(続報版)23年卒 有名企業400社実就職率ランキングについて(補正ランキング付)

コラム

1.真の就職ランキング

補正①:分母からの除外者増

有名企業400社実就職率ランキング(23年度:分母補正)

【分母】学部卒業生数 + 大学院修了者数 ー 大学院進学者数 ー 公務員就職者数 ー 教員就職者数 ー 医療系学部卒業生数

ランク別まとめ

ランク 補正後就職率
S級 40.9%
A級 37.1% 3.8%
B級 27.4% 9.7%
C級 15.7% 12.1%
D級 7.6% 8.1%
E級 5.5% 2.1%

詳細ランク別まとめ

詳細ランク 補正後就職率
S級上位 26.9%
S級中位 34.0% -7.1%
S級下位 51.4% -17.3%
A級上位 43.3% 8.1%
A級中位 37.5% 5.8%
A級下位 32.5% 5.0%
B級準A 29.4% 3.2%
B級上位 33.5% -4.1%
B級中位 26.2% 7.2%
B級下位 25.0% 1.3%
C級上位 18.6% 7.2%
C級中位 15.8% 2.8%
C級下位 14.6% 1.2%
D級上位 8.8% 5.8%
D級中位 7.5% 1.3%
D級下位 6.3% 1.2%
E級 5.5% 0.8%

大学群別まとめ

大学群 補正後就職率
旧三工大 43.5%
早慶 41.9%
東京一工 40.9%
旧三商大 39.6%
地帝 35.6%
電農名繊 33.0%
上理ICU 32.7%
SMART 31.4%
TOCKY 29.5%
筑横千 27.7%
GMARCH 24.8%
関関同立 24.4%
四工大 23.2%
金岡千広 21.9%
5S 19.5%
女子大御三家 18.9%
STARS 18.7%
5山 12.7%
成成明学獨國武 9.4%
産近甲龍 8.5%
愛愛名中 7.3%
日東駒専 7.1%
外外経工佛 6.7%
摂神追桃 6.2%
大東亜帝国 4.8%

※ ランク、大学群すべての大学をカバーしている訳ではないので注意

はじめに

例年より少し時期がずれたようだが、11月に東洋経済さんから待望の23年度「有名企業400社実就職率ランキング」完全版がリリースされた。

大学通信さんから8月に発表された100位までのバージョンから、今度は200位まで対象が広がり、8月版ではまだ集計が出揃っていなかったであろう大学も追加され、有名企業400社への就職者数などの詳細なデータも明らかとなった。

ただ、同ランキングは本当に各大学の大手企業就職力を正確に表しているものなのか、毎年物議を醸している。私大アゲという陰謀説まで囁かれているくらいだが、主な論点として以下の3つがある。

①400社の内訳

長らくオフィシャルには明かされていないのだが、とあるメディアや大学HPでその正体を知る機会があった。感想としては、一通りの有名企業は含まれているのだが一部で疑問符を付けざるを得ない選定や、当然入っているはずの企業が見当たらないこともある(しかも400以上なかったか? 笑)

「有名企業」というのは必ずしも「難関企業」「ホワイト企業」「一流企業」とも限らず、どのような選定基準なのかは不明だが、それは人による趣向や主観的要素も排除しきれないので難しいところ。

また、大手と言っても不人気業界からの企業数は比率を低めにおさえられている。逆に、製造業の比率が高過ぎるので、学校推薦枠が使える理系学生が多い国立大学に有利に働いている面もある。現に「〜工業大学」等は入試偏差値に比して同ランキングにおいては非常に高い地位にあり、私大アゲ一辺倒のランキングだというのも、やや偏りのある見方である。

②コース別採用

同ランキングでは総合職以外のコース、例えば一般職エリア限定総合職を含んでいる可能性が高い。とすれば、基本的に待遇が良く入社難易度も高いコースである総合職に限定すれば、女子が多い私立大学の数値は軒並み低下することが考えられる(女子の能力が低いという話ではありません)。

だが、その確定的な数値を調べることは困難を極める上、近年では一般職やエリア限定総合職での採用枠も縮小している。あるトップクラス女子大学では採用コースを含めた進路が1名単位で公開されているのだが、一般職やエリア限定総合職での採用が例年全体の15%前後に留まることが明らかになっている。その規模であっても同ランキング上では数%分の影響は避けられないものの、女子大学ですらこの程度ということは全体の勢力図がガラリと変わる程の影響は見込めない。

他には、理系でより現場に近く、入社難易度は低いが給与水準・出世スピードは劣るという専門職での採用がある(某鉄道会社でいうプロフェッショナル採用)。これも今となっては根拠がなく集計は不可能なのだが、昔は理系採用の中でも総合職と専門職でそれぞれ採用実績大学が掲載されていたことがあり、やはり私立大学は当サイトでいうC級が当落線上となりB級・D級ではアッチ側・コッチ側、ハッキリ分かれていたという印象だ(今は分かりません)。

③分母

有名企業400社実就職率算定の上で分母となっているのは、公式では「卒業生数(学卒&院卒)―大学院進学者数」である。しかし、除外されるのが進学者だけでは、医師・獣医師・薬剤師・歯科医師・作業療法士・理学療法士・看護師・公務員・教員などへの道へ進む人達が分母に含まれたままとなる。これらの卒業生は民間企業への就職とはハナから関係がなく、一般の就活戦線への参戦者として含めるのは適切とは言えない。

その対象者は国公立大学の方に多く、このままでは国公立大学に不利なランキングとなってしまうので、公平性を期すためには先に述べた人たちを分母から除外する補正を施す必要がある。そこで今回、3期ぶりに旺文社による「2024年度用 大学の真の実力 情報公開BOOK」を用いて公務員・教員就職者数、医療系学部の学生数を調査の上、補正版ランキングを作成した。

「真の」とは盛りすぎだったが

以上、有名企業400社実就職率ランキングは就職力指標として「正確無比」と言い切るにはまだまだ距離があるものの、分母補正を施せば「参考には出来る」という立場を当サイトは取っており、学歴ランキングの重要な出口指標として利用させて頂いている。

過去の記事もご参考に。

2.所感

勢力図はどう変化したか

全体感をみると、そもそもランク付けの指標の一つなので当然なのだが、ほぼ学歴ランク通りの結果となった。A級とB級の差、C級とD級の差も大きいものだが、最も大きいのはやはりB級とC級の差である。

より詳細なランク(上位だの下位だのと付いてるやつ)で見ると、東大・京大の学生に関しては大手企業という器だけには到底収まらぬ逸材揃いであることと、B級上位大学には工業系の大学が多いことから逆転現象が発生しているが、これらは想定の範囲内であり番狂わせと呼べるような事態は読み取れない。

大学群

やはり理系優位

次はカテゴリを変えて大学群ランキングを見ると、東工大・阪大の「旧工大コンビ」が強いのは当然だが、東大・京大の特殊要因があるとはいえ「早慶」が「東京一工」を越える流石の強さ見せつける結果となった。

だが、過去の結果に比べると「地帝(地方の旧帝大)」の調子が上向いているようであり、特に工学部の学生が多い名古屋大学が土地柄もあってかますます勢いづいているようだ(でも卒業生数の中に博士課程卒は含まれているのかな 汗)

私大は耐えた大学群もあるが。。。

B級クラスの大学群に目を向けると、「金岡千広」は「GMARCH」「関関同立」には今回も一歩及ばなかったが、コース別採用の事情を考えれば互角と言ってもいいだろう。ただ「金岡千広」も漏れなく理系優位の大学群(岡山大学は依然として公務員試験の活躍も光るが)であり、文系と理系で就職力の優劣は変わってきそうだ。

今回残念だったのはC級私立大学群の「成成明学獨國武」であり、補正後の就職率でも1割を下回ってしまい、D級の大学群とさほど変化がない水準となってしまった。

関西の「外外経工佛」「摂神追桃」はいずれもランクインしていない大学があるのだが、大阪工業大学を擁する前者が後者とあまり変わらない成績なのは意外であった。

 

ともあれ、補正前の元ランキングでは全体的に私立大学が優位過ぎるところが目立っていたが、これで国公立大学の成績が改善され、実態に近付くことが出来たはずだ。

やはり凄いのは

補正ランキング初登場

ついに頂点をとった豊田工業大学によるここ数年の躍進には驚かされるばかりだが(少人数による就職率変動の大きさはあれど)、一橋大・東工大に迫る大学が一つある。

前回補正をかけたのは20年度のランキングだったが、当時はその大学の有名企業400社就職率は集計されていなかった。翌年度、翌々年度では登場したのだが、その大学には医療系学部の学生もそこそこいたのであり、本当の実力は不明なままであった。

補正前ですら4割バッターという凄まじい成績を記録していたのだが、今回の補正により、なんとS級大学たる東京工業大学の背中をとらえようかといわんばかりに、メダル圏のすぐそこにまで迫ってきていたことが判明した。これが陸の王者、慶應義塾大学の真の姿である。

「圧倒的」とはこのことを言う

23年夏の甲子園決勝(慶應義塾 vs 仙台育英)での光景が記憶に新しい人も多いはず。応援ルールの逸脱は別として、あれこそまさに実社会の縮図であり、目に見える形になっていないだけでどこの業界・世界でもあーゆー感じだったりする。

「早慶」それぞれに気質の違いは確かにあるもので、イメージ通り早稲田卒の方がキャラが立っており各々主張が強い印象がある。一方で慶應卒はスマートだが、早稲田に比べるとどこかパンチ力に欠ける人が多い。正直あまり打たれ強い方だとも言えない。ところが彼らは集団としての力を発揮し始めると、あそこまでスゴイことになってしまう。

稲門会・桜門会に比べて数は劣るが三田会の結束の固さは日本一だろう。あらゆる国・組織・コミュニティの中で彼らは団結しており、中途半端な個々人の能力や少数精鋭でそれを打破しようものなど、いかに無謀なことなのか・・・甲子園決勝の様相からはそのような事実を視覚的に、それも鮮烈に思い知らされるものである。

「社会に出たら学歴なんて関係ない」?

「今どき学閥なんて存在するわけない」?

個人のやる気と能力だけであの軍勢に対し孤軍奮闘・一騎当千できる自信がおありであれば、好きに言えばいい。

こちらも凄い

ライバルの早稲田大学は数字的には見劣りするものの、学生の殆どは文系、さらには人文・教育学系統学部の規模が大きいにもかかわらず、大阪大学に迫る就職実績をあげるところはやはり見事なものである。

3.ご参考データ

補正②∶公務員追加

【ご参考】有名企業400社+公務員実就職率ランキング(23年度)

ランク別まとめ

ランク 補正後就職率
S級 42.0%
A級 39.7% 2.3%
B級 32.4% 7.3%
C級 24.0% 8.8%
D級 13.6% 10.4%
E級 9.3% 4.3%

詳細ランク別まとめ

詳細ランク 補正後就職率
S級上位 26.9%
S級中位 35.5% -8.6%
S級下位 52.8% -17.3%
A級上位 44.5% 8.3%
A級中位 40.4% 4.1%
A級下位 35.8% 4.7%
B級準A 31.9% 3.9%
B級上位 36.4% -4.6%
B級中位 31.3% 5.1%
B級下位 31.6% -0.3%
C級上位 26.0% 6.6%
C級中位 23.9% 2.2%
C級下位 23.3% 0.5%
D級上位 15.7% 7.6%
D級中位 13.4% 2.3%
D級下位 11.6% 1.8%
E級 9.3% 2.3%

大学群別

大学群 補正後就職率
旧三工大 44.3%
旧三商大 43.9%
早慶 43.6%
東京一工 42.0%
地帝 38.4%
SMART 34.5%
上理ICU 34.1%
TOCKY 33.7%
電農名繊 33.5%
金岡千広 32.2%
筑横千 32.1%
STARS 30.6%
GMARCH 29.6%
関関同立 28.9%
5S 28.5%
四工大 24.8%
女子大御三家 23.2%
5山 22.8%
愛愛名中 16.2%
成成明学獨國武 14.3%
産近甲龍 13.2%
日東駒専 13.1%
大東亜帝国 11.4%
摂神追桃 9.6%
外外経工佛 9.1%

※ ランク、大学群すべての大学をカバーしている訳ではないので注意

補正③∶教員も追加

【ご参考】有名企業400社+公務員+教員実就職率ランキング(23年度)

ランク別まとめ

ランク 補正後就職率
S級 42.1%
A級 40.1% 2.1%
B級 33.9% 6.2%
C級 28.5% 5.7%
D級 16.1% 12.4%
E級 12.7% 3.4%

詳細ランク別まとめ

詳細ランク 就職率 補正後差
S級上位 26.9%
S級中位 35.7% -8.8%
S級下位 52.9% -17.2%
A級上位 44.7% 8.2%
A級中位 40.9% 3.8%
A級下位 36.1% 4.9%
B級準A 33.0% 3.1%
B級上位 37.8% -4.8%
B級中位 32.9% 4.9%
B級下位 33.2% -0.3%
C級上位 30.0% 4.2%
C級中位 28.6% 1.4%
C級下位 27.9% 0.6%
D級上位 18.5% 9.4%
D級中位 15.9% 2.6%
D級下位 13.8% 2.2%
E級 12.7% 1.1%

大学群別まとめ

大学群 補正後就職率
旧三工大 44.5%
旧三商大 44.2%
早慶 43.8%
東京一工 42.1%
地帝 38.8%
金岡千広 37.0%
TOCKY 36.3%
STARS 36.2%
5S 35.8%
SMART 35.5%
筑横千 35.4%
上理ICU 35.1%
電農名繊 33.6%
GMARCH 30.6%
関関同立 30.2%
5山 30.2%
女子大御三家 25.8%
四工大 25.4%
愛愛名中 18.3%
成成明学獨國武 16.3%
産近甲龍 14.5%
日東駒専 14.4%
大東亜帝国 13.6%
外外経工佛 10.6%
摂神追桃 10.6%

※ ランク、大学群すべての大学をカバーしている訳ではないので注意

地方国公立の力を侮るなかれ

大手企業への就職力という観点から、補正①のランキングではあくまで分子有名企業400社就職者数だけに留まっていた。学歴がダイレクトにその効果を発揮するのは一般の民間企業(特に大手)への就職試験の時なので、出口評価という切り口では、そのデータを最も重要視して学歴ランクを判定している。

だが、学校歴が合否に直結しないとはいえ、純粋な学力・実力での比較であれば公務員試験・教員採用試験の実績も無視出来ない(ある程度ランク付けには組み入れているつもりだが)。

そこで参考データにはなるが「公務員就職者数」を加えたもの、そこからさらに「教員就職者数」も追加したもの、2種類の補正ランキングも別途用意している。

格差は意外と激しいけど

公務員といっても様々な種別があり、最難関と言われる国家総合職と、比較的易しめとされる公安職では試験難易度に当然開きがある。

教員についてもさほど難易度は高くない方に位置づけられており(これまたいくつか種別があるのだが)、正直言ってランクの高い大学からの就職率は高くない。

かといって有名企業400社の方もピンキリなので、状況は似たようなものだと見ていいだろう。勝ち組とされる仕事の中でも、「格」というものが曖昧ながらも存在している。

国立私立論争決着?

それぞれのランキングを見てみると、やはり国公立大学の成績がさらに向上していることが明らかだ。公務員のみを加えたバージョンだと「GMARCH」「関関同立」の水準に「5S」が追い付いてくる。両者は実力・入試難易度では互角だというのが多数説だと見受けられるが、今回の結果はその確実性をより引き上げるものとなっただろうか。

教員も加えたバージョンでは、教員養成が主な機能の一つである地方国公立大学の成績はさらに上がり、マーカン水準に「5山」が踊り出ることになる。個々の大学を見ると、ランキング上位に地方国立大学の名前を度々目にするようになるだろう。

秋田すげえ

STARS」の一角である秋田大学は国立大学の入試難易度としては高い部類とは言えないが、今回の3種の補正就職率ランキングいずれにおいても好成績を残している。当サイトでは当初D級に位置していたのだが、20年度の補正ランキングを見ると出口実績としては侮れないものがあるのではと考え、C級へと変更した経緯がある。23年度も特に公務員を含んだ補正ランキング、公務員・教員を含んだ補正ランキングでは全国トップクラスと言っても過言ではない領域にまで登りつめており、抜群のコスパを誇る。

小学生・中学生の学力テストの平均点が全国で1・2を争うくらい優秀だという教育県であり、最強の公立大学といわれる国際教養大学を擁しながら、このようなダークホースまで隠し持つ秋田県、恐るべし(でも本当に卒業生数に院卒含まれてるのかな 汗)

4.最近の学歴フィルター

「企業による」のだが

B級大学からでさえも大手企業に就職出来る人は3割もいない。C級大学になるとさらに成功率は落ち、D級大学に至っては平均で1割を切る。D級と言っても世間一般的には人気とされる大学が多いのだが、それらの出身者ですら10人に1人も大手には行けないのだ。行ける人の中でも割と労働集約的で入社難易度がさほど高くないと言われる企業名も多く見られ・・・このような構図は我々が良く知っている学歴社会そのものであり、何だかんだ言いながら昔から殆ど状況に変化はないという読み取り方が出来る。

履歴書・エントリシートに書かれている大学名だけで採用試験で不合格になってしまう、または採用ステップそれぞれにおける合格枠数が学歴ランク・大学群によって異なるなど形は様々だが、学歴フィルターは2023年現在、なにも衰えを見せることなく社会に息づいて国民の人生・運命の振り分けに機能しているのである。

あくまで一事例です

“とりあえずマーカン”は正解

誰でも名前だけは知っているJTC(Japan Traditional Company)の某メーカーでの新卒採用状況をちょこっとだけお伝えすると、採用における学歴別の扱い方は、今の年長者が新卒採用された時のそれと比べて大した変化はない。

大卒総合職の採用ラインはズバリ「MARCH」「関関同立」以上!

あれ?「日東駒専」「産近甲龍」卒の人、たまに見かけるけど・・・?その殆どは中途採用者であり、レアだけど一応いるらしい新卒採用者の正体は、技術系専門職(上でも紹介したプロフェッショナル職のようなもの)、事務職(派遣社会からの直接採用)、法科大学院卒、外国人留学生枠、障害者枠、そして実業団スポーツチームのメンバーとしての採用であり、一般的な総合職ではなく何らかの“注”が付いているケースがほぼ100%である。

世の中甘くない・・・が、

就職四季報で大手企業の採用実績校の中にフツーにD級以下の大学の名前が載っていることもあり「今どき学歴なんて関係ない」「学校名じゃなくてSPIやTOEICで弾かれているんだろう」と考えがちだが、学歴差別だのつまらぬ後ろ指を指されないように企業側も色んな手を打って見せ方を工夫しており、世間で軽々しく言われているほど門戸が広がっている訳ではない。

だが逆に言えば、高学歴とは言えなくとも、中途採用であればスキル・経験次第でチャンスはあるということだ(もちろん人間性も大事だが)。依然として狭き門であることは確かだが、新卒で入るより遥かに可能性が高いことも確かな話だ。学歴は大事だが、こういう形で這い上がるチャンスが残されているので、高学歴になれなかったからと言って腐るには早すぎる。

“国立理系”の実態

一方で、地方国公立大学は基本的に大学名だけで振り落とすことはない(一部公立除く、また、年度・景気による)。だが結果としては、C級以下の国公立大学の新卒採用者はその8割を軽く越える比率で理系。そしてその内の7割が院卒、また、理系の中でも6割が機電系(機械・電気・電子)で占められる。

当サイトでも何度か触れているが、理系と言ってもすべての分野で就職が良い訳ではなく、むしろ機電系の学校推薦制度が凄すぎであり、採用枠の多くがこの分野に偏ってしまっている。

この企業のボリュームゾーンはA級大学クラスだが文系は「早慶」理系だと「地帝」が多い。

5.学歴社会の未来

動きがあるかも

・・・というのが、これまでの話である。これからの話は確定的なことが分かるはずもないので、みな好き勝手に語ることしか出来ない。だが、今後人口は減り続け、特に若者はますますいなくなっていくという未来はほぼ確定事項である。2030年にもなれば日本の人口の3割が高齢者(65歳以上)となり、国の労働力も1/4が高齢者で占められるようになる(いわゆる2030年問題)。

となれば、日本はメンバーシップ型雇用が依然として主体である中、市場においてはもはや「若さ」に対して希少価値が付けられることになり、若い人材の獲得競争はますます激しくなる。

事態は既に深刻だ

そもそも2030年を待たずとも、とっくに採用難の時代が到来しているのはご承知の通りであり、企業側もリファラル採用・アルムナイ採用(知人紹介・出戻り)などを取り入れ、あの手この手で人材を確保しようと必死である。新卒採用も売り手市場が加速し、初任給の引き上げなどで新入社員・若手の待遇も改善され、あらゆる企業で若者が大切に扱われているのがよく分かる(今の若い子は恵まれ過ぎだ・・・なんてついつい感じちゃうワシャもう老害だな)

そして今後はさらに事態は深刻さを増すとなれば、これはもう「B級大学以上の学生しか見たくない」なんて選り好みをしてる場合ではなくなってくるのではないだろうか。今でさえ、なかなか高学歴の学生を採るのは難しくなり、特に理系ではあらゆる大学に「お願いだから来てくれ〜(泣)」と推薦の求人票を送りまくってもイマイチ応募がこない、同時に現業職(つまり高卒等)の採用も芳しくなく、このままでは現場の操業自体が危ぶまれるような有り様だ。

事態はもうそんなところまで来ており、長らく続いてきた学歴フィルターの歴史もついに大きな転換期を迎えるかもしれない。大手であれ、業界トップ以外の中途半端な企業ではもはや選り好みをしている余裕はないはずである(業界によってはトップでもキツイ)。

B級以上でなくともよくなるか

日本企業が新卒一括採用・メンバーシップ型雇用をとり続ける限り、採用効率化・学生のポテンシャルをはかるには学歴はうってつけのツールとなり、学歴社会・学歴フィルターが終わることはない。

だが、基準が緩くなりC級大学・D級大学の学生への間口が拡がることは現実味がある。従来、理系の学校推薦の枠は国公立大学に多く用意されていたが、近年では私立大学の枠も比率を増しているという話も耳にする。

ては、今の受験生たちはもう学歴ランクなど無視して行きたい大学、学びたい学部学科に行けばいいのだろうか?もちろん学びたいことが明確に定まっているならその道を突き進むのも素晴らしいことだがそれは危うい側面もあるのだがね、学歴フィルターが緩くなる可能性があるからといっても、それで楽に大手に入れたとして、その企業が将来安定的に存続していけるかは怪しいかもしれない。

選り好み出来ずに採用者の学歴ランクを妥協せざるを得なかった企業は、それ相応の魅力・競争力でしかないということであり、楽に入社出来る分、当然リターンも物足りなくなる。

結局、同じだったりしてw

裏を返すと、今後も生き残っていく企業は当然学生からの人気を保ち続け、これからも採用での選択肢を広く持てるということになる。そうでない企業は淘汰されていく。つまり、売り手側・買い手側ともに規模が小さくなるだけで、市場の中で行われていることは本質的には変わらないことになる可能性もある訳だ。

これからますます若者が少なくなるのだから、今の若者は勝ち組なのだろうか?これから産まれてくる子供たちはみな豊かで幸せな人生を送れるのだろうか?

あくまで我々は、衰退期という険しい道を歩み続ける斜陽国家で生きているという文脈を忘れてはならない。

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