的に一般職にしてしまえば企業側の旨味が薄れてしまうため、直接雇用した者の賃金テーブルは別枠で設定されることがある。

光が見えてこない・・・

実はそれならまだマシな方であり、ヒドい場合は現業職(つまり高卒水準)と同じテーブルに乗せられることも実際にある。さらにエグい場合だと、現業職1年目の給料からスタートというケースまである。

失礼かもしれないが、派遣社員として最低3年間働いているので決してフレッシュな年齢ではなく、尚且つ大卒であるにもかかわらず、18歳の高卒社員と同等の給料にされてしまっては納得いく者はまずいないだろう。

さらにグロい場合もあり、正社員ではなく契約社員として直接雇用され、数年後サヨナラされるケースも決して珍しくはない。よく「派遣社員時代の方が給料が高かった」という話を耳にすると思うが、企業によって程度の差はあれ、上記のような事情が背景としてある。

ただし、大手企業であればボーナスや福利厚生などは格段に良くなるので、見えない部分での改善はあるが、それでもトータルで見ても派遣社員時代より格段に良くなることはなく、依然として社会的には決して強者とは言えない立場は続く。

実際どれだけの差がある?

下記の表は、令和2年賃金事情等総合調査より作成した、総合職と一般職の年齢別月給についてまとめたものである。

年齢 総合職 一般職
22歳 22.2万円 20.2万円 2.0万円
25歳 25.0万円 21.9万円 3.1万円
30歳 32.0万円 26.0万円 6.0万円
35歳 39.1万円 29.3万円 9.8万円
40歳 45.9万円 33.1万円 12.8万円
45歳 52.5万円 37.2万円 15.3万円
50歳 57.4万円 40.7万円 16.7万円
55歳 60.7万円 41.6万円 19.1万円
60歳 58.5万円 38.0万円 20.5万円

見ての通り、年齢を重ねるごとに差は開き、ピーク時には20万円近い差がつく。ボーナスの差も含めると、推定ではあるが年収ベースで300万円前後の差はついていると考えられる。

まとめ

大学選びと会社選び

各大学の就職力をはかる指標として、「有名企業400社実就職率ランキング」が最もポピュラーな調査結果として、当サイトでも頻繁に取り上げている。しかし、大手企業に入社出来ればバンザイという訳でなく、大卒かつ総合職でなければ、高学歴者は相応の待遇を得ることは出来ない。

総合職とそれ以外のコースへの就職実績が明かされていない大学が多いが、上記ランキング以外にも大学別の卒業生平均年収ランキングもあわせて見てみると、大手企業への実就職率は高いのに、妙に稼げていない大学が見つかるはずだ。その場合は、総合職比率が低くソルジャー要員(一般職やエリア限定総合職とほぼ同義)が多かったり、学閥が弱く出世力がない可能性が高いなどの実態が浮かび上がってくるので、十分に注意すること。

逆に、就活の時に企業の平均年収を調べてみると、一見イマイチな水準の企業でも、総合職の平均年収に限定してみると一気に数値がはね上がるところもあるので、就職四季報などでよくチェックしてみるといいだろう。そこは穴場の可能性がある。

能力=年収・待遇とは限らない

最後にお伝えしておくが、総合職以外のコースにいる社員や派遣社員が、決して能力や人間性で劣っていると言いたい訳ではない。むしろ、冴えない総合職より余程仕事が出来る方も多い。

だからこそ待遇が割に合わずコスパの悪い人生を送ってしまうことになり、それは悲劇以外の何者でもない。どうしても好きなエリアを離れたくない、もしくは高給取りとの結婚を狙うなら話は別だが、特段の事情がない限りは迷わず総合職一択である。

我が国では人生逆転のチャンスはあらゆる手段で可能だが、年齢を重ねる度にその可能性が狭まることもまた事実なので、ファーストキャリアでしっかりと大手総合職を掴みとること、さらに言えば、それ以前の若い段階で高学歴を得て人生の可能性を拡げておくべき。どうせ苦労するのなら、少しでも若いうちに苦労しておいた方がいい。

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