大学の大手企業就職力(有名企業400社実就職ランキングについて)

コラム

※23年卒版もリリースされましたので感想風なコラムを作成しています

大手民間企業 就職力の指標

入口では難易度、出口では就職力

当サイトの学歴ランキング表は、認知度・大学の研究力・公務員試験/資格試験の実績などを含みながらも、入口では入試難易度出口では大手企業への就職実績を指標として重視している。

※ なぜ「大手企業への就職実績」を出口評価として重視しているのか、については後でちょっとだけ述べている。また、下記コラムもご参照いただければ。

就職力は「有名企業400社実就職率」だけど・・・

大手企業への就職実績としては、具体的には「大学通信」さんの調査・集計による「有名企業400社実就職率ランキング」を主に利用させて頂いている。界隈では最もポピュラーな指標・データと言えよう。

ただ、こちらのランキングを大手企業就職力としてそのまんま使っているわけではない。次の3点において少々立ち止まってみる余地があるからだ。

① 有名企業400社とは具体的にどの企業なのか?
② 「総合職」と「それ以外」の区別は?
③ 公務員就職者・医療系学生は集計対象とすべきなのか?

現に例年、当ランキングでは有名私立大学が地方国公立大学より優勢という傾向にあるが、「GMARCH」「関関同立」が「金岡千広」に対して10~15%の大差をつけているような状態であり、いくら有名私立大学には地の利数の力があるとは言え、入試難易度を前提とした位置づけと余りにも乖離があり、その実態をもう少し深堀してみる必要がある。

① 有名企業400社とは具体的にどの企業なのか?

わからん

本当に「そもそも」の話なのだが、この「400社」とはどの企業なのかは具体的に明示されていない(「東洋経済」さんの記事の中にはメガバンクやメーカー等の具体的な企業名が数社登場したりはする)。「400社」について明らかにされているのは「日経平均株価指数の採用銘柄や会社規模、知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に選定」という選定基準のみであり、「この会社でーす」と一覧で列挙されている訳ではない。

「株価指数」というと色々あるのだが、「日経平均株価指数」になると一般的には「日経225」のことを指す。しかし、その225社すらも全部採用されているのか、それとも一部だけが対象なのかも明確にはされておらず、さらには「日経平均株価指数の採用銘柄」以外の企業も、一体どこのことなのかは非常に気になるところ。

「日経225」採用銘柄の企業だからと言って、すべてが文句なしの一流企業とは限らないところは確かにある(どんな企業が良いか悪いかは一人一人の主観を拭い切れない面も大きい)。さらには、企業の経営状況等も刻々と変化するので「400社」の対象も毎年入れ替わって然りではあるが、その度に特定の大学の数値が良く見えるような恣意性が混入していないことを祈るしかない。
※それか225の中でも「有名だが黒めの企業」を排除してたら逆に表彰モノだがね

② 総合職だけとは限らない

みんな「総合職」なの?

当ランキングの母集団は大卒・院卒(から進学者を引く)であるが、それらを一口に言っても採用においてはいくつかのコースがある。一部の例外はあれ、それらのコースの中でも、みんな仲良くボンビーな現代日本の中でまだマシな待遇だと言えるのは「総合職」のみである。

就職実績は多くの大学で公開されているが、コースまで詳細に明かしている大学は多くなく、女子大だと1名単位で公開している大学も存在するものの、基本的には分からない。そして、当ランキングにおいても「“総合職”のみを集計対象とした」旨の記載は見当たらず、すべてのコースが対象となっている可能性は高いと考えられる。

私立は一般職が多い(らしい)

そもそも「コース別管理制度」は、男性は総合職的な仕事、女性は一般職的な仕事に就くべきという、性別による分け方を廃することが理念としてあるのだが、依然、実態として総合職は男性が多く、それ以外のコースは女性が多いという現状を踏まえると、当ランキングは女子比率が高い文系学部が多い私立大学が有利に働きやすい(総合商社の一般職試験は結構難しいらしいけど。そういう例外は勿論ある)。

ただし、就職した実際のコースについては数字上の根拠が乏しすぎであり、あくまで推測の域を出ない話であることは申し添えておきたい。

③ 公務員就職者・医療系学生は集計対象とすべきなのか?

公務員(教員含む)について

公務員試験と民間企業の採用試験を併願するケースは勿論あるが、公務員試験の勉強は大量の時間とエネルギーが必要であり、基本的には公務員が第一志望となる。そもそも地方では公務員志向が強く、現に地方国公立大学の就職先では公務員比率が高くなり、大手企業への就職活動に本腰を入れていない学生も多い。

また、地方国立大学にはかねてより教員養成の役割もあり、教員養成学部には特定のカリキュラムが存在し、基本的に民間企業ではなく教員を目指すことを前提として4年間を過ごす(他の学部でも教科限定で教員にはなれるが)。

したがって、進学者以外の大卒・院卒をすべて含む当ランキングにおいては、公務員になる人が多い地方国公立大学にとっては不利に働いてしまう。

医療系学部について

当然ではあるが、医学部の学生は将来、医者・歯科医師・薬剤師・看護師・理学療法士などの専門職となるので、彼らも民間就活とは違う世界での勝負に挑むことになる。

厳密に言うと、製薬会社等へ就職したり、大手企業になると会社の中に診療所(というかもはや“病院”と言っていい)があるので、大手企業の「医療職」として就職する例外的なケースはあるが、主な就職先はやはり病院となる(薬学部は民間就職もそこそこ多いらしいが・・・)

これも当ランキングにおいて、国公立大学が不利になる原因となる。

補正版ランキング

以上の通り、特に上記②③の論点を踏まえると、当ランキングは実態より私立大学の数値が高めに、国公立大学の数値が低めに出やすいという特徴があり、各大学の真の大手企業就職力とは多少の乖離が存在する。

そこで、大学の出口評価として利用するには「補正」を施して考える必要がある。ところが、上記①については恣意性なく適切に有名・優良企業が選出されているということを信じるしかなく、上記②については詳細が分からないので定量的な補正は極めて難しい。

ということで、「補正」が出来るのはについてである。具体的に言うと、公務員就職者・医療系学生は民間就活者の対象外として、差し引いて考えればいいのである。

補正ランキング

上記③についての補正を施したランキングがコチラである(別タブで開きます)。

有名企業400社実就職率ランキング(20年度:分母補正)

どこを補正したのか?

補正すべきは「実就職率」算定上の「分母」である。

元ランキング算定上の分母は「卒業生(修了者)数-大学院進学者数」であるが、ここからさらに「公務員就職者数」「教員就職者数」「医療系学部卒業生数」を差し引いた。

【分母】 学部卒業生数 + 大学院修了者数 ー 大学院進学者数 ー 公務員就職者数 ー 教員就職者数 ー 医療系学部卒業生数

新たに用いた数字はいずれも、旺文社「大学の真の実力 情報公開BOOK 2021年度入試用」(20卒)を基にしている。医療系学部とは医学部(医学科・保健学科)・薬学部・歯学部・獣医学部をメインとしながら健康科学・栄養科学・保健福祉等の学部も含んでいる。

一つ残念なのは、「公務員就職者数」は学部卒業生のみの数字なので、大学院修了者が含まれていない。したがって実態としては、補正後のランキングよりもさらに国公立大学の順位が良くなる可能性はある。

また、厳密に言うと「医療系学部卒業生数」の中にも「進学者」が含まれているのだが、全体の3%程度なので、ここでは無視した(大学によっては割合が少々上がる場合もある が)

ちなみに分子については、あくまで大手企業への就職力を表すものなので「有名企業400社実就職者」そのままである(公務員等の分子加算については後述)。

大学群別まとめ

補正後のランキングについて、有名な大学群でまとめた表が以下の通りとなる。元々のランキングに「東京一工」「地帝早慶等」「電農名繊」「STARS」の構成大学が一部入っていないので、実際の数値とのズレはあるが、ご勘弁を。

※ 「早慶」を「地帝」と一緒にしているのは違和感があるかもしれないが、慶應義塾大学が元ランキングでは登場しておらず(21年度はやっぱりトップクラスで登場していたけど)、残された早稲田大学は地帝並の成績だったため

大学群 平均 最大 最小
東京一工 42.4% 55.0% 33.8%
地帝早慶等 35.8% 40.0% 28.8%
上理ICU 35.5% 41.4% 25.4%
電農名繊 35.4% 39.8% 24.4%
筑横千 28.9% 34.7% 23.9%
関関同立 26.5% 32.6% 21.7%
GMARCH 26.2% 30.4% 22.6%
女子大御三家 24.8% 28.0% 22.9%
四工大 23.0% 33.6% 17.8%
金岡千広 21.9% 23.9% 19.8%
5S 18.8% 21.1% 16.1%
5山 12.7% 15.9% 6.6%
成成明学独國武 12.1% 17.8% 8.5%
STARS 10.9% 12.8% 8.8%
産近甲龍 10.0% 10.8% 9.0%
日東駒専 9.4% 10.2% 7.5%

如何でしょうか

全体的に国公立大学の数値・順位が改善されたはずだ。元々のランキングだと当サイトでB級国立大学群の「金岡千広」は1割台中盤、同じランクの大学群である「GMARCH」「関関同立」は2割台中盤と、大きく差が付いているようにも見えたが、今回の補正で結構その差は縮まっただろう。

この数値だけを見ると、まだ「金岡千広」がやや劣勢に見えるが、ここからさらに上記論点の(主観の強い定性的補正ではあるが)に加え、そして入試難易度という入口評価も考えると、総合的な学歴力としては、
「金岡千広」=「GMARCH」「関関同立」
を基軸として、当サイトの学歴ランキングを作成しているという訳だ。

地方国公立大学がC級・D級とは・・・

「マーカン」に負けてるのか??

一般的な学歴観としては、やはり入試難易度の色が強く、おおまかには、

①東京一工
②地方旧帝
③早慶
④上位国公立、上理ICU
⑤地方国公立
⑥GMARCH・関関同立
⑦成成明学独國武
⑧日東駒専・産近甲龍
⑨E級以下

細かいところは諸説あるだろうが、だいたいは上記のような順番でご認識されている人が多いだろう(特に地方では)。

だが、大卒・院卒者の8割以上が民間企業へと就職する進路状況である中、「学歴」が人生において最大限に活かされる場である大手企業への就職活動の実績を出口評価として重視した結果、③早慶が②地方旧帝水準に追いついたり(それどころか若干優位か)、地方国公立と⑥GMARCH・関関同立(マーカン)クルンと入れ替わってしまったというのが、当サイトにおける学歴ランキング表の特徴である(申し訳ないが・・・)。

地方国公立は公務員を目指すべき?

やはりC級・D級の地方国公立大学は大手民間企業への就職はダメなのか・・・というと、一概にそうとも言い切れない。ランク付けの指標というのはあくまで「実績」であり、「就職した」と「就職できる」はちょっと違うからである。

既述のとおり、地方国公立大学生は公務員志向が強く、逆に元々、大手民間企業に対する意識が薄く、必然的に実績には上がりにくい。さらに「国公立大学」というのは現代でも一定のブランド力がある上、殆どの国公立大学の学生は幅広い基礎的学力を備え、私立大学に比べると下位層が圧倒的に少ないので、C級・D級でも「学歴フィルター」の心配は私立大学よりはずっと少ない。学生累計数で見ると、だいたい国公立大学:東大~C級下位 私立大学:早慶~B級下位であるところからも、C級クラスの国公立であれば殆ど「学歴フィルター」に対する心配は無用と言っていいだろう。

そして工学部・理学部の実用的学科(特に“機電系”)であればC級・D級でも「推薦応募(学校推薦)」が現在でも根強く残っていることにより、文系出身者から見るとムカつくほど就職が強すぎるので国公立大学を優先して進学を検討すべきである。

ただ、文系を中心とした「自由応募」の場合は、オンライン面接の普及により状況は改善してきたものの、大手企業の集まる大都市圏から離れているという地理的不利、大手企業で頭数が少なく政治力が弱いため採用枠数も少ないこともあり、「学歴フィルター」通過後も厳しい選考を潜り抜けねばならない。学歴フィルター通過後は、「みんな平等」「フェアな勝負の世界」なんて思っていたら大間違いである。

※ちなみに採用枠数の違いというのは、理系の推薦応募の世界においても明確に存在しており、やはりランクの高い大学ほど枠数は多く用意されている(A級以上から様子が激変する)。ただ、国公立大学であればC級大学・D級大学に対しても十分過ぎるほどの求人数があるため、さほどの不都合は生じていない(C級国立までは、もはや溢れすぎと言っていい)。

ま・・・「学歴フィルター」の通過ラインは企業によって様々であり、地方国立出身の大手企業社長もいるので(そういう企業は地方大に対する門戸も広がりやすい)、「企業による」と言えばそれまでであり、つまるところ地方国公立大生による都会の大手企業への就活チャレンジは、「やってみなければ分からない」というのが答えである(笑)。

※ご参考

補正版2:公務員追加

「学歴(出身・在籍大学)によってどれだけの恩恵を受けられるか?」という視点を出口評価として重視したため、出身大学に関係なく平等な戦いである公務員試験の実績は、ランク付けにはあまり強くは反映されていない(いい高校に行ったからと言って大学一般入試の試験制度上なんら有利にならないのと同じ)。

ここで視点を変えて、より
実力主義なランキング
として、公務員も大手企業と同等以上の成功者と考えて「有名企業400社」への就職実績と並べて出口評価に反映させるとどうなるだろうか。

先ほどの補正ランキングの分子・分母に「公務員就職者数」(ここでは“教員”は含まず)を加えると、次のようなランキングになる(別タブで開きます)。

有名企業400社+公務員実就職率ランキング(20年度)

畏れ多くも当サイトのランクをベースにして頂いて記事を作成され、お世話になった「数字作ってみた」様のパクリランキングのようになってしまったが(大学別「有名企業400社+公務員」実就職率≪2019年卒≫)、大学群別にまとめると以下の通りとなる。

大学群 平均 最大 最小
東京一工 43.3% 57.1% 34.8%
地帝早慶等 38.5% 43.5% 32.3%
上理ICU 37.3% 43.1% 26.4%
電農名繊 36.4% 41.2% 25.1%
金岡千広 31.6% 34.1% 29.0%
GMARCH 30.4% 34.0% 27.1%
関関同立 30.3% 36.0% 25.6%
筑横千 29.0% 36.5% 22.0%
5S 28.3% 29.6% 26.3%
女子大御三家 27.9% 31.3% 26.4%
四工大 24.4% 34.4% 19.2%
5山 22.7% 27.8% 15.4%
STARS 21.9% 28.2% 17.3%
成成明学独國武 15.8% 20.4% 12.5%
日東駒専 14.5% 15.6% 11.7%
産近甲龍 13.8% 14.3% 12.8%

これで国公立大学の数値・順位はさらに改善され、この時点で「金岡千広」=「GMARCH」「関関同立」である。上記論点の②・入試難易度というさらなる補正を加えると、「5S」≧「GMARCH」「関関同立」くらいと言ってもおかしくはない。これで、入口時点の学歴観にもかなり近づいてきたことだろう。

長崎大学・宇都宮大学のように「金岡千広」「5S」をも上回る地方国立大学も見られ、公務員志向の高さが目に見えて分かる。2022年4月更新でめでたくB級大学に昇格した熊本大学は、公務員試験実績で著名な岡山大学をも上回り、さらに同じ九州ナンバー1のA級大学である九州大学に肉薄しているのも面白いところ。

公務員試験実績を色濃く反映すると、「5山」「STARS」も中堅私大には明確な差をつけていることが分かり、学力・実力的にはまだまだ地方国立大学のレベルは侮れない。

補正版3:教員も追加

さらに、「教員就職者数」も反映するとどうなるだろうか。公務員と言っても様々であり、試験難易度・待遇もそれぞれ異なっている。ここであまり優劣を付けるのも宜しくないが、上位の学歴ランクになるほど就職率が少なくなっていく一部地方公務員を大手企業就職者と同等に扱うことには議論がある。ただ、それについては今回は触れず、分子・分母に加えると以下のようになる(別タブで開きます)。

有名企業400社+公務員+教員実就職率ランキング(20年度)

大学群別にまとめると以下の通りとなる。

大学群 平均 最大 最小
東京一工 43.4% 57.1% 35.0%
地帝早慶等 39.0% 43.9% 32.6%
上理ICU 38.2% 44.6% 27.8%
電農名繊 36.4% 41.2% 25.2%
金岡千広 36.2% 38.9% 34.1%
5S 35.7% 40.0% 33.9%
筑横千 32.0% 39.4% 23.2%
関関同立 31.4% 36.5% 26.7%
GMARCH 31.2% 34.5% 27.7%
女子大御三家 30.8% 33.8% 29.4%
5山 27.9% 36.9% 18.3%
STARS 27.5% 39.1% 23.0%
四工大 25.1% 34.7% 19.7%
成成明学独國武 18.2% 21.2% 13.2%
日東駒専 15.6% 16.4% 12.3%
産近甲龍 15.2% 16.1% 13.7%

どことは言わないが、予想だにしていなかった大学が上位に来ていたりと、なかなかサプライズ的要素の強いランキングではあるが、教員養成学部を擁する地方国公立大学はさらなる改善を見せた。

先ほど取り上げた長崎大学・宇都宮大学はなんと名古屋大学を残してA級大学をすべて切り崩してしまうほどの大出世(嗚呼、九州大学・東北大学・・・それにしても他の補正ランキングも含めて名古屋大学は非常に好成績)。

性質上、民間就職に非常に強い「電農名繊」ではあるが、公務員・教員試験といったお家芸で力を発揮し始めた「金岡千広」が、ここでついに並んできた。有名な国立大学群同士の対決も白熱している。

「ランキング」がすべてではありません

口を開けば「ランキング」「ランキング」と耳障りなコラムになってしまったが、このように大学・学生の特徴・志向・得意分野は様々であり、ランキングもどのような考え方・どの要素を重視するかで順位・数値も大きく変化し、そして、どのような切り口でランキングを分析するかで見方も全然変わってくる。

自分にとっての「運命の大学」とはどこなのか。ある物差しで大学をはかることは、それを見出すための経過点に過ぎない。

より権威あるランキングについてはコチラ

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