地方国立大学の過去・現在・未来(駅弁?研究有利?就活不利?)

コラム

概要

地方国立大学と一口に言ってもピンキリであり、当サイトのランキングで言うとA級~D級まで幅がある。各県の代表格となる地方国立大学は、そのだいたいが県庁所在地等の代表都市に構えていることから、各県の代表駅にて堪能出来る駅弁をイメージして「駅弁大学」と古くから呼ばれている。

我が国における教育の戦後改革として、国民の教育水準が全国的に底上げされていった(完全一律とはいかないが)。そのためのハード面の一種として活躍したのが地方国立大学である。戦前から旧帝国大学以外にも旧官立大学(旧三商大・旧六医・旧二文理など)が各地方の中枢的都市を中心に高等教育機関として設置されていたが、それ以外の県にも戦後、新制国立大学が設立された。

「駅弁大学」とは、この新制国立大学のことを指すというのが厳密なところだが、広義には在京以外の旧官立大学も含むことが多い。特に旧官立大学に対しては「駅弁大学」という名称が、やや侮蔑的な意味で使われることもある。

その実力

国立は難しい

古くから、地方国立大学に入学することは容易ではなく、各県で厳選された秀才が行くところであった。各県でトップクラスの公立進学校に入学できれば「B級大学以上の地方中枢級の国公立大学に入ることは当たり前」などというイメージを持つ者も少なくないが、実態としては、そのような公立トップの高校でさえも中間層に食い込まなければ標準的な国立大学(C級下位クラス)の合格は厳しい(大都市圏は別)。それどころか「STARS」などのD級クラスの国公立大学も、下位層では厳しい。

当サイトのトップページでも記載したが、以下の点から、一般的に国公立大学は私立大学よりも入試難易度が高い。

①科目数の違い
②チャンスの多さ
③推薦入試・AO入試枠の違い
④解答方式の違い(国公立は記述問題、私立は選択問題が多い)

私立大学との厳密な比較は難しいが・・・

首都圏では「GMARCH」以上が高学歴というイメージがあり、現に当サイトでも同大学群は、「5S」に代表される中堅国立大学よりも上位に位置付けている。ただし、それは地の利による就職実績が表れたものであり、学力という点では「GMARCH」一般入学組でさえも、せいぜい中堅国立大学クラスに対抗するのが精いっぱい。

昭和以前の時代においては、国公立と私立の差は現代よりはるかに歴然としたものであり、当時のイメージがいまだに焼き付いている地方の進学校では、生徒の高校入学時点から国公立大学を受験・進学することを前提として教育・指導が展開され(教員側の事情もあるようだが)、私立大学のことは良くも悪くもアウトオブ眼中である(私立大学のことは本当に早慶くらいしか分からない)。

利点とその裏側

孝行できる

地方国立大学の地元における評価・信頼・安心感は非常に高く、地元の国立大学 ⇒ 地元の優良企業・公務員というルートは最大の親孝行とされる。また、学費も安く、研究力も高いので理系の学生には特に利点が大きいと言われる。

さらには、学費が安いが故に、本来はより高いレベルの大学を目指せた学生も敢えて地元の国立大学に進学することもあるので、意外と上位層が厚く、とても優秀な人材との交流を持てる可能性があるという利点もある。

だが、

年を追うごとに学費は上昇の一途を辿っている。下表は、総務省統計局の小売物価統計調査をもとに作成された国公立大学の授業料の推移である。

国立大学授業料
2015 (平27) 535,800円
2010 (平22) 535,800円
2005 (平17) 520,800円
2000 (平12) 478,800円
1995 (平7) 447,600円
1990 (平2) 339,600円
1985 (昭60) 252,000円
1980 (昭55) 180,000円
1975 (昭50) 36,000円
1970 (昭45) 12,000円
1965 (昭40) 12,000円
1960 (昭35) 9,000円
1955 (昭30) 6,000円
1950 (昭25) 3,600円

戦後の授業料から150倍かよ!・・・というのは物価の上昇があるので当然であるが、上昇がほぼ止まった90年代と比較してみても明らかに国立大学の学費は上昇しているのが分かる。私立大学の授業料と比較してみると、90年代は私立大学の方が2倍近く高かったのだが、現在は1.5倍程度となり、明らかに差は縮小している。

研究力は強いはずなのだが・・・

地方国立大学は研究力も高く、教員一人当たりの学生数も少なく、しっかりと面倒を見てもらえるので、特に理系の学生にとっては良い環境となる。下の表は、平成20年度学校基本調査より。

区分 教員1人当たり学生数 
国立大学 10.22人
公立大学 10.93人
私立大学 21.49人

特に国立大学の理系教員は大手企業とのコネクションも強く、特に引く手数多である工学部の電気工学・機械工学は、現在でも推薦応募枠が非常に多い(ビックリするほど)。

しかし、その研究面についても問題があり、運営費交付金などの基盤的経費の削減、科研費など競争的資金獲得の熾烈化が進んでおり、どこの大学も予算が厳しく(これは旧帝国大学にさえも言えることだが)、科研費の採択を勝ち取るための競争に時間を割くことになり、じっくりと研究に打ち込む余裕もない。

さらには、競争熾烈化は論文不正の温床にもなってしまっている。日本という国は教育に投資しないと言われているが、厳しい台所事情により国立大学でさえも予算がつかず思うように研究を進められないケースも少なくないのだ。

国立大学の3類型

各県でも代表格となる国立大学は、各県トップ大学としての位置づけとして長らく見られてきたが、成熟社会の到来・グローバル化・多様性の尊重といった観点から、各大学の持つ特色・強みを見つめ直し、そして社会的役割(ミッション)を再定義することが求められた(平成25年の国立大学改革プラン)。そして、再定義されたミッション等をもとに、

①地域貢献型:地域のニーズに応える人材育成・研究を推進
②特定分野型:分野毎の優れた教育研究拠点やネットワークの形成を推進
③卓越した教育研究型:世界トップ大学と伍して卓越した教育研究を推進

上記の通り3つの類型にタイプ分けされた。一般的な地方国立大学は①に分類されている。それぞれの内訳をみてみると、国によるオフィシャルな序列化ではないか?のようにも見えるが、これはあくまで自己申告制であり、決して国による序列化なんかじゃないのだ、序列化なんかじゃ・・・(滝汗)。

このタイプ分けは運営費交付金と関係しており、簡単に言うと、各類型内において、所属する各大学から拠出された金額が、評価に基づいて再配分されるのだ。あれ、運営費交付金て「基盤的経費」じゃなかったっけ・・・???

学生の出身地について

“ローカル大”とは限らない

また、地方国立大学の学生と言えば、地元民に多くを占められるイメージがある。これは基本的にその通りではあるのだが、実はそうでもない大学・県もあったりする。政府統計をもとに、都道府県ごとにそこに所在する国立大学への進学者の中で、県周辺のエリア外から来た学生が占める割合を下記にまとめてみた。上位・下位それぞれ10件ずつまとめている。

順位 都道府県 エリア 割合
1 鳥取 中国 58%
2 福井 北陸 55%
3 埼玉 関東 51%
4 長野 甲信越 50%
5 神奈川 関東 48%
6 新潟 甲信越 48%
7 富山 北陸 46%
8 石川 北陸 46%
9 広島 中国 45%
10 山口 中国 44%
 ~
38 宮崎 九州 18%
39 愛知 東海 17%
40 愛媛 四国 17%
41 沖縄 九州 17%
42 岩手 東北 15%
43 長崎 九州 14%
44 和歌山 関西 12%
45 岐阜 東海 9%
46 佐賀 九州 7%
47 熊本 九州 5%

上位

まずは上位。つまり、エリア外から来た学生が多い都道府県である。明らかに多いのは北陸甲信越・中国地方だ。

これらの県は人口が少ない県も多いので、そこに大都市圏の若者が多数流入すると食われやすくなるのは当然なのだが、それで終わるのも味気ないので中身をもう少し見ていきたい。

愛知県勢はフットワーク軽い

北陸甲信越(北信越)は、首都圏・東海・関西に囲まれているため大都市圏の学生にとってはアクセスしやすい。特に東海・関西についてはC級クラスの大学が人口の割には多くないため、周辺エリアの地方国立大学は格好の獲物になるという訳だ。特に愛知県勢は「どこにでもいる阪神ファン」のように、至る所に分散している(ドラゴンズちゃうで)。

広島県・山口県は四国・九州地方から幅広く吸収している。山口県は福岡県と隣接しており、広島県はお馴染みの広島大学が強い求心力を発揮しているようだ。ただ、それ以上に愛知県勢も多く流入している。距離的には遠いが、東海道・山陽新幹線でつながっているのでアクセスはそこまで悪くなさそうだが。。。

鳥取県はPRに積極的

そして、1位は鳥取県鳥取大学は県外出身者が8割以上を占める大学として有名だが、同大の入学者数で一番多いのは鳥取県民ではない。答えはお隣の兵庫県。同県は南は瀬戸内海・北は日本海にも及ぶ大きな県であり、鳥取県とも繋がりがある。さらに、大阪府・京都府も続き、関西の諸大国から多くの若者が流入しているのだ。関西地方も国公立大学のステータスが高く、「関関同立」・滋賀大学・和歌山大学・兵庫県立大学などが厳しそうな受験生が「STARS」の一角を狙ってきているのだろう。

鳥取大学には山陰地方はもちろん山陽地方からの流入ももちろん多いが、それらと同等水準の流入があるのが、驚いたことにこれまた愛知県勢。「砂丘コナン空港」も「鬼太郎空港」も愛知県と繋ぐ便は現在就航していないはずだが、彼らは頑張って陸路で行き来しているのだろうか?小牧空港と「縁結び空港」の便は就航しているようだが、それなら島根大学の方がアクセスしやすいのではないか・・・?特急「はまかぜ」で鳥取と繋がる関西と違って、愛知県勢にとって移動は少々苦労があるはず。

下位

今度は逆に、下位。つまり、エリア内からの進学者が多い都道府県である。

全体的に九州地方が目立ち、地理的に大都市圏からのアクセス面でこの順位になったのだろうか。逆に日本最北端である北海道はエリア外出身者率が23位であり九州に比べると高い水準なのだが、全国区の北海道大学以外にも、北見工業大学・帯広畜産大学には他エリアに対する求心力がある。

愛知県は先ほど散々ネタにしたのだが、一方で地元比率が高いことで有名な名古屋大学をはじめとして、続く名古屋工業大学は9割がた東海地方からの入学者で占められていた。

地方国立大学生の就職活動

えげつない地域格差

他のページでも述べていることだが、地方国立大学の学生が最も苦悩する点としては、大手企業への就職活動が挙げられる。何故なら、大手企業は東京に集中しており、地方から東京へ出向いての就職活動は旅費・移動時間のみならず情報格差・機会格差の面で不利となってしまうからだ。

地方学生が東京へ出向いて就職活動をするには、平均して20万円の費用が必要だと言われる。しかし、これはあくまで平均であり、大学の所在エリア・活動期間等に左右されるので、人によって大幅に変動する。

遠方の学生にもなると、就活の期間になると東京に部屋を借りるという話もあり、総額100万円以上必要になる人も珍しくはない。東京一極集中、OB訪問・インターンへの参加しやすさ等を踏まえると、東京と大阪でさえも歴然とした情報格差・機会格差があるとのこと。

ただし、国公立大学の工学部(特に機械・電気など)・理学部の実用系学科(化学・物理など)例外と思ってもらってよい。そういうところは現在も推薦応募制度が強く生きており就職が圧倒的に強すぎるので、C級クラスでもD級クラスでも「学歴フィルター」だの「地理的に不利」だの、全然関係のない世界である。

だがここ最近、地方国立大学の学生にとっての嫌な風向きが一変し得る出来事(事件)が起こった。

オンライン面接

2019年の末頃から世界的に猛威を振るった新型コロナウイルスの影響により、就職活動においても感染対策が求められ、オンライン面接が急速に普及した。これによって恩恵を受けたと言われるのが地方大学の学生であり、特に国公立大学の学生にとっては元より学歴フィルターの心配も比較的少なく、これで最大の障壁であった「距離」も取り払われたことになり、彼らにとっての就活環境が急激に改善したのである。

経団連による、会員企業442社が回答した調査によると、63.8%の企業がすべての面接をオンラインで実施したことが明らかとなった(21卒)。また、面接のみならず、会社説明会・セミナー、さらにはインターンシップまでもオンラインでの開催が拡大している。

では、これを機に今後ますます就職活動のオンライン化が進み、会社説明会~面接、いやいや入社まで一貫してオンラインで進めるのがスタンダードとなり、地方の国公立大学生も、都会の学生と変わらない条件で遺憾なく企業に対してアピールすることが出来るようになるのだろうか?

21年卒 ⇒ 22年卒でどう変わったか

21年卒の採用活動を終えて、次の22年卒の採用計画が固まってきた時期に、「学情」が実施した調査によると、面接をオンラインのみで実施する企業は約5%オンラインと対面を同割合で実施する企業が約22%、そして対面のみで実施する企業約25%に及んだ(他は1:9、8:2など色んな比率でも調べているが、どれもだいたい7%前後)。

つまり、22年卒の採用活動に入ると対面への回帰が見られたのだ。これは、一進一退あれど感染状況が収まってきたことに加え、オンライン面接によるメリットを享受する一方で色んなデメリットも浮き彫りになってきたからだ。

オンラインの限界

オンラインの功罪

オンライン面接により地方学生の参加が増えたことは、企業側・学生側双方にとって大きなメリットとなった。さらには時間的・場所的制約の軽減録画・記録が出来ることも嬉しい点だ。

しかし、オンライン面接の場合、画質の悪い顔しか見えないので、ノンバーバルな要素(立ち振る舞いなど)がお互い読み取りづらく、空気感が分からないのは痛いデメリットとなる。この結果、面接時と内定後実際に会った時で、学生の印象が変わっていることが多々あり、「ミスったなー・・・」と採用担当者が嘆く羽目になってしまった。

また、オンラインであるが故、思わぬ接続障害などのトラブルにも悩まされ、特に集団面接・グループディスカッションはやりにくさがある。そして、待合室など面接前後における学生の様子を観察出来ないところもデメリットと感じているようだ(そこもしっかり見られてるんだな~ 笑)。

テレワークでも同じ

現に、ホワイトカラーとしての仕事は日常的・定型的な業務であれば、多くがオンラインで進めることが出来るようになった(テレワーク)。しかし、リモート環境でも仕事の遂行はある程度の水準までは問題ないものの、仕事で関わる人達の「人となり」をお互いに知り、人間的な信頼関係を確立させるには、オンラインでは限界がある。

仕事を納期までにキチンと遂行するなど、信頼を積み重ねることはオンラインでもある程度は可能だ。ただ、やはり対面でのコミュニケーションであれば五感をフル活用して相手を知れる上に、挨拶をしたり・入室の順番を譲ったり・エレベーターでボタンを押してあげたり・宴会の席でお酌をして差し上げるなど、五感と五体を活用した人間的な活動の中で、ちょっとした気遣いを積み重ねて人間的な温かみを交わしていくことが出来る。これが対面とオンラインでは決定的に違うのだ。

※元より五感・五体に恵まれていない方もいらっしゃいますが、該当する方々は「人間的な活動」が出来ないという意味ではありません。むしろ、制約がある中でも「人間的な活動」に励むことに努力され、それに秀でられた方々と考えております

採用ターゲットとなる人材をつかまえにくい

新卒採用において企業が最も重視するところは、もう分かり切っていると思うが「人柄」である。数回の対面の面接でさえも、その全ては掴みきれない。ましてや面接時の顔と音声だけでは、面接官にとっての合否判定の難易度はさらに上がってしまい、下手をすれば本当に採用されるべきだった学生が採用されないという事態が引き起こされる危険性が高まる。

学生側の視点

対面回帰を望む声は、企業側だけではなく学生側からも上がっていたりする。何故なら、採用ステップ全てがオンラインになってしまうと、リアルな会社・職場・社員の雰囲気が掴めないからだ。それが掴めないままの内定受諾・入社はなかなか勇気が要ることだろう。

また、企業側が面接で空気感を掴めないように、学生側も制約がある中ではアピールがし辛いという悩みを抱えている。面白いことに、地域ごとに学生にアンケートをとると、大都市圏の学生の方がオンラインを望み、地方の学生の方が対面を望む傾向があることも分かった。その辺は都会と地方での気質の違いもあるのだろうか?企業側も学生側も安心して雇用・入社するためには、やはり最低1度は面と向かい合う方が望ましい。

したがって、地方学生の地理的なディスアドバンテージは、コロナ前よりは改善されるものの、まだ負担は続くものと考えられる。

そういえば、21年卒の結果は?

いつもとあんまり変わらなかった

就活のオンライン化により恩恵を受けたと言われる地方国立大学の学生だが、その第一世代といえる21年卒の結果はどうだったのだろうか?

「大学通信」が毎年発表している有名企業400社実就職率ランキングを見てみると、コロナの影響により軒並み数値が例年より悪化しているが、各大学の順位・位置(顔ぶれ)は例年とさほど変わらぬ構成にあり、在京企業と地方学生との距離が劇的に縮まったにもかかわらず、地方国立大が劇的な躍進を遂げたという結果は読み取れない。

以下の表は、同ランキングの上位100校の中にランクインした、C級D級クラスに位置する地方国公立大学の数を、20年と21年で比較したもの(首都圏の大学は勿論除外)。

2020年 2021年
1~25位 2校 2校
26~50位 5校 3校
51~75位 8校 11校
76~100位 13校 12校
28校 28校

ランクインした校数は変わらず。厳密に言うと、TOP50の層が僅かに薄くなった感もある。

どうやら、オンライン面接の急速な普及でさえも速効性のある解決策とはなり得ず、地理的要因以外にも根深い課題がありそうだ。

意識面

最大の課題は、都会と地方の学生での就活に対する熱量の違いである。「公務員と学歴」のコラムでは、「地方国立大では公務員試験に対する意識が高い学生が多い」旨を述べた。その代わり、大手企業への就職活動に対する意識は都会の学生に比べると高くない。地元で就職したい学生が多く、大手企業が少ない地方では公務員志向が高まるのも当然と言えば当然のことである。

そして、就職活動は早く始めるほど良い結果に繋がる。そんな中、都会の意識高めの学生には2年生の頃からインターンシップへの参加・企業/業界研究・SPI/TOEICの勉強を始めている者もいる一方で、地方ではそんなことは露知らず、就活が本格化する頃には既に覆し難い差が付いてしまっている(地方学生が決して遊んでばかりな訳ではなく、大学の学業/研究・公務員試験などに勤しんでおり、その熱量が就活に向き辛いという話です)。

企業側の事情

また、学生側でコントロールしがたい背景もあり、そもそも大手企業の採用活動においては、「A大学からは〇名採用、B大学からは□名採用・・・」という風に、計画時点から各大学の採用目標人数を定めているケースが多く、その枠は主にS級大学A級大学の学生に対して大半を割り当てている。

つまり大手企業の選考は実質的に、一流大学の学生による、自分の大学に所属する他の学生との椅子取りゲームになってしまっているという面があることだ(全てじゃないです)。B級大学以下の学生にも「その他」枠で当然チャンスはあるが、地方国立大学の学生がその中に嵌ることは容易ではない。

企業によって、大学別の採用目標人数をそもそも定めていないところもあれば、各枠の大きさが違ったりと、事情は異なるが、そんな構図を覆すにはまだまだ時間を要するという訳だ。

さらには、地方出身の学生が就職して数年後に、地元に戻ることを理由に会社を辞めてしまうリスクもあることから、地方学生の採用に積極的ではない企業があることも事実である。

今後

オンライン面接の普及はあくまで”序章”

オンライン面接の普及により、地方国立大学の学生も大手企業の就職活動に参加しやすい環境・インフラが整ってきたが、そう簡単に地方国立大学の時代が訪れるほど、事は単純かつ甘い話ではなかった。

とはいえ、地方国立大学の学生にとっては風向きが追い風に急転回したことは確かである。対面回帰の動きがあるとはいっても、すべての面接を対面で実施するように完全に元に戻ることは稀であろう。今後は、「最終面接のみ対面」など、対面とオンラインが使い分けをされていく流れとなる。

地方採用に乗り気でない企業もある一方で、先述のように地方国立大学の学生は上位層が厚く、そこに気付いている企業は隠れた優秀な人材を掘り起こそうと地方採用を積極的に展開しようとしている。また、都会の企業が地方国立大学の学生に対して抱いているイメージは何といっても「まじめ」であり、まじめで誠実な人柄であることは新卒採用においては多くの企業で最も重視されるポイントでもあり、そこにピッタリとイメージがハマっているのだ(なんだかんだ、やっぱりソコなのね 笑)。その点で、地方国立大学の学生に期待を寄せる企業も増えている。

追い風をモノにせよ

そして学生側がその期待に応え、「地方にも骨のある奴らがいる」と都会の企業に対して大いにアピールできれば、今の追い風はより決定的な流れになっていくだろう。当サイトの学歴ランク表は、入試難易度と同じくらい大手企業への就職実績を重視しているため、現状では地方国立大学にとって厳しいものとなっている(納得いかない人も多いはず。スミマセン)。

上表の通り、地方国公立大による20卒⇒21卒の大手企業就職実績があまり変わらなかったのは、新型コロナウイルスの影響で大都市圏への就職を避け、安定志向(地元志向)へと流れたことも原因の一つとして考えられる。そして、諸国の古豪たちがその輝きを取り戻すには、コロナ終息からの数年間が勝負の時期となる。その先の未来には、勢力図も大きく変わっているのだろうか?今後の動向はとても楽しみなところである。

まずは、都会から地方国立大学へ進学した学生が、凱旋Uターンで大手企業への就職をバンバン決めて口火を切ると良いだろう。という訳で、愛知県勢の皆様には特にご活躍を期待したいところである。

最後に

地元で就職したい学生も多いはずだが、民間企業への就職を検討しているなら、やはり東京で就職することをおススメしたい。東京には日系225に属する企業の約75%が集中しており、チャンスの多さが段違いであり給与水準も高い(ちなみに転職市場においては、現職における年収は求職者の市場価値を測る重要な指標になる点でも、早いうちから貪欲に上げていくことが大事)。

経験からして民間企業では大手と中堅以下どちらに就職するかで全く違う人生を送ることになるので(ホンマに全然違うんだから!!!)、「どうしてもやりたいことがある」などがない限りは大手にこだわるべきであり、さらには大手が集中する東京にこだわるべきである。将来的には地元に戻って凱旋Uターン転職を果たすにしても、一生に一度は東京に住むという経験をしておいた方が良い。

常に逞しく変化・成長を繰り返し、沈みゆく日本をなんとか支え引っ張っているこの街は、公私ともに自身を変化・成長させてくれる場所である。

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